障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

20年12月22日更新

2020年「すべての人の社会」12月号

すべての人の社会2020年12月号

VOL.40-9 通巻NO.486

巻頭言 核兵器禁止条約が発効! 世界唯一の戦争被爆国・日本の責任を問う!

NPO法人日本障害者協議会理事 白沢 仁

 核兵器禁止条約が国連総会で採択(2017年7月)されてから3年3か月が経過した本年10月、条約批准国が50カ国・地域に達し、来年2021年1月22日に発効することが決まった。

 条約は、核兵器の開発、実験、製造、取得、保有、貯蔵、移譲、使用、使用の威嚇などの活動を、いかなる場合にも禁止している(第1条)。何よりも、被爆者(ヒバクシャ)の苦しみと被害に触れ、人道の諸原則の推進のために、核兵器廃絶に向けて被爆者などが行なってきた努力にも言及(前文)していることは、条約発効の「重み」をあらためて実感するとともに、「これで終わりではなく、これが廃絶へのスタート」だと期待したい。

 核保有国であるアメリカ・ロシア・中国・フランス・イギリスの5か国は、禁止条約の議論・採択に参加さえしなかった(その他、核保有しているイスラエル・インド・パキスタン・北朝鮮も不参加)。核保有の5か国は、核拡散防止条約(1970年発効。拡散防止=5か国以外の核保有禁止)の枠組みの中で核軍縮、段階的削減をすすめるべきと主張している。しかし、世界には1万3400発の核兵器があり、米ソ冷戦時代の最大約6万5000発に比べたら削減されたとはいえ、いまなお膨大な数が保有されていることは脅威以外なにものでもなく、核拡散防止条約50年の限界が指摘されている。

 世界で唯一の戦争被爆国である日本政府は、核兵器禁止条約に対し「安全保障の観点がなく非現実的」「核廃絶への分断」だと反対し、批准どころか署名さえしていない。当面する北朝鮮の核脅威を口実に、「アメリカの抑止力を維持しなければならない」「核抑止力の正当性を損なう」「国民の生命・財産を危険にさらす」とし、従来からの「核の傘」に依存する日米安全保障体制の維持に固守している。

 核兵器廃絶を世界のどの国よりも希求すべき国として、核戦力を前提とした軍事圧力ではなく、対話の可能性を追求する、そのためにも条約を1日も早く批准し、核兵器廃絶の先頭に立ってほしい。発効から1年以内に開催される締約国会議に傍聴でもいい、参加してほしいと願わずにはいられない。何よりも、広島・長崎に原爆が投下されて75年、一瞬にして21万人の命を奪い、被爆によって健康と命を脅かされ続けた被爆者の悲哀と憤りを過去のものとせず、「核兵器のない世界」という未来へと橋渡しすることこそ、いま日本政府に求められている。

 障害者は平和の中でこそ生きられる。この思いを核兵器禁止を求める被爆者たちの運動と重ね合わせ、「核兵器のない世界」の創造という国際的な大きな流れに合流し、その役割を果たす契機が核兵器禁止条約の発効だと呼びかけたい。まずは早期締結を求める署名活動に協力を!

視点 投票は民主主義の基本

NPO法人日本障害者協議会副代表 薗部 英夫

  「あなたって選挙好きよね」と「BS世界のニュース」を見ていたらカミサンが言う。この100年で最高といわれる投票率(約66%)のアメリカ大統領選挙は、投票日から5日が過ぎても6500万という郵便投票の開票が続いた。

 "Facebook友達"の宮子あずささんは、11月2日の東京新聞「本音のコラム」でつぎのような問題を投げかけた。


 「今回の選挙はコロナ感染を避けるため、郵便投票が広く行われている」「これらの票は、感染を重く見る民主党支持者の票が多いと報じられている。加えて共和党が強い地域では、民主党支持者が多い若年層、マイノリティーが投票しにくい制度になっているとの指摘もある。具体的には投票所が減らされる、運転免許証がないと選挙人登録ができないなど。いずれも貧しい人にはハードルが高い」「郵便投票にはこうした人の投票が多数含まれているため、共和党には都合が悪い。だから無効票を増やそうと躍起」。

