18年4月17日更新
○JDは、2018年1月30日、国土交通大臣にバリアフリー法の抜本改正を求める要望書を提出しました。また、2018年2月19日、国土交通省総合政策局安心生活政策課との意見交換会を開催しました。
【PDF版はこちらから】
2018年1月30日
国土交通大臣
石井 啓一様
バリアフリー法の抜本改正を求める要望書
NPO法人
日本障害者協議会(JD)
代表 藤井 克徳
貴職におかれましては、日頃からの国土・交通の整備へのご尽力に心より敬意を表します。また、高齢者・障害者等が円滑に社会参加できるための、バリアフリー施策前進へのご努力に、深謝申し上げます。
当会(略称JD)は、「完全参加と平等」をスローガンに掲げた1981年の国際障害者年を成功させようと、その前年、障害の種別や立場、考えの違いなどをこえて発足しました。現在、62団体で構成する認定NPO法人です。 2014年に日本が批准した障害者権利条約が示す社会のありようを実現すべく活動しております。
さて、日本の建築物や交通機関は、国際障害者年を皮切りに、2006年のバリアフリー新法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)の制定は、従来の建築物を対象とした「ハートビル法」、交通機関を対象とする「バリアフリー法」を結合させたもので、このような経緯の中で、アクセシビリティー(バリアフリー)が少しずつ進んできましたが、問題も山積しています。
例えば、2016年3月に貴省が発表した「平成27年度末 鉄軌道駅における段差解消への対応状況について」を見ると、1日当たりの平均利用者数が3千人以上の駅のうち基準に適合している設備により段差が解消されている駅は86%という数字が出ています。これは、あくまで1日当たりの平均利用者数が3千人以上の駅であり、都市部での状況です。また、"段差解消"しているかどうかを着目されているのであって、現状では、車いす等の利用者がエレベーター等を使い、駅を利用する際、迂回を強いられることがままあります。車いすの形状によっては、乗車拒否を受けることも少なくありません。
また、視覚障害者のホームからの転落事故は後を絶たず、「駅ホームにおける安全性向上のための検討会(国土交通省)」の資料によれば、2015(平成27)年の視覚障害者のホームからの転落件数は94件となっており、ホームドアの設置は喫緊の課題です。
建築物については、公共施設については、ほぼアクセス可能となりましたが、特別特定建築物の要件に至らない小規模な商業施設などは、段差解消もしていないところが多く、車いすで買い物や食事を楽しむ所を相当制限されている状況です。
2020年のオリンピック・パラリンピックに向けて、競技場のアクセシビリティーを確保していく必要がありますが、国際パラリンピック協会(IPC)が出している「アクセシビリティガイド」-オリンピック・パラリンピック大会のインクルーシブなアプローチ-からは大きく立ち遅れていると考えます。競技場のみならず、まち全体をこの基準に沿ったものにしていく必要があります。
また、AIをはじめとする科学技術の発展を、障害のある人と共に協議しながら円滑に反映させていくことも求められています。
そして、障害者権利条約で掲げられているように、都市部・農村部に関わらず、完全にアクセシブルな社会にしていくための社会基盤の整備を行なっていくことが重要であると考えます。
以上の認識にたち、「バリアフリー法」を改正するにあたって、以下の諸点を留意されますことを強く要望いたします。
記
1. バリアフリー法に盛り込むべきこと
1) 交通機関及び建築物については、あらゆる障害のある人にとって、アクセシブルとすること。(法の目標とすべきもの)
2) 特別特定建築物については、その面積の縮小化を図ること。(今の基準では、障害のある人にとって利益となることが少なく、現状の半分の面積を目標に縮小化を図るべき)
3) 基本構想や事業別、及び地域別にそれぞれ障害当事者参加による評価機関を設置すること。またその検証作業を通して、将来の政策に反映させること。
2. 移動等円滑化基準の見直しや、整備目標の見直しで対応するもの
1) 鉄道駅舎については、速やかに計画的にエレベーターを設置し、それが無理な場合はスロープを整備すること。またその整備については、障害等を理由に著しい迂回をさせることがないように行うこと。
2) 鉄道駅舎とその周辺について、速やかに計画的に点字誘導ブロック(適切な誘導路)を整備すること。
3) 鉄道駅舎において、音声案内や、ひらがなによる案内、点字による案内を整備すること。
4) 鉄道駅舎及びその周辺に、あらゆる障害のある人が利用できるトイレを整備すること。
5) 鉄道車両とプラットホームの段差と隙間をなくすこと。
6) 鉄道のプラットホームについては、速やかに計画的にホームドアを設置すること。
7) 無人駅をなくすこと。その実現が困難な段階においては、他の駅からの応援等によって、障害のある人の利用を可能とさせること。
8) 特急を含む鉄道の車両すべてに、車いすでも乗車できるスペースを確保すること。
9) 車いすでも利用しやすいタクシーやレンタカーを大幅に増やすこと。(特にUDタクシーなど)
10)すべてのバスがあらゆる障害のある人にとってアクセシブルとすること。(特に空港バスや長距離バスの改善)
11)すべての空港が、あらゆる障害のある人にとってアクセシブルとすること。
12)客船・遊覧船等すべての船舶が、あらゆる障害のある人にとってアクセシブルとすること。
13)小規模店舗についても、スロープの設置や通路幅を確保させるなど、可能な取り組みを行うこと。
14)競技場、劇場、映画館等観覧施設において、車いす席を大幅に増やしていくこと。またそれと共に車いす席を一か所に集中させず、好みの場所で観覧できるようにすること。介助者の席については、パイプいすを用意するのではなく、他の観客と同じくらいの質を持ったいすを用意すること。
15)大地震、台風などで避難所として利用される学校のアクセシビリティーを早急に確立すること。
フッターメニュー