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16年2月10日更新

「障害者権利条約第1回日本政府報告(日本語仮訳)に対する意見

○JDは2月10日、「障害者権利条約第1回日本政府報告(日本語仮訳)」に対する意見」をパブリックコメント(パブコメ)として外務省総合外交政策局人権人道課へ送付しました。

★PDF版はこちらから 
【JD意見】 【JD情報通信委員会意見】

(参考)障害者権利条約第1回日本政府報告(日本語仮訳)についての意見募集
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=350000127&Mode=0

(参考)JD障害者権利条約のパラレルレポートに関する資料
http://www.nginet.or.jp/jdprrp/

★JD意見


          「障害者権利条約第1回日本政府報告(日本語仮訳)」に対する意見
      

                   2016年2月10日
特定非営利活動法人 日本障害者協議会(JD)
                代表 藤 井  克 徳




該当箇所  第1部 総論 Ⅰ条約締結に至る経緯と現状-1
意見内容1
 本政府報告の策定過程及び全般的な内容についての市民社会の参画について
 第33条の監視の枠組みを担う「障害者政策委員会」とされているが、障害者政策委員会は政府機関である。監視の枠組みには市民社会の参画が求められており、政府報告の策定過程に市民社会の参加が不十分であった旨、課題として明記すべきである。
理由1
 障害者権利条約は、障害のある人が参画し、意見を出し合いながら策定されてきた。権利条約策定の過程を踏まえると、内容も大事だが、その策定過程も同様に重要である。権利条約第4条3項、第33条3項、第35条4項において、政策決定過程や報告書策定過程への障害者および障害者を代表する団体の参加が規定されているにも関わらず、そうした場が設けられてこなかったので設定すべき。

該当箇所 第1部 総論 Ⅰ条約締結に至る経緯と現状-3
意見内容2
 データ不足は報告でも触れられているが、既存のデータ利用もほとんどなく、すでに実施されている調査データなども活用できていないことなども課題として明記すべきである。
理由2
 政府は障害者理解についての調査を行なっており、国際比較も実施しているが、その紹介はない。こうしたデータは貴重なものであり、既存データを駆使して報告をまとめていこうという意思がみえない。

意見内容3
 権利条約を批准したことで、障害のある人の生活がどのように改善されたのかについての記述がない。記されている内容は、この条約に基づく義務を履行するためにとった措置である。その措置によってもたらされた進歩に関する包括的な報告が記述されていない。これでは、締約国の報告義務は半分しか果たしていない。政府報告書として課題に踏み込めなかったことを明記すべきである。
理由3
 権利条約第35条の内容が遵守されていない。とりわけ、第35条5項には履行の程度に影響を及ぼす要因及び困難を記載することとされており、報告書としては極めて不十分である。他の市民との平等を実現するために、政府はどのような努力を行うのかが問われている。

該当箇所 第33条 220
意見内容4
 障害者基本法にもとづく第3次障害者基本計画の実施状況の監視を通じて障害者政策委員会による権利条約の監視がなされたとしている。しかし第3次障害者基本計画と障害者権利条約は(関連はするものの)項目も内容も異なるものであり、前者の監視を後者の監視とするのは無理である。そのため、例えば障害者施策の根本課題である所得保障について、その実態に踏み込めていないことを明記すべきである。
理由4
 障害者基本計画の実施状況の範囲内の監視では、日本の障害のある人の暮らしの全般が権利条約を批准したことで改善したのか、残された課題がどこにあるのかなどが明確にならない。本来であれば、国の責任において障害のある人の貧困の状況を明らかにすべきであろう。OECDで発表されている障害者の貧困率などのデータに日本のデータはない。改善すべき重要な問題である。

該当箇所 斜体部分(障害者政策委員会の指摘)
意見内容5
 障害者害者政策委員会での意見が、8点にわたって報告書本文に記載されているが、政府の意見ではなく障害者政策委員会の意見であることが明記されており、本文上での扱いが不適切である。障害者政策委員会による指摘について、政府としても問題意識を共有した旨、明記すべきである。
理由5
 政府は、報告に率直に障害のある人の置かれている状況を記すことが求められているし、障害当事者の声を反映させる過程を軽視し、国連に報告することの意味や意義が十分でない。

