障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

13年10月30日更新

生活保護制度の見直しに対する緊急要望書

○JDは、「生活保護制度の見直しに対する緊急要望書」を安倍晋三・障がい害者制度改革推進
 本部長/内閣総理大臣、田村憲久・厚生労働大臣、各政党および衆参の厚生労働委員へ送りました。


 【PDF版はこちら】

                                                      2013年10月28日



                                                  特定非営利活動法人
                                                  日本障害者協議会(JD)
                                                         (公印略)


               生活保護制度の見直しに対する緊急要望書


 本年8月より実施された前例のない生活保護基準の大幅引き下げの強行と、先の国会で提出され、
廃案となった、生活保護法一部改正法案に異議を唱えます(同改正法案のいわゆる「水際作戦の合法化」、
「扶養義務の強化」等の問題については、生活保護問題対策全国会議や日弁連等が問題点を指摘して
おり、当協議会も同意見であるため、本要望では、とくに障害のある人に関わる問題を指摘します)。

 そもそも、生活保護受給者が過去最多(158万8,521世帯、215万8,946人)を更新し続けているのは、他の
所得保障制度が機能していないことに最大の問題があります。このことは日本の生活保護受給者の95%
が保護を受給し続けていかなければ生活できない実態からも明らかです。

 障害のある人については、作業所等に通う人の56.1%が相対的貧困(年収112万円の貧困線以下)であり、
98.9%がワーキングプア(年収200万円以下)であるという調査結果(きょうされんによる1万人対象「障害の
ある人の地域生活実態調査」2012年)が出ています。その上、この10月1日からは基礎年金の2.5%の段階
的引き下げが開始され、来年4月からの消費税3%アップと合わせ、障害のある人は、ますます厳しい生活
を余儀なくされることは必至です。

 本来、成人した障害のある人に対しては、個人の尊厳を保ち、家族に依存することのない所得保障制度が
あるべきです。しかし、多くの障害のある人が生活保護を受けざるを得ない状況があり、これ自体、障害者
政策の未成熟を物語っていると言えます。

 こうした状況の中で、生活保護の扶養義務強化を行えば、障害のある人の家族の責任はますます重くなり、
引いては障害のある人の自立する機会を奪うことにもなりかねません。

 日本障害者協議会は、上記の点から今回の一連の生活保護制度の見直しは、最後のセーフティーネット
を崩壊させるものであり、到底容認することはできないものとして反対し、以下のとおり、生活保護制度の
見直しに対して緊急の要望をします。

 政府および各関係機関におかれましては、障害のある人のおかれている現状を真摯に受け止め、社会保障
制度を後退させないよう、強く要請いたします。

                           ≪緊急要望事項≫

1.今年8月から実施された生活保護基準の引き下げを即刻中止するとともに、国民の生存権を保障するセーフ
ティーネットとして、生活保護制度を拡充してください。

2.先の国会で廃案となった生活保護法の一部改正法案を再度廃案にしてください。
理由 
(A) 申請時の資産・収入・扶養の状況等に関する書類の提出義務づけは、行政の責任を個人に転嫁するもの
であり、とりわけ必要書類をそろえられない障害のある人にとって申請拒否につながるものです。
(B) 家族扶養の強化は、障害のある人を家族依存の状況に追い込むものです。
(C) 保護受給者に「健康保持及び増進の努力、生計状況の把握を責務」を負わせることや「後発医薬品(ジェネ
リック)の使用義務付け」の強制は、人間の尊厳を否定するものです。とくに、後発医薬品については、通常の薬
と後発薬では効果が違うという意見もあり、使用する薬剤は処方する医師の判断と患者の選択によって決める
べきものです。保護受給者に限って、医師の判断と患者の選択を無視して、価格の安い後発薬の使用を強制
することは断じて許せません。

3.生活保護制度のあり方をめぐっては、扶養義務の強化が叫ばれています。私たちは成人した障害のある人
は独立した存在であることが保障されるべきだと考えています。生活保護を含むあらゆる所得保障政策で、この
考え方は貫かれるべきです。家族扶養の強化は、障害のある人を依存状況に追い込むものにほかならず、根本
的な見直しを求めます。

4.生活保護法の一部改正法案とセットで提案された「生活困窮者自立支援法案」は、この2法案が共に実施
されれば、早期就労を口実にして生活保護からのさらなる締め出しが起こる可能性が大きいものです。また、
自立支援を就労することのみをゴールとするやり方は、生活困窮者や障害のある人には馴染みません。自立
支援を名目にして生活保護をできるだけ受給させない制度とするのではなく、生活困窮者には、まず生活保護
を受給させ、その上で就労支援を丁寧に行うような法案にあらためることを強く求めます。

5.真に必要な施策のために、障害のある人の暮らしの実態調査を求めます。またその際には個人の尊厳を
傷つけることのない質問内容やプライバシーに十分配慮してください。                      以上


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