障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

17年4月13日更新

「地域包括ケアシステム強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案」についての意見

○JDは、4月13日、「地域包括ケアシステム強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案」についての意見を衆参厚生労働委員会委員および政党政策担当等へ送付しました。
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2017年4月13日



地域包括ケアシステム強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案についての意見

特定非営利活動法人
日本障害者協議会(JD)

 

 2017年3月29日に衆議院で審議入りした「地域包括ケア強化法案」が4月12日、法案とは関係のない森友学園問題を取り上げたとの理由から、衆院厚生労働委員会にて強行採決されました。当会では、この法案には以下のような問題点があることを指摘し、影響を受ける障害当事者を交えて再度議論され練り直されることを強く求めており、衆院厚労委に差し戻して慎重な審議が行われることを重ねて求めるものです。

1.当事者不在・国会軽視の法案審議の問題点
 人々の暮らしに大きな影響をもたらす31本の法律の一括法であるにもかかわらず、当事者・関係者の参画による十分な審議を尽くさないまま、国会上程されており、当事者不在の審議が進められています。
 国(厚生労働省)は、障害者自立支援法違憲訴訟団と交わした基本合意で、実態調査や障害者の意見を踏まえることを約束しています。「基本合意を遵守する」と言ってはいますが、あまりにも拙速な政策遂行姿勢に疑問を抱かざるを得ません。
 また、法案は204の政令と574の省令に委ねられており、法案だけでは内容が不明です。国会軽視ともいえる進め方にも問題があると思います。 

2.財政効率主導による福祉理念の変質
 財政効率や生産性向上、「自助」、「互助」、「共助」の補完原理が強調されるだけでなく、生活支援等にはボランティアの導入などが想定されており、専門性を否定しかねない福祉への変質、障害者等の暮らしのさらなる不安定化が危惧されます。また、介護保険サービスを利用しないことを「自立」とする考え方にシフトするとされていますが、私たちが求める自立は、様々な公共的政策や、社会的サービスを選択•利用して、社会と調和的関係を築きながら生きていくことです。福祉の理念や体制を根本的に覆す施策は改めるべきです。

3.利用者負担増の問題点
 介護保険制度に2割負担が導入されたのは2016年8月です。当事者団体の調査によれば、負担増のために支援を受けることが難しくなり、利用を控える動きも出ています。その結果、高齢者とその家族にどのような影響を及ぼしているのか、実態把握も行われないまま3割負担を導入するのは、当事者を置き去りにした一方的な進め方ではないでしょうか。

4.抜本的な人材確保策の視点がないこと
 障害福祉や介護の現場は、人材確保に困難を極めています。その改善策のないこの法案で人材確保が進むとは考えられません。介護離職ゼロという政府の方針とも矛盾します。さらに常勤換算方式の職員配置や日額払いの報酬支払の仕組みが専門性の確立を阻んでいます。障害者福祉や介護の現場で職員が定着し、それぞれの分野の専門性を身につけた職員が育っていく方策こそが求められます。

5.他の者との平等こそが求められる
 障害者・子ども・高齢者などを一括りにした制度が考えられていますが、障害者権利条約がめざす理念は、他の者との平等であり、障害のある人もない人も共に生きられる、真にインクルーシブな社会です。貧困状態を余儀なくされている障害のある人の所得保障、家族に大きく依拠した障害者支援、社会的入院など、積み残されたままの課題を抜本的に改革することなく、真の共生社会の実現はあり得ません。
 それを実現させるには、障害者・子ども・高齢者などそれぞれの特性と固有のニーズを把握したサービスを展開させていくことと、連携ならびに社会連帯という理念を複眼的に持ち合わせていき、それらを両立させる政策の構築が求められます。
 障害者政策のあり方や生活状況について、介護保険の対象である高齢障害者の実態を把握し、介護の社会化を謳って始まった介護保険制度を総括し、誰もが安心して地域社会で暮らせる仕組みづくりを求めます。
                                                                以上              

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