 この指摘のように、トランプは、郵便投票は「不正が多い」とネガティブ・キャンペーンし、開票を打ち切るよう叫んでいた。

 「多くの人の支持を得るより、対立候補の票を減らすことに注力するなら、それはもはや民主的な政治ではないでしょう」と宮子さん。


 そんなアメリカの大統領選を見ながら、わたしは、現地視察をしたことのあるスウェーデンの総選挙を思い出していた。

 1998年9月、ストックホルムの新興住宅地にある投票所は、学校で、バリアフリーだった。お年寄りだけでなく、若い人も、子ども連れも続々とやって来る。まるで、地域のお祭りかバザーの雰囲気だ。投票所の雰囲気の明るさにまず驚いた。街中では、各政党ごとに「選挙小屋」がつくられ、市民が気軽に立ち寄って、コーヒーやクッキーなどをつまみながら政策について語り合う。投票所は、郵便局、病院、高齢者住宅、刑務所にも設けられると聞いた。

 つぎに驚いたのは、投票の方法だ。国会、県議会、市議会の3つの投票用紙が各政党ごとにある。有権者は3つの投票用紙を、それぞれの選挙の封筒に入れ、その封筒を投函する。「書く」のでなくて、投票用紙を封筒に入れるだけだ。投票用紙は各政党ごとに工夫されている。社会民主労働党ならシンボルマークの「紅いバラ」やシンボルカラーが活用され、一目でどの政党かがわかる。

 さらなる驚きは、障害のある人たちの投票だ。郵送による郵便投票が多いのではと予想したが、多いのは「代理投票」だと言う。自宅に郵送される投票用紙を、封筒に入れ、サインして封印し、信頼できる人やヘルパーに託す方法だ。

 「代理投票が難しい場合は、選挙係の人が自宅にやって来て投票できる"巡回投票"もできます。国の統計によれば、障害のある人もない人もともに投票率は80%をこえています」「ですが、知的障害がある人たちの投票率が低いことは話題になっています。難しい部分も多いです」と最近の様子を現地の友人がメールで教えてくれた。

 スウェーデンは比例代表制なので、一人一人の投票は各議会の議席数に反映される。さまざまな投票の方法によって、より多くの人たちの意思を反映させる。そうした選挙システムと当たり前の政治教育などにより、18歳からどの世代でも投票率は8割をこえている(前回総選挙は87%)。


 民主主義は、より多くの人びとの意見をあつめ、すべての人を排除することなく、話し合いの中からすすむべき道をみんなで見出していくことだ。

 今、世界中で、平和が、人権が、民主主義がとても危うい時代の中で、アメリカの民主主義が問われている。もちろん、わたしたちの民主主義も。

2020年11月の活動記録


アートと障害者2   

シンプルな驚きと感性への刺激 西田 克也(デザイナー)




What's New! 

民事訴訟のIT化で障害者が取り残されないのか? 藤岡 毅(弁護士)




連載 優生思想に立ち向かう 第20回

やまゆり園事件を問う  袖ヶ浦事件への千葉県の対応と今後
渋沢 茂(一般社団法人ひと・くらしサポートネット千葉運営委員
 千葉県中核地域生活支援センター連絡協議会会長)





障害者自立支援法訴訟の基本合意の完全実現をめざす会ニュース 通算56号



「生殖補助医療等及びこれにより出生した子の
親子関係に関する民法の特例に関する法律案」 に関する緊急要望





VHO-net20年の歩み⑧最終回 つながっているからできること

企業との新たな協働-VHO-netの20年- 喜島 智香子(ファイザー株式会社 広報・社長室 部長)




トピックス・インフォメーション



COVID-19のインパクト第4回

南アジア:インドから  Sarbani Mallick(公益信託Biswa Gouri設立者・代表)




連載エッセイ 障害・文化・よもやま話 第23回

優生思想に悩んだ障害者たち
―手術は『強制』じゃない?―(前編)
荒井 裕樹(二松学舎大学准教授)







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