17年5月31日更新
VOL.37-2 通巻NO.443
NPO法人日本障害者協議会理事 比留間 ちづ子
高齢人口の増加に伴い、認知症施策は『認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)』を立てて大きく進展しようとしている。その主旨は~認知症高齢者にやさしい地域づくり~である。根拠として2025年に認知症が462万人と見込まれ、5人に1人が対象で、専門職も住民も参加した健康で安心できる地域の配慮がなければ生活の継続が困難だからである。初期集中治療支援や認知症地域支援推進員等の設置事業、地域密着型サービス事業所など。また、地域住民と交流できる認知症カフェは700か所以上となった。
若年性認知症は、身体ケアは不要だが、仕事や役割や交流など社会的存在の足場となる地域とのつながりが再生の鍵である。ここに至る施策の経過は、1996年に厚労省に若年痴呆研究班が発足、2008年にようやく実態調査報告、2017年オレンジプラン最終年となり、施策の区切に10年を要したがそのテンポはやや早まっている。それは高齢者急増による財政的理由もあるが、意見交換会などで若年性の本人が社会参加意欲への明確な主張を行い、また支援者と共に地域をつなぐ活動を活発に展開してきたからである。
2017年度から若年認知症支援コーディネーターが各県に置かれる。本人・家族の課題や負担に対して医療・介護の他、障害福祉、就労、子育て支援、地域行政、地域活動との連携調整を図るためである。しかし個々の生活課題は多様であり、理解ある地域市民参加の充実も働きかけていく。
介護保険制度の利点と言えば、このような個別のコーディネート機能が独立していることで、もちろん本人の意図を適切に受け止められる専門的能力が必要であり、障害のある人が介護制度を利用する場合にも十分な判断と連携機能が必要になってくる。
若年性認知症の対応が難しいのは、それまでの人生観を貫いて行動しようとするためであり、失望と不安も強く、認知症それ自体を受け止めるのに時間や共感が必要なため、制度利用への抵抗が強いからである。説明と同意の機会が多く必要である。また、進行していく課題をしっかりと分析して連携を築いていくことが求められる。
4月27~29日に京都で国際アルツハイマー学会が開催される。各国の認知症への有効な対応が提示されるので大いに学びたい。 (4月28日記)
NPO法人日本障害者協議会副代表 石渡 和実
編集部から、「たまには柔らかいテーマも」とのお話があり、今月はちょっと楽しい話題を提供させていただく。
3月の半ば、学生の海外研修の引率ということで、スウェーデンの幼稚園等を訪問する機会を得た。日本でも幼稚園と保育園を一体化した認定こども園などが論議されているが、スウェーデンではこの10年ほど、"Edu-care in Sweden"という言葉が用いられるという。そして、働く親の支援というより「就学前の子どもの教育」という側面が重視されてきている。7歳からは小学校での義務教育となるが、6歳を「準備教育」と位置付け、教育への橋渡しとしてのプレスクール的な役割に力点が注がれている。
今回の研修では、ストックホルム市に隣接するナッカ市という人口10万人ほどの市の教育行政や幼稚園・小学校での実践について学ぶことができた。
"New Challenges"というスローガンを掲げ、「楽しみながら学ぶ」という方針で28のゴールを設定している。その第1のゴールとして、数学や言語などの学習より先に「価値観」が掲げられていた。
特に印象的だったのが、下の写真にあるような学習目標の転換である。
「階段を昇ることではなく、生姜の根っこ」という発想に、大感激させられてしまった。学力の向上ではなく、生姜のように「いろいろな方向に根っこを伸ばす」ことなのだという。すなわち、子どもの個性や価値観に応じて、いろいろな面で力を発揮するということで、まさに「多様性の尊重」である。そして、この言葉をスウェーデン滞在中、何度も聞くことになった。
訪問した幼稚園では「差別の禁止」を目標に掲げ、6つの差別に注目していた。すなわち、①ジェンダー、②性的少数派(LGBT)、③国籍人種、④宗教、⑤障害、⑥年齢、である。幼少時からこうした「違い」を当然のことと受け止めるために、日々の遊びでも、肌の色が違う人形が1つのベッドで寝ている、などが当たり前になっている。ここでまた感激したのが「プリンセスの塗り絵」である。日本で「プリンセス」と言ったら、ディズニーランドのシンデレラ、白雪姫などをイメージしてしまう。ところが、ここのプリンセスは本当に多様である。男女の役割や服装に固定観念を持たない絵とか、「アナと雪の女王」も白血病と闘い、髪がなくなったプリンセスとして紹介されている。
幼稚園と小学校とが一体化した教育を実践している学校は、何と98%が移民だという。障害児と分かる子も多く、ごく自然に仲間に溶け込んでいた。昼休みの大縄跳びでは、杖を使う子は跳ぶのではなく縄をくぐるというルールが、ごく自然に子ども達の間で成立していた。こうした場面に、まさにスウェーデンらしさを実感した。多様な人々が尊重されながら暮らすということが、子どもの頃からごく当たり前になっているのである。「共に生きる」を、知識ではなく日々の生活から自然に学び取っている。
日本がこのような社会になるまでには、まだまだ多くの時間と試行錯誤が求められよう。
第9回 試されている!?「不断の努力」 佐藤 ふき
第10回 アダプテッド・スポーツ~障害の有無に関わらず一緒にスポーツを楽しもう~ 内田 匡輔
第15回 いのちが守られる社会の実現のために
川田 龍平
映像のもつ力 迫田 朋子
スイス・ジュネーブ 国連・障害者権利委員会傍聴報告 佐藤 久夫
自分らしく、やり甲斐を持って生きていくことを願って 山口 雪子
JDF熊本支援センターの活動を終えて 赤松 英知
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