障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

18年4月23日更新

2018年「すべての人の社会」4月号



2018年「すべての人の社会」4月号

VOL.38-1 通巻NO.454

巻頭言 「忖度」ではなく自分の言葉で語りたい

NPO法人日本障害者協議会理事赤平 守


 3月15日、JD連続講座が今年度も無事終了しました。すでにこの企画も5年目を迎えました。今年の3回に通ずるテーマは「憲法25条・生存権に基づく障害者施策のあり方を問い直す!」です。企画委員会の立場からすれば全回、ほぼ満席に近い状態で終えることが出来たことは安堵できることでしたが、あえてこの企画に対して、JD企画委員会として、胸を張れるものがあるとすれば、毎回、「当事者の声」が聴くことのできる貴重な講座に仕上げたことだと思います。
 今年度も第1回は「生活保護引き下げ違憲訴訟原告」の方、第2回は「障害者自立支援法訴訟 元原告」の方々がそれぞれ自分の言葉で発言してくれました。また第3回では会場の参加者から多くの意見が出されました。こういった参加者の積極性は連続講座の特徴ともいえます。そして、こうやって発言の場を広げていく事は、実は「日本国憲法第21条 ①集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」を実践していることになるわけです。
 今年の通常国会はここ数年間で最も「何か波乱が起こりそうな」雰囲気があります。この4月号が出るころ、もしかしたら大きな変化があるかもしれません。それは神のみぞ知ることとして、異様とも思えるのは、国会周辺ばかりでなく世の中全体の「忖度」という言葉の蔓延です。あれあれ「忖度」は去年の流行語大賞だったんじゃないの?去年の今頃は、国民のほとんどが読み方や正しい使い方がわからずにいた、この「忖度」という言葉が今や完全に国民の日常語と化してしまっているようです。ただし本来の意味の「他人の気持をおしはかること」により、結果が全体の利益に反映されるといった使い方ではなく、「おしはかる」ことによって「都合の悪いことは押し隠す」という歪んだ使い方として…。10年前に「KY(空気を読まない)」という言葉がやはり流行しました。「忖度」とは反対の意味になりますがその背景には、全てを語らずとも周囲の状況を推察して次の行動に臨むことが日本人独特の美徳という考え方と、同時に物言わぬ日本人の弱点が潜んでいるように思われます。
 今後、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて「地域共生社会の実現」や「世界一安全な日本」創造戦略などの政策実現のため、国民間に忖度が求められることが起こるかもしれません。そんな時こそ、ひとり一人が自分の言葉で考えを表現することが大切ではないでしょうか。

視点 地球時間

NPO法人日本障害者協議会副代表 薗部 英夫


 BSで「南極 氷の下のタイムカプセル」をみた。
 南アフリカのケープタウンまでは飛行機で飛んで約24時間。そこから南極の基地までさらに6時間。天候が悪いとそこで1週間待機はざらで、その先の目的地のアンターセー湖まではスノーモービルで120キロ、約12時間かかる。湖に着いたのは日本を出発してから20日後のことだったとスタッフ談。最果ての地だ。
 9割が氷という南極の湖に潜るのだから、氷に入口となる穴を空けるのも3日かかる。氷の厚さは3.5メートル。大きなドリルで穴を空ける。そこに銅のパイプを入れ、4時間ごとに燃料を補給しながら温水熱で氷を溶かす。すると、人一人が入れるほどの穴が空く。

