障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

19年2月27日更新

2019年「すべての人の社会」2月号

2019年「すべての人の社会」2月号

VOL.38-11 通巻NO.464

巻頭言 「若年性認知症支援コーディネーター」配置の課題

NPO法人日本障害者協議会理事 比留間 ちづ子


 最近は、若年性認知症(以下、若年者)がテーマのドラマや映画が話題になったり、講演会で本人の前向きな姿勢が伝えられその存在が知られてきた。しかし、早期診断は増えたが、軽度ゆえに生活指導や就労継続の手立てがなされないケースや、中等度で居場所がなく家族の負担が長期化し、地域社会での孤立が深刻であるなど、共生への施策の充当度は未だ低い。この課題特性を踏まえ一貫した対応のため、オレンジプランで「若年性認知症支援コーディネーター(以下、コーディネーター)」が県に配置された。その役割は、相談・訪問、普及啓発、研修会の企画、ネットワーク会議の開催など多岐にわたり、必要な資源や事業に結び付け、かつ資源を開拓して支援を実現することである。 

 平成29年度研究調査報告書によると、若年者の相談窓口設置は45県で、若年者専用29県、認知症全般17県であり、運営形態は委託43県(委託先は医療機関15、家族会15、ほかNPOや社会福祉法人等9)、直轄は2県。 

 コーディネーターの配置は41県で総数は75人。配置人数は1人が29県(64%)。一方、6人が2か所、9人が1か所と大きな差がある。常勤は36人、専任40人と約5割である。資格は、精神保健福祉士20、看護・保健師20が最も多く委託先の区分に準じる。次いで介護職、ほかリハ、心理などの専門職、認知症介護指導者、認知症ケア上級専門士など。若年者支援の経験年数は3年~15年以上が25人(33.3%)だが、一方、6か月以下が19人(25.3%)。これで専門的対応ができるのか?不安がよぎる。人材研修が課題となっていた。 

 ネットワーク会議開催30県の構成員は、認知症の行政担当や認知症疾患医療センター、地域支援推進員が多い。障害福祉サービスやハローワークは少ないが、産業医、商工会議所、弁護士が参加した県もあり、今後は大学や子どもの教育関係機関など、社会的活動の輪を広げる方向性でネットワークの普及が望まれる。 

 現在、地域生活支援や認知症対策、治療と仕事の両立支援など多様な制度や事業があるが、各々の利用条件や地域区分が資源利用を制限する場合がある。若年者⇔中壮年、認知症⇔障害、介護⇔仕事といった両面があるゆえに、横断的な運用の検討も必要であろう。それには行政の姿勢・統率力が反映する。また、増員と予算の確保が前提であり、自立して生きていきたいという当事者の思いを強く受け止めて「若年性認知症支援コーディネーターの配置」の成果を充実してほしい。

視点 旧優生保護法の問題に対峙するために―ハンセン病問題の検証会議に学ぶ―

NPO法人日本障害者協議会常務理事 増田 一世


 日本障害者協議会(JD)は、2018年11月21日、優生保護法被害者に対する謝罪と補償等に関する提案書(第一次)を与党旧優生保護法に関するワーキングチーム(与党PT)の田村憲久座長と優生保護下における強制不妊手術について考える議員連盟(超党派議連)の尾辻秀久会長に提出した。

 その後、12月10日には、与党PTと超党派議連の双方が合意して、「旧優生保護法に基づく優生手術を受けたものに対する一時金の支給等に関する立法措置について(基本方針案)」が発表された。1月28日からの通常国会に提出予定の旧優生保護法の被害者に対する補償などを盛り込んだ法案の基本的な考え方を示したものである。残念ながら基本方針案は合格点には程遠い水準であった。

 内容面について、主要な問題点を指摘すると、国の謝罪が明記されていないこと、憲法違反について触れていないこと、補償の対象が限定的であること、周知等の方策が不十分であること、検証について全く触れていないことなどである。

 JDの第一次提案で「今般の被害問題は日本の障害分野の行方にとって重大な意味を持つ」と指摘した。私たちは今、極めて重要な局面にいることを自覚しなくてはならない。優生保護法の被害の問題は過去のことではなく、日本国憲法のもと、必要ないのちと不要ないのちを峻別する優生保護法が成立したことを私たちは深く考えなければならない。自らの内なる優生思想とも向き合いながら、この問題に対峙していかなくてはならないのだ。