該当箇所 付属
意見内容6
 付属資料のデータには目次がない。各データが条約の第何条についてのデータなのかの説明もない。「政府報告」本文のなかでもどのデータを参照すべきかの指示がない。データの網羅性、適切性、理解のしやすさなどにも改善すべき点はあるが、これらの最低限の形式要件を守るべきである。
理由6
 最終的な提出時には改善しようと考えておられたのだとは思いますが、念のため意見を出しました。

★JD情報通信委員会意見


          「障害者権利条約第1回日本政府報告(日本語仮訳)」に対する意見
      

                   2016年2月10日
特定非営利活動法人 日本障害者協議会(JD)
           情報通信委員長 薗部 英夫




 障害者権利条約は、すべての人のために不可欠な権利として人生の全局面において基盤となるアクセシビリティの保障とICT(情報コミュニケーション技術)の利活用を位置づけている(第2条、4条、9条、19条、21条)。しかし、政府報告は論点が散見され、的が絞りにくい。
 アメリカではADAのもとでの「リハビリテーション法508条」によって、連邦政府はアクセシブルなICTの調達を義務づけている。欧州の「Mandate376」も同様だ。わが国では強制力のある法制度や施策が不十分で、技術や指針があってもそれを必要とする人に届いていない。利活用のためのリテラシー教育も不可欠だ。
 また、JDのICT利活用実態調査(2007年)では、パソコン72.1%、インターネット68.6%、携帯電話55.5%が「困ったことがある」と回答しているが、その後の調査はほとんどなされていない。
 上記の認識のもと、政府報告は障害者のICT利活用の実態を反映しておらず、不十分な記述なので、次のように加筆修正されたい。
 さらに「142.なお、本条に関しては、障害者政策委員会より、次のような指摘がなされている」と記述されているが、政策委員会は「監視するための枠組みを担っており」とされている。政府報告として対策すべき事項であるので、そのように書きぶりを正されたい。

○第4条 一般的義務(追記)
28. 今後、一層の実効性の向上を図る。
29. 新技術や支援機器は、日常生活はもとより、教育、労働、リハビリテーション等あらゆる場面で積極的に活用されるべきである。そのため、今後は利用促進面での支援制度を検討する。

○第9条 accessibilityは、タイトルを「アクセシビリティ」とし、つぎの下線部分を加筆、追記すべき。
55.障害者権利条約の下、障害者基本法において(以下略)
63.情報利用のバリアフリー化については、障害者基本法第22条第1項において、国及び地方公共団体が、情報の利用におけるバリアフリー化のための施策を講じることとされており(中略)国及び地方公共団体におけるウェブアクセシビリティの維持・向上の支援に資するための手順書である「みんなの公共サイト運用モデル」を公表(2005年策定、2011年改定)している。今後は、障害者の利活用実態をふまえ、関連省庁と連携し、対策につとめたい。
65. より一層の情報アクセシビリティ普及のため、利活用に関する助成制度及び啓蒙活動の実施も検討する。

○第19条 自立した生活及び地域社会への包容(追記)
126. 日常生活用具、補装具制度の利用状況や利用者の意見を地域差、経済格差含め調査し、入手後の利活用状況を把握し、利活用できるしくみを検討する。

○第21条「表現及び意見の自由並びに情報の利用の機会」は、「表現及び意見の自由と情報アクセス」とし、つぎを加筆、追記。
137.(前中略)障害者基本法において、電気通信及び放送その他の情報の提供に係る役務を行う事業者に対し、障害者の利用の便宜を図る努力義務を課している(障害者基本法第22条第3項)。差別解消法や障害者の利活用実態をふまえ対応につとめたい
139. 引き続き、支援者の不足を解消すべく、財政措置等を検討する。

○第29条 政治参加(追記)
新番号. 国会中継のアクセシビリティについては、障害者政策委員会で実施されている手話通訳、要約筆記の配置につとめる。国会を傍聴する障害者から視聴覚及び記録のための支援機器を取り上げない。パブリックコメントは手話でも受付できるようつとめる

○第30条 文化・レクリエーション・余暇・スポーツ
・権利条約のいう「アクセシブルな様式」をとおして「活動へのアクセスを享受」できるための施策を記述すべき。
・スポーツに関する多くの記述を整理・短縮して、余暇活動などの利活用実態と対応を追記すべき

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