障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

16年10月24日更新

成年後見制度利用促進について

○JDは10月24日、成年後見制度利用促進委員会利用促進策ワーキング・グループ及び不正防止対策ワーキング・グループ によるヒアリングにおいてJD意見をまとめました。
【PDF版はこちらから】


                    成年後見制度利用促進について

NPO法人 日本障害者協議会(JD)

 


当面の解決策について
   2000年、成年後見制度は、認知症が社会問題となる中、詐欺など、意思決定が難しいとされる人たちの権利や財産を保護するためにつくられたと認識しています。本人の意思決定が尊重されず、後見人が代理で決定していく制度そのものに問題があると思います。成年後見制度の中に「意思決定支援」のプロセスを内包させるべきは当然のことで、具体的には、「補助」や「保佐」の類型を意識的に用いるべきでしょう。しかし、多くの実例にみるように、安易に後見決定がなされ、被後見人の権利から遠く離れてしまっている現状です。そしてその結果、後見人である家族や弁護士、司法書士などによる、被後見人の財産が横領される事件が多発しています。裁判所の選任による弁護士、あるいは司法書士等が不正をした場合は、国の責任で賠償すべきではないでしょうか。
 今後は、地域の多様な人々が、この制度を受けた人たちの権利を守る機関を、自治体や社会福祉協議会が中心になって呼びかけ、障害当事者団体もその一つとして参加していけるようにしていくことが、制度が改善されるまでの間、必要と考えます。
 一方、日常的に福祉・介護・医療を提供している、福祉サイドの「日常生活自立支援事業」を改変させ、一定の手厚い制度にしていき、相互チェック体制(ここにも障害当事者団体、地域NPOが可能な限り参加)が有効的に働くようにさせ、それにシフトさせていく方向を模索すべきだと考えます。
 あわせて、利用促進の観点からは、本人負担の過重さが利用を妨げていることを鑑みると、負担のありようについても再考されるべきと思います。

権利擁護制度の全面的な改善を望む
 以上のような問題意識に基づき、私たちは、成年後見制度が、利用する人の尊厳と権利を保障することを基礎として、当事者の意思が尊重され、個人情報保護には十分配慮した上で、市民が参加する制度に、全面的に改善されることを強く願います。
 2014年に日本政府が批准した障害者権利条約は"他の市民との平等"を謳っています。現行の成年後見制度は、権利条約第12条「法の前にひとしく認められる権利」の視点からみても抵触しており、意思決定が難しいとされる人々の権利擁護制度を根本から見直す必要があると考えます。最大の理由は、欠格事由があることです。成年被後見人や被保佐人になると、会社や各種法人の役員、公務員になることもできません。国家資格取得の制限も受けます。
 権利条約との整合性のある権利擁護制度の検討には長い時間が必要と思われますが、様々な立場から色々な意見が存在している中、慎重で丁寧な議論が求められます。いずれにしても、運用上、是正できる範囲であれば欠格事由は凍結されるべきだと考えます。また、医療等における「同意権」は慎重を期す必要があると考えます。
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 一度成年後見を受けると、状態が変化しても、取り消しが困難で、後見人の交代もよほどのことがないとできない現状も大きい問題です。また、現行制度では代理決定を認めており、場合によっては人権が奪われてしまうという深刻な問題も残っています。
 これを、障害当事者団体や専門職が重層的に関わっていくような、障害のある個々人の人権を大切にし、意思表明が困難な人たちの意思決定をサポートしていく、新たな権利擁護制度が求められています。個々人に応じた環境があれば、誰でも意思決定が可能になり得ると思うからです。サポートを受けながら消費生活を送ることこそが、人間の尊厳といえるのではないでしょうか。
                                                                    以上              

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