19年9月26日更新
VOL.39-6 通巻NO.471
NPO法人日本障害者協議会理事
全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会 藤木 和子
今年は8月末の「24時間テレビ」を最初から最後まで視聴しながら生活してみた。その放映が近づく時期に「障害や病気がある人の『兄弟姉妹』(以下、きょうだい)」に関するインターネット上のニュースに議論が起こった。1つは、バイオリニストの高嶋ちさ子さん「ダウン症の姉の面倒を見させるために…母は私を産んだ」。もう1つは、タレントの奥山佳恵さん「ダウン症の弟持つ高2長男が福祉の道」。
前者は「生まれた意味や期待」。後者は「進路選択への影響」。課題と議論の背景には、障害に対する差別や偏見、本人や家族の責任を期待する世の中がある(民法877条の親子、兄弟姉妹の扶養義務)。当然、きょうだいだけではなく、親御さんも、障害児者も「選択の良し悪しではなく、『自分の人生』を納得して生きられるかどうか」という家族全体、社会全体の重要課題である。紙幅の関係でニュースの詳細をご紹介できず、ご関心のある方は検索してお読みください。
両ニュースへのコメントは合計1500以上、数万人もの閲覧があったと思われる。そして、今年の24時間テレビの平均視聴率は16.5%、2千万人。定番の身体障害児者のチャレンジものが多かったが、車いすユーザー向けのバリアフリー情報を投稿で共有できるアプリに「情報のチャリティ」が募集された。1日数件の投稿が、放送後は数百にもなったそうだ。
番組への賛否、好き嫌いは承知だが、私個人はお祭りが好きだ。ぜひ、あまり取り上げられてこなかった種類の障害や病気、きょうだい、ヤングケアラーなども取り上げていただきたい。
ご紹介になるが、「Sibkotoシブコト障害者のきょうだいのためのサイト」は、インターネット上で"きょうだいのコトをきょうだいのコトバで" 相談や意見、情報やヒントなどを投稿、閲覧できる。現在、投稿2千、月間アクセス5万。前向きな日も落ち込む日も、24時間365日、日本全国、世界、どこに住んでいても、必要な時につながれるインフラ。顔も本名も知らなくても互いに支えになったり、魂が触れ合う、ぶつかり合うやりとりもある。
一方で、JDの集会、弁護団で活動している優生保護法の裁判、きょうだいの会等で、実際に会えること、集まれることの貴重さ、熱意とつながりの強さもひしひしと感じる。
私にとってはどちらも大切だ。もっと早く出会っていたかった気持ちも込めて、「情報とつながりが必要な時はここにあるよ」と発信を続けたい。
NPO法人日本障害者協議会 代表 藤井克徳
厚労省が遠ざかっていく。しかも加速度的に。いくつもの中央省庁にあって、私たち障害分野が一番信頼を寄せるのは厚労省のはず。でも今は違う。民間の障害分野関係者のみならず、厚労省OB からもため息が漏れる。
いつ頃からそんな風になったのだろう。はっきりとはしないが、保険原理を打ち破った障害基礎年金制度の創設(1986年)あたりが、分水嶺だったのかもしれない。「保険原理を打ち破った」とは、保険料をかけなくとも年金を受給できる制度。具体的には、20歳以前から重度の障害状態にある者が対象だった。年金審議会が到達したのは、「障害は当人や家族の責任ではない。社会が連帯して重度障害者の所得を支援しよう」だった。それは政策論の域を出ていた。障害観の深化を伴う一つの政策思想だったように思う。
時が経つにつれ信頼関係は薄れていく。ひび割れが決定的になったのは、あの障害者自立支援法の制定(2005年)だった。たとえ1割負担とは言え、「障害自己責任政策」に舵を切ってしまった。財政事情の如何を問わず、禁じ手であったはず。基礎年金創設時の「障害は当人の責任ではない。社会が連帯して支援を」とは真逆の道に迷い込んでしまった。集団訴訟の力で、実質的に応益負担制度は食い止めることができた。しかし、看板を書き換えて登場した障害者総合支援法には、応益負担制度が埋め込まれたままである。自立支援法の残影である「日割り計算」や「報酬単価」、「加算方式」に振り回されながら、権利の主体であるはずの利用者は金づるの主体になってしまっている。
信頼関係を損ねた理由は、応益負担制度への切り替えなどの政策面だけではない。他にもいくつもある。主なものを三点掲げる。一点目は、見て見ぬふりを決め込んでいることである。障害者をめぐる最大の問題が、すさまじい家族負担と異常なほどの低所得状態にあることは百も承知のはず。政策課題として換言すれば、扶養義務制度の改正と本格的な所得保障制度の確立ということになる。意図的な逃避は不作為も同然では。二点目は、異論に耳を傾けなくなったことである。このことは、関連審議会の委員の顔ぶれなどからもうかがえよう。しばらく前になるが、障害福祉部署の責任者とは激しい議論を重ねた。でも不思議と帰り道はさわやかだった。異論を排する行く手に待っているのは、弱くもろい政策に決まっている。三点目は、ごまかしの横行である。昨今の例では、あの障害者雇用の水増し問題である。「役人は数字を作る」の名言は健在であり、厚労省発のデータのすべてが危うく感じられてならない。
信頼回復は甘くはなかろう。まずは糸口探しが大切になる。そんな中で格好のテーマが出現した。障害の重い参院議員の当選で懸案の政策課題があぶり出された。議員活動を継続するために、支援の総合化をいかに図るかである。このことは、働く機会を求める障害者にとっての懸案の共通課題でもあった。障害当事者の立場に立てば答えは明白である。「雇用か福祉か」ではなく、「雇用も福祉も」に踏み込むことだ。信頼回復もかかっているこの課題に厚労省はどう向き合うのか、信頼失墜の上塗りにならないことを願うばかりである。
高齢者に「健康」を求める施策は優生政策につながらないか市民福祉情報オフィス・ハスカップ 小竹 雅子
運動とマスコミの共同作業で良い方向へ
みぬま福祉会 足立 早苗
自分のことと思えるよう、伝え広げていきたい浦和区障害者生活支援センターやどかり 鈴木 真帆
第19回放り出された障害者―大量解雇の現場から―中日新聞記者 出口 有紀
「身体拘束」からみる我が国の人権状況②杏林大学教授 長谷川 利夫
第3回障害者権利条約とフィリピンの動向NPO法人日本障害者協議会理事、法政大学現代学部准教授 佐野 竜平
障害のある議員の議員活動の保障について(要望)
第64回 葛藤を越えて、その先の目標へ酒井 七海(立教大学4年)
JDとの40年、これからも共にNPO法人日本障害者協議会理事、一般社団法人ゼンコロ会長 中村 敏彦
憲法・障害者権利条約とともに―深刻な実態をわかりやすく!課題の中に新たな方向を―
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