14年2月24日更新
JDは、2月24日、難病政策の法制化に関する声明を発表しました。
厚生労働大臣および各政党の政策担当部署にも送りました。
2014年2月24日
難病政策の法制化に関する声明
特定非営利活動法人 日本障害者協議会
障害者制度改革及び障害者権利条約の動きを受け、この間、難病をもつ人への施策の改革の議論
が行われ、2013(平成25)年12月18日、厚生科学審議会疾病対策部会で「難病対策の改革に向けた取組
について(報告書)」(以下、報告書とする)がとりまとめられました。報告書では、難病対策の基本理念を
「難病の治療研究を進め、疾患の克服を目指すとともに、難病患者の社会参加を支援し、難病にかかって
も地域で尊厳を持って生きられる共生社会の実現を目指すこと」としています。
この基本理念に基づいた難病政策の法制化が進められようとしています。創薬や新たな医療機器の
開発なども含めた難病の研究体制の強化および、難病の医療費助成に係る予算の義務的経費化と
対象疾患の大幅な拡大が考えられており、これまでの厳しい状況を考えたときに、その進展を期待します。
一方で、全疾患に重症度分類等が導入され、原則として軽症患者が医療費助成の対象から外される
ことや、重症患者の医療費負担を無償とする措置の廃止とともに所得階層に応じた自己負担額の上限が
引き上げられること等、難病患者やその家族がこれまで以上に重い負担を強いられる方向が示されている
ことは、制度の後退と言わざるをえません。
この報告書は、難病対策の基本理念や基本方針についての具体的な検討がまだまだ不十分であると
考えます。報告書では、「難病の治療研究」、「患者負担のあり方」、「難病患者の社会参加のための支援」
について、難病対策という一つの制度枠組みで対処すべく提言していますが、それぞれ施策の目的や対象者
は本来異なるものであり、この三つを切り離した議論が必要です。
■難病の治療研究について
1972年の難病対策要綱以降、難病の治療研究を主目的とした難病施策の推進によって多くの難病が
特定され、患者の生活の質向上にも寄与してきたことは事実であり、その治療研究の体制が強化されること
も重要です。しかしながら、難病の治療研究の対象疾患の中から医療費助成や支援サービスの対象が選定
されてきたことに問題があります。
難病の医療費助成は、従来から治療研究の促進のためのデータ集積を
一義的な目的としており、その考え方は今回も踏襲されています。そのため、患者数の多い疾患や診断基準
のない疾患、対象疾患でも軽度とみなされたものについては、法制化後も医療費助成や支援サービスの対象
になり得ず、制度の谷間が残り続けることになります。
■医療費負担のあり方
制度の谷間をなくすためには、難病に限らず、より広く慢性疾患も含めた総合的な支援策の検討が不可欠
であり、既存の制度や病名、障害種別や年齢等の枠組みにとらわれず、長期にわたる高額な医療費の負担
に対する支援策が検討されるべきです。
■難病をもつ人の社会参加のための支援
障害者権利条約や障害者基本法、障害者差別解消法では、難病や慢性疾患は障害の範囲に含まれており、
制度の谷間を生じさせない規定がされています。それゆえに、難治性慢性疾患によって生活のしづらさがある
人も、他の者と平等に社会参加する権利が保障されなければなりません。
障害や病気の違いやその有無によって分け隔てられることなく、地域でともに生きるために必要な支援、とり
わけ生活支援等の福祉サービスについては、生活上の困難さの有無を基準とし、総合的な福祉法制の中で
提供されていくべきであると考えます。その実現に向けては、社会モデルの視点に立った、既存の障害者法制、
特に身体障害者福祉法における障害認定の仕組みの抜本的な見直しも不可欠です。
難病をもつ人の政策は言うまでもなく、障害をもつ人の政策の延長線上にあり、その改革と連動していくもの
です。従って、難病をもつ人の政策は、"障害者の人権保障"の観点から、研究、医療、社会参加支援の実現
に向けて、必要な予算を確保し、施策の展開をはかるべきです。
以上の認識に立ち、法制化にあたっては、日本障害者協議会はじめ当事者・関係団体へのヒアリングを
実施し、それに基づいた国会での徹底した審議を求めます。
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