16年2月10日更新
○JDは2月9日、障害者虐待防止法改正を求める要望を厚生労働大臣へ提出しました。
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厚生労働大臣
塩崎 恭久 様
障害者虐待防止法改正を求める要望
2016年2月9日
特定非営利活動法人 日本障害者協議会(JD)
代表 藤 井 克 徳
貴職におかれましては、日頃より障害者権利条約に基づいた政策の推進にご尽力いただいていることに心より敬意を表します。
2012年10月、障害者虐待防止法が施行されました。しかし、新聞やテレビ等で連日のように、高齢者や子どもに対する虐待事件が報じられています。それは障害者についても同様で、施設、病院、雇用の場、そして家庭などで虐待が繰り返されています。
その上、虐待を発見し、自治体への通報義務を果たした障害者施設の元職員が、報道関係のインタビューに応じたことに絡み、施設の名誉を傷つけられたということで、施設から損害賠償を請求されるという事態まで起きています。通報者を"不利益取り扱い"しないとする障害者虐待防止法そのものを否定するかのような出来事です。
障害者虐待防止法は、虐待行為を発見した人に、自治体など行政機関への通報義務を課しており、通報を受けた行政機関は、その現場に出向き、立ち入り検査あるいは立ち入り調査をしなければなりません。
障害者虐待防止法は、身体的虐待、性的虐待、心理的虐待、経済的虐待、ネグレクトの5つを虐待の定義としました。まさに障害者が日常的に直面している問題です。
この法の施行により、福祉施設等の現場では、虐待防止についての研修を強化し、抑制の効果も少しずつ現れはじめているようです。一方で虐待そのものは隠れて行われることが多いため、なくなる傾向にあるとは言えない実態もあります。
現行の障害者虐待防止法の最大の問題点は、病院、学校、保育所等については、発見者の行政等への通報義務を対象外としていることです。
精神科病院は社会から隔絶された場所にあることが多いことから、特に暴力などの虐待が起こりやすい場となっています。病院、学校、保育所等を通報義務の対象外としていることは、障害当事者の観点からは、何ら合理的理由を見い出すことはできません。
また、前述のように通報義務を果たした人が理由はともかく損害賠償を請求されるという事態が発生すると、虐待行為を発見しても委縮して通報をためらうケースが多くなることも予想されます。現行の制度は不完全なもので、通報義務を迅速に履行してもらうためには、通報義務者に対する法的保護が今後必要不可欠になると考えられます。
いま、障害者虐待防止法施行から3年という見直しの時期が過ぎようとしていますが、障害者の置かれた厳しい状況を考えると、国会や政府は、虐待発見者の行政機関への通報義務を、病院、学校、保育所等をその対象に加える改正を行うべきであると考えます。そして虐待を根絶させる意味でも、通報者に対する法的保護をしっかりと定めることが重要であると考えます。
昨年、石郷岡病院の看護助手による暴行・致死事件が2年後に発覚した例にみるように、今の虐待防止法は全く無力です。
また、国や自治体は、精神科病院等、障害者を社会から隔絶分離しているあらゆる形態の施設について、すみやかにその実態を把握し公表していくことが重要です。
そして、特に社会から隔絶された病院や施設、学校、保育所等については、日常的にそれらを監視する第三者機関を設置していく必要があると思います。
以上の認識に立ち、虐待問題を障害者一人ひとりが抱える深刻な問題としてとらえ、下記のことを要望いたします。
記
1. 障害者虐待防止法の3年後の見直し時期が過ぎようとしている今、通報義務の対象に、病院、学校、保育所及び官公署を含める改正を行うこと
2. 精神科病院における虐待の実態を把握するため、すみやかに強力な調査を行うこと
3. 虐待を発見し、そのことを行政に通報した人に対して"不利益取り扱い"がなされないよう、しっかりとした法的保護の仕組みをつくること
4. 病院、施設、学校、保育所及び官公署を含め、障害者の生活に関わる全ての分野で、虐待や障害者の権利に関しての第三者機関の設置を行うこと
5.障害者虐待防止法の見直しについての検討の場が現状では不明である。障害のある人や家族、関係者が参加した公開の検討の場を設けること
以上
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