20年11月30日更新
VOL.40-8 通巻NO.485
NPO法人日本障害者協議会理事 佐々木 良子
今年の8月、職場のデイサービスで、職員が集められました。上司から告げられたことは、「近隣のデイサービスで、職員が、コロナに感染した」というものでした。デイサービス利用者の中には、そのデイサービスを併用して利用されている方もいました。コロナ禍でのデイサービスの営業。日々、感染リスクがあることを意識していましたが、送迎やお風呂、食事、トイレ介助等々、どうしても密接にならざるをえない状況があります。その報告を聞き、感染しているかもしれない、そして、誰かにうつしているかもしれないと思いました。幸い職員から利用者への感染はなかったのですが、他人ごとではないことを思い知らされた出来事でした。
コロナ禍の影響は、手話通訳者にも及んでいます。手話通訳者が派遣される現場の多くは、医療関係です。遠隔手話通訳や電話リレーなど、パソコンやスマートフォンを用いた方法も拡充していますが、十分な教育が受けられず、日本語を読むことさえままならない聞こえない人たちもいます。
先日、私の地元でも遠隔手話通訳の説明会がありました。普段、パソコンやスマートフォンを使いこなしている人たちには、概ね好評でしたが、参加された多くの人たちは、戸惑いの方が大きく、手話通訳者に来てほしいと切実な声が出されていました。現在、医療現場の手話通訳は、基本的に専任手話通訳者が対応することにしていますが、専任手話通訳者4名のうち、正規職員は1名で3名は非常勤職員です。雇用されている手話通訳者がいない地域もあり、労働者として何の保障もされていない登録手話通訳者が医療現場に行かざるを得ない状況も起きています。
私の所属している一般社団法人全国手話通訳問題研究会(略して「全通研」)は、1974年に設立し、全国で10,000名を超える会員がいます。今年は、全通研の総会である代議員会やサマーフォーラムなど、いろいろな事業が中止となりました。都道府県支部でも総会や会議、行事などが中止や縮小に追い込まれています。
それでも、このような中だからこそ前を向いていくために、「全通研が、いま大切にしたいこと」の中で、「ろう者の生活と権利を守る」、「手話通訳実践・社会啓発・手話通訳者の身分保障に取り組む」ことを表明しました。そして、オンラインを活用した会員学習活動支援や新型コロナ対策支部活動費として各支部に助成を行なっています。コロナ禍の中で、何が必要で何ができるのか。そして、本当に大切にしたいものは何なのか。考える機会にもなっています。
NPO法人日本障害者協議会常務理事 増田 一世
1970年8月15日、大宮市(現在はさいたま市)のある企業の下請け工場の2階に市内の精神病院から退院した人が住み込み就職の形で暮らし始めた。企業主と病院のソーシャルワーカーが協力する形での船出だった。翌年、寮生会議で「やどかりの里」と命名。やどかりのように自分の家を持って歩いて行かれるように、そして成長とともに殻を、家を大きくしていかれるようにという願いを込め、「里」は地名の七里に由来する。
それから50年、大きな節目を迎えている。私がやどかりの里で働き始めたのが1978年。まだ精神衛生法の時代だった。1990年に初めて公的な補助金で運営する精神障害者社会復帰施設を開設し、多くの長期入院を経験した人たちを迎え入れてきた。そして、2000年~2001年にかけて世代交代が進み、その後、障害者自立支援法に対峙した運動に積極的に関わり、JD(日本障害者協議会)とのつながりが強くなった。違いを越えて手をつなぎ、社会に発信していくことの大切さを学んだ。
私にとってのJDは、さまざまな人たちとつながる場であり、学びの場、考える場、行動する場である。他の障害や疾患、海外の障害者政策の動向、日本の障害者福祉を切り開いてきた先達たちのことを学び、日本国憲法や障害者権利条約の大切さを自覚することにもなった。やどかりの里で育ててもらって、JD大学校で研鑽中というところだ。「何か変だな、おかしい」と感じるセンサーを磨き、そのことを社会に広く発信する術を身に着けなければならない。
我が事・丸ごと地域共生社会、一億総活躍社会、全世代型社会保障改革といった政策への違和感……そして、中央省庁の障害者雇用水増し問題とその対処の無責任さ、優生保護法裁判への除斥期間を盾にした仙台・東京地裁判決、生活保護法基準切り下げ違憲裁判への一政党のマニフェストを国民感情とする偏った名古屋地裁判決、直近では、新型コロナ感染症の拡大に対する政府の経済対策優先の政策と失策、そして極めつけは今般の日本学術会議への人事介入、何だか変だ、おかしいと思うことが山盛りである。
怖いのは、さまざまなことがうやむやにされ、時間の経過とともに終わったことのようになり、次々と起こる出来事に埋没していってしまうことだ。これこそが権力を持った人たちの狙いなのではないかと勘繰りたくもなる。こうした動きの中で、人々の心の中に「あきらめ」そして、「無関心」が広がっていくことも気になることの1つだ。格差が広がる中でその日の暮らしで精一杯という状況もあるだろう。
JDの使命としては、声明や要望書……さまざまな形で意見を社会に発信し続けることであろう。そして、JDの考えと異なる意見をもつ人たちとも対話を試みることであろう。学習の場、対話する場を多様に創り出していくこともJDの大事な役割なのだと思う。
12月12日にJD初のオンライン集会を開催する。「国際障害者年前夜から40年をたどり未来を展望する集い」である。JDとともに歩まれた方々と直接お会いできないのは残念だが、オンライン開催なので遠方の方にも無理なく参加していただける。
異論を排除する風潮に抗して、日々の実践を丁寧に展開し、問題意識を共有する人を広げ、それぞれの活動現場から臆さず問題提起する、そんな仲間がJDを通して広がっていくことを心から願い、その中に自身が参加できることをうれしく思う。
"今"を制作する理由 岡崎 妙子(アートビリティ登録作家)
日本の審査に向けて
~JDFパラレルレポート2の概要とJD学習会~
赤松 英知(日本障害者協議会政策委員/JDFパラレルレポート特別委員会委員)
~改めて障害者のトイレ問題を考える
髙橋 儀平(東洋大学名誉教授)
障害者にかかわる欠格条項の急増 臼井 久実子(障害者欠格条項をなくす会事務局長)
読書を通して心豊かな人生を送るために
-読書バリアフリー法への期待と課題-
宇野 和博(筑波大学附属視覚特別支援学校教諭)
専門職とVHO-net 松下 年子(横浜市立大学医学部看護学科教授)
南アジア:ネパールから Kiran Shilpakar(ネパール身体障害者協会代表)
介助を使いながら生きる
油田 優衣(京都大学教育学部4回生)
■個人賛助会員・・・・・・・1口4,000円(年間)
■団体賛助会員・・・・・・1口10,000円(年間)
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※視覚障害のある方向けのテキストデータ版もございます。
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