 私たちがこの優生保護法の問題に向き合うとき、「ハンセン病問題に関する検証会議最終報告書」は極めて重要な示唆を与えてくれる。800ページを超える報告書から、私たちは多くのことを学ぶことができる。

 ハンセン病問題に関する検証会議は、厚生労働省から財団法人日弁連法務研究財団(現在は公益財団法人)に委託され、2年半かけて最終報告書がまとめられた(2005年3月)。検証会議の委員はハンセン病患者・元患者2名、マスコミ5名、弁護士2名、療養所長1名、学識経験者4名、検証会議のもとに検討会が設置された。検証会議・検討会の検討課題は11項目にわたっている。①らい予防法制定に至る経緯、②らい予防法が1996年まで改廃されなかった事情、③優生保護法第3条第3号制定の経緯、④諸外国との比較、⑤医学界が果たした役割、⑥ハンセン病に関する偏見差別が作出・助長されてきた実態、⑦断種・堕胎・旧監房・強制労働・貧困な医療等の療養所の実態、⑧被害の全体像の解明、⑨沖縄及び日本占領下地域におけるハンセン病施策、そして、⑩これらを踏まえた再発防止のための提言、⑪ハンセン病政策の実態に関連する寺領の収集・データベース化である。検証のために国立及び私立のすべてのハンセン病療養所を訪問し、実地検証されてきた。

 再発防止のための9つの提言は、ハンセン病政策は患者・家族らに言語に絶するような重大で広範な人権侵害をもたらし、このような人権侵害の再発防止の核とされるべきは、患者・被験者の諸権利を法制化することであり、それは現行法ないしは現行制度の運用ではまかない得ず、新たな法整備が必要であるとし、患者の権利を保護する法律の必要性を冒頭で指摘している。そして、興味深いのは「パリ原則」に基づく国内人権機関を創設することを提言し、公衆衛生におけるあるべき人権救済制度のための法整備に向けて必要な合意形成を行うことは国の責務であるとしている点である。

 旧優生保護法の被害者に対する謝罪と補償が、今後どのように進められていくのか、もちろん各地で進められている裁判を応援し、勇気を奮って原告として立ち上がってきた人たちから、その被害の実態を知らねばならない。そして、国会で検討される謝罪と補償の法律の水準を高めていくための運動が求められよう。そのためにハンセン病問題の検証会議報告書は、私たちに1つの方向性を明示している。 

2019年1月の活動記録・講師派遣

連載 日本国憲法と私 第25回

憲法を日常的に意識すること戸髙 洋充


連載:優生思想に立ち向かう《3》

障害があっても、産むか産まないかを決めつけられずに、自分で選べる社会を
-優生保護法強制不妊手術被害訴訟に至る経緯-佐藤 路子(仮名)


連載 他の者との平等-メディアの可能性-

第12回 共生社会の在り方を探ろう山城 紀子


EUCOMS(ユーコムズ)のコンセンサス・ペーパーについて〔3〕

互いから学び合う リカバリーの視点から
~地域を基盤とする精神保健ケアの基本原則の鍵となる構成要素に関するコンセンサスペーパー~岡田 久実子


JDF 障害者差別解消法に関するアンケート結果について

太田 修平


トピックス・インフォメーション

特別寄稿 ゆっこ先生の生き方 ~認め合い支え合う共生社会のために~

教壇復帰にかける思い~自分らしく活躍する共生社会をめざして~山口 雪子


私の生き方第59回

今の自分を認める勇気垂水 麻奈美


連載エッセイ 障害・文化・よもやま話

第12回 戦争と障害者⑥ 療養所の中の精神病室(前編)荒井 裕樹


インフォメーション

旧優生保護法下における強制不妊手術に関するJDFフォーラム


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〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 日本障害者協議会
TEL:03-5287-2346 FAX:03-5287-2347

○メールでのお問合わせはこちらから office@jdnet.gr.jp
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※ご不明な点はJD事務局までお問い合わせください。



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