障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

12年3月2日更新

障害者総合支援法案への日本障害者協議会の見解

 
 第180回国会(2012年1月24日~)に上程される障害者自立支援法に替わる法案は、現行法の廃止を
経ての新法ではなく障害者自立支援法の一部改正となってしまった。
 その内容は、総合福祉部会が二大指針としていた障害者権利条約や障害者自立支援法違憲訴訟に
伴う基本合意文書とは相容れず、総合福祉部会構成員55人の総意で取りまとめた骨格提言ともほど遠
いものである。
 JDは、民主党厚労部門会議で原案が了承されたとの報を受けて即日、見解を発表した。



                                                      2012年2月29日



       障害者総合支援法案(2月29日民主党政策調査会厚生労働部門会議案)への              
                     日本障害者協議会の見解              


                                                  日本障害者協議会(JD)

                                                  代表 勝又 和夫



 この案は、2月7日に示され2月8日の第19回総合福祉部会で厳しく批判された「厚生労働省案」を
一部修正したものである。その一部修正の主要な特徴は、名称を「障害者総合支援法」へと変更し、
重度訪問介護の対象の拡大を行う方向を示し、障害福祉計画とそのための基本指針の制度を補強し、
附則による検討項目に移動支援やコミュニケーション支援の在り方などの項目を追加したこと、等である。

 このような修正を経てもなお、「障害者総合支援法」案は、国と自立支援法違憲訴訟団が交わした「基
本合意」や総合福祉部会が提言した「骨格提言」とは大きな落差があり、名称を変えたものの実質は障
害者自立支援法の一部改正である。

 例えば、法案では障害者の範囲を広げて谷間をなくすとするが、多数の難病のなかから一定の範囲を
特定し、依然として谷間が残ることを前提としており、中・軽度の聴覚障害や知的障害などで障害者手帳
のない人々のことは考慮もされていない。医学モデルを脱却し、障害にともなう支援ニーズのある人はす
べて対象とするという「骨格提言」の方向とは依然として大きく異なっている。

 また「骨格提言」は、障害程度区分を中心とした機械的・制限的な支給決定の仕組みから、障害者本人
の希望の表明をプロセスの中に位置づけ、個別ニーズを評価して支給決定する仕組みを提言しているが、
法案では「障害程度区分の認定を含めた支給決定の在り方」を検討するとしかしていない。改革の方向性
を全く示すことなく「検討する」とされるのみでは骨格提言の尊重とはとてもいえない。

 他のすべての「検討事項」も同様に「改革の方向性」が示されていない。これでは変わるのかどうか分か
らない。

 「骨格提言」はまた、地域格差の解決を求め、とくに移動、コミュニケーション、相談などの重要な支援が地
域生活支援事業の枠で裁量的経費となっている点を改め、国が2分の1、都道府県が4分の1負担する負
担金とすることによって市町村が安心して支援できるようにすることを求めている。しかし法案は地方分権を
理由にこれを無視し、逆に幾つかの事業を地域生活支援事業に追加する。

 本協議会は、政府与党がさらに「基本合意」「骨格提言」を尊重した法案作りに努力をするとともに、法案上
程後は与野党が政治の見識を発揮して、障害者権利条約の批准に足る、障害者が尊厳のある市民として
地域で暮らし、社会参加をすることができるための法律として成立させるよう強く求めるものである。

 同時に本協議会は、全国の障害者・家族・事業者・自治体や市民の皆さんとともに、障害者が自ら選んだ
場所で平等に暮らす権利の実現に向けて、引き続き最後まで奮闘する決意である。



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以上

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