 氷河の下の湖に何を探すのか?
 光は氷を通過すると青色だけが残るそうだ。光は地上の5%しか届かない。だから氷のトンネルを抜けるとそこは美しく優しいブルーの世界だ。
 その湖の底に不思議なコブのようなものが広がっている。腐ったコンブが堆積したような感じで、触るとすぐ壊れてしまう。よく見ると細い毛のようなものがたくさん生えている。その先端から細い糸が光のある氷上に向かっている。小さな水泡が少しだけ着いている。
 その塊が、酸素をつくりだす「シアノバクテリア」の集合体だ。約35億年前、地球に最初に酸素を生みだした微生物だ。太陽の光を使って光合成をなし、地球のいたるところに広がっていった。光合成の副産物で酸素が生まれる。
 水中カメラは、氷河の下と湖の間にキラキラと輝くものを映す。シアノバクテリアは、少しずつ集合して、小さな気泡を抱え、やがて氷の中に閉じ込められる。
 一見変化がないように見える氷も表面では蒸発が起きている。長い時間をかけて表面に運ばれる。風に飛ばされて運良く水に着水すれば新たな場所でふたたび命をつないでいく。
 酸素をつくりだすことで「ゼロ」を「有」に変えたシアノバクテリア。それが地上にあらわれる悠久の時間。そして、20億年から14億年前にかけてシアノバクテリアは植物の光合成をなす葉緑体に進化する。酸素をつくりだす森はシアノバクテリアが究極の進化を遂げた姿なのだ。酸素は爆発的に増加し地球環境は大きく変わる。5億年前には陸上植物の時代がやって来る。

 ここまでがテレビ番組の私流のあらすじだ。「ゼロ」から酸素を生みだしたシアノバクテリアという存在にたいへん驚いた。それとともに、その微生物が光合成をなす植物細胞へと進化していくことに感動させられた。「ゼロ」から「有」はまさに「革命」だけど、それから「光合成をなす」ことへの飛躍もすごい「革命」ではないか!
 酸素の爆発的な増加は、地球にオゾン層を形成し、生命を育む地球環境に新たな転換をつくりだす。そして、恐竜絶滅の6500万年前をこえて、400万年前にヒトが出現する。

 ところで、地球の歴史を「1年」に例えると、人類(ホモ・サピエンス)の登場は12月31日の午後11時30分を過ぎてからだ。
 しかし、21世紀を前後して、このたった数十年の間にオゾン層の破壊はすすみ、森林破壊、砂漠化など環境破壊が猛烈にすすんでいる。1年間に1000種が絶滅している現実もある。核兵器による戦争などもってのほかだ。
 いま、本気で地球を慈しみたい。すべての人びと、すべての生きものたちの地球を大切にしたい。
 そのために何をなすべきか。地球時間の「ゆく年くる年」がはじまる前に。

2018年3月の活動記録・講師派遣

障害者自立支援法訴訟の基本合意の完全実現をめざす会ニュース53(通算72号)

☆第9回定期協議開催 全国から150人が参加
基本合意・骨格提言・権利条約の実現を迫る! 3.26 厚労省会議室


連載 他の者との平等―メディアの可能性―

第4回 障害福祉について、いま、考えること-地域共生社会の行方-熊谷 和夫


連載 障害者権利条約パラレルレポートへの道

第10回 パラレルレポートと社会全体の人権意識向上井上 育世


連載 差別と抑圧の歴史

第22回 強制不妊手術と民主主義岡田 靖雄


~欧州便り~

☆イギリスから③異なる政策・異なる可能性-障害者への性的支援における世界の状況ユリア・バーナー

☆スウェーデンから③家族 パーソナルアシスタンス紅山 綾香


トピックス・インフォメーション

2つの訴訟

65歳問題で初の判決=勝訴も、岡山市は控訴
視覚障害を理由の授業外しは不当―高裁も無効と判決―


私の生き方

第53回 私と高次脳機能障害根本 佳奈


連載エッセイ 障害・文化・よもやま話

第7回 戦争と障害者①荒井 裕樹


インフォメーション

JD政策会議2018 障害者権利条約 パラレルレポートJD草案報告と学習会



賛助会員大募集中!
毎月「すべての人の社会」をお送りいたします。

■個人賛助会員・・・・・・・1口4,000円(年間)
■団体賛助会員・・・・・・1口10,000円(年間)

▼お申し込みは下記JD事務局へメール、電話、FAXなどでご連絡ください。
〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 日本障害者協議会
TEL:03-5287-2346 FAX:03-5287-2347

○メールでのお問合わせはこちらから office@jdnet.gr.jp
○FAXでのお申込み用紙はこちらから 【賛助会員申し込みFAX用紙】

※視覚障害のある方向けのテキストデータ版もございます。
※ご不明な点はJD事務局までお問い合わせください。



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