19年6月27日更新
VOL.39-3 通巻NO.468
NPO法人日本障害者協議会理事 中村 敏彦
障害者雇用の水増し問題が発覚してから、やがて1年が経過する。本件は、障害者に対する人権意識の低さが露呈したほんの一例に過ぎない。
今年の2月、障害者を対象に初めて国家公務員選考試験が実施された。申込者数は8,712人にも上り、当初の採用予定数676人に対して、人事院などが採用増の検討を求めたことから754人が合格した。大変ありがたいと思う半面、国の対応が、もっぱら雇用率達成の早期解決に向けたものであることに危惧している。問題の本質に迫ることなく幕引きされては困るのである。障害理解や職場内での人的・物理的配慮、人権意識、能力開発、適切な仕事の切り出しなど、雇用の質を伴うことが重要である。
私たちには、繰り返し、しかも徹底的に法令遵守が指導される。たとえ矛盾を感じ、理不尽と思えるものであっても、一旦は守ったうえで改正が必要であれば運動に繋げている。それは当たり前のこととして受け止めているが、本件は、行政・立法・司法・地方自治体を含めた公的機関で、一斉に、しかも42年もの長期に亘って恣意的に法律違反をしていたことに他ならない。障害者への労働権・人権侵害ともいえる愚行である。
3月19日、障害者雇用促進法改正案が閣議決定し、第198回国会に提出された。民間の事業主に対しては、短時間労働者のうち一定の範囲内であれば特例納付金を支給する制度や、中小企業を対象にした雇用実施状況が優良なものへの認定制度が創設された。一方、民間に規範を示す立場の行政機関に対しては、厚生労働省が報告や是正を求める「勧告」ができる権限が盛り込まれた。真摯に取り組んでほしいと心より願う。
ところで、わが国には1949年に制定された「人権擁護委員法」がある。この法は、法務省人権擁護局のもとで法務大臣が委員を委嘱することを前提にしているため、国連「パリ原則」が定める独立性がなく、国内人権機関とは認められていない。国連の人権条約実施監督機関および人権理事会は、日本政府に対して人権機関が未設置であることを勧告し、わが国は、2008年6月にこの勧告を受け容れているが、いまだに国内人権機関は設置されていない。
国連障害者権利条約を批准し、障害者施策は大きく前進したという向きもあるが、「他の者との平等という当たり前」には今なお遠い。国際基準からも人権に対する意識の質が問われる。
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