障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

18年4月17日更新

平成30年度障害福祉サービス等報酬改定に伴う関係告示の一部改正等に関する意見

○JDは、2018年3月6日、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害者福祉課へ平成30年度障害福祉サービス等報酬改定に伴う関係告示の一部改正等に関する意見を提出しました。
【PDF版はこちらから】

(参考)平成30年度障害福祉サービス等報酬改定に伴う関係告示の一部改正等の御意見の募集について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495170344&Mode=0

2018年3月6日



平成30年度障害福祉サービス等報酬改定に伴う関係告示の一部改正等に関する意見

NPO法人
日本障害者協議会(JD)
代表 藤井 克徳






 日本障害者協議会は、障害者権利条約の完全実現をめざす観点から、「障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団と国(厚生労働省)との基本合意文書」および「障がい者制度改革推進会議総合福祉部会」がまとめた『骨格提言』の実現を求めていますが、障害者自立支援法の抜本的改正はなされないまま、骨格提言で出された多くの課題は先延ばし状態になっています。
 そのようななか、今回の報酬改定について、就労支援と地域生活支援を軸とした意見を以下に述べます。これを通して、現在の障害福祉政策全体の問題につなげていけたらと考えます。

●第1 平成30 年度障害福祉サービス等報酬改定に係る基本的な考え方
 (1)障害者の重度化・高齢化を踏まえた、障害者の地域移行・地域生活の支援等
 (2)障害児支援の適切なサービス提供体制の確保と質の向上(医療的ケア児への対応等)
 (3)精神障害者の地域移行の推進
 以上のような見出しは、耳ざわりの良いフレーズです。しかし、総合支援法の根本的な改正がなされないままの施策には自ずと限界があり、実現可能性は厳しいと認識しています。

●就労支援について
 障害のある人が持ついくつかの人生目標の中で、一般就労は重要なことですが、それは、大きな目標の一つであり、生活や就労支援の場における自己実現の仕方は様々あります。
 今回の改定では、就労継続支援B型の基本報酬を平均工賃によって7段階に分けてしまっていますが、工賃によって報酬単価を分けるという考え方は、障害福祉の基本思想の視点から、また、現実にその事業に集う人たちの目的や相互の関係性の観点からも、大きな問題があると思います。一般就労の定着支援は本来このような方法で行われるべきではなく、事業者やそこで働く職員が、利用者一人ひとりと関係性をつくり、どのように寄り添って支援していけるかが重要です。そういう視点で考えれば、就労支援の場がギスギスしたものであってはならず、ゆとりある環境が保障されなければなりません。そのためには、事業者に、多様な目標や思いを持つ個人を支援する姿勢を促すことが必要です。
 今回、就労支援に対する基本報酬の区分けを導入した経過において、昨年の財政制度等審議会の建議を受けて、財政抑制を具現化したものといえます。

●重度の障害者の地域生活支援について
 重度訪問介護の単価が上がらないと、引き受けてくれる事業者が限られてしまうなどの問題はあるものの、制度的には徐々に普及してきていると認識しています。深刻な課題として、介護を必要とする障害のある人の入院時の介護問題があります。今回、重度訪問介護利用者の区分6を受けている人については、入院時のヘルパー派遣が認められました。しかし、コミュニケーションの問題は、区分6の人に限った問題ではなく、他の区分でも、コミュニケーションに大きな問題を抱える人については派遣の対象としていくべきです。
 また、地域で暮らしている障害のある人が緊急事態に陥った時の対応策として、地域拠点施設ということが謳われていますが、可能な限り臨時にヘルパーや訪問看護師を多く派遣するなど、地域生活支援の中で対応されることが必要です。
 介護を受ける障害のある人が65歳になった時の問題も未解決で、全国各地でトラブルや訴訟も起きています。

●相談体制について
 障害者本人に寄り添う相談体制とそれに伴う報酬確保ができているのか、それに向けた政策誘導がなされようとしているのか、今後検証が求められます。

 障害関係予算は伸びているのかもしれません。一方、OECD諸国との比較では依然、低位にあります。障害のある人の就労支援と地域生活支援をはじめとする多様な活動の場の支援を充足させるには、生産性による差別化ではなく、ニーズに基づくしっかりした支援の実施が重要であると考えます。

           

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