16年12月16日更新
VOL.36-9 通巻NO.438
NPO法人日本障害者協議会理事 太田 修平
先日電車で途中の駅から乗ってきた40歳くらいの女性が車両と車両の間に入り込み、閉め切って朝ごはんらしき野菜ジュースを片手にサンドウィッチを食べ始めた。"なんて危ないことをする人だろう"と、時たま彼女の方にちらっちらと視線を向けていた。そうしたら10分も経たないうちに私の方に来て「このウエストバッグ何が入っているの」と聞いてきた。警戒心を持ちながら「まあ色々なものです」と答えると「ぱんぱんね。これじゃ紙一枚も入りそうにないんじゃない」と言ってきた。確かにそうかもしれない。いつも連れ合いには言われていること。でも、見ず知らずの他人がいきなり言ってくるなんて大きなお世話だと感じていると、今度は「どこまで行くの」と聞いてきた。あー鬱陶しい、と思いながら車イスの人の印象を悪くしてはならないと、「四ツ谷まで‥」と答えた。するとその人は「四ツ谷なら私、前バイトしてたの、居酒屋さんで」と言ってきた。なんとか話を切り上げたいと思いながら「あ、そうですか・・・」と答えていると、そのうちその人が降りる駅に近づいてきた。
するとかばんから犬の顔をモチーフにしたキーホルダーを私のウエストバッグに付けようとし始めた。「これあげるから」。しかしもう降りなければならない。すると近くにいた20代くらいのサラリーマン風の気の良さそうな男性に「私降りなければならないから、あんたこれ彼のバッグに付けといてあげて」と言って彼に渡し、彼は私のウエストバッグに苦笑いしながら付け始めた。とりあえず「どうもありがとうございます」と私は2人にお礼を言った。考えもしない展開となってしまった。
さて、今日(11月24日)東京に雪が降った。テレビ報道によれば、11月に雪が降ったのは54年ぶりとか言っている。2日前まで暖かかったのに、どうなっているんだろう、急すぎる。体が追い付いていけない。天気だけではない。一昨日は、東北地方でまたもや地震、津波警報が出され、津波も観測された。自動車で避難する人が多く各地で渋滞だったとか。東日本大震災の教訓がいまいち活かされていない。やはりいきなり来てしまったわけだが、過去に学んでいかなければならない。
"まさか"と思っていたトランプ氏がアメリカの次期大統領に当選してしまった。これだけはあってはならないことで、多分大丈夫だろうと思っていたが、本当に"まさか"のことが起きてしまった。
日々の暮らしのなかで、また社会状況、あるいは福祉政策についても、予期しない"まさか"は、いつかやってくる。私たちはその時の備えや心構えはできているのだろうか。
NPO法人日本障害者協議会副代表 石渡 和実
11月25日、黒岩神奈川県知事に相模原事件検証委員会の報告書を委員長として提出した。委員会は9月21日に発足し、11月22日までに7回が開かれた。5人の委員も法人も事務局も、真摯に、誠実に議論を尽くしたと考える。しかし、こうした委員会ゆえの難しさや時間の制約もあり、今後に残された課題の大きさを改めて実感させられている。
10月下旬には現地視察ということで、津久井やまゆり園を訪れた。木々も色づき、秋らしい穏やかな日であった。その恵まれた自然の中で、職員の皆さんは、何事もなかったように笑顔で利用者の方々に接していた。泣き出したい思いもあるだろうに、どの職員も、そんな様子は微塵も見せていなかった。その努力に、胸が熱くなった。
しかし、園内を回ると、がらんとした何もない部屋が続く。ところが、壁にテープが貼られたままだったり、曲がった釘が残っていたり……。それぞれの生活の痕跡が見出され、亡くなられた方に思いをはせ、心の中で合掌せざるをえなかった。
津久井やまゆり園は地域の人々に受け入れられ、この地での生活を再開したいという声が多いということも納得させられる。「建て替え」については、いち早く議会で決定され、160人規模で、60~80億円と言われる費用についても早々と国に助成を求めたという。親御さん達の切実な声を受け止め、とにかく暮しの場を少しでも早く再建しなくては、という思いからだという。
しかし、この方向でよいのか。あまりに拙速すぎる決定ではないか。再発防止を考えるなら大規模施設は作らないことが大前提ではないか。一方で、こうした声も多い。また、「当事者不在」という言葉も随所で聞かれる。親御さんの痛みは、もちろん理解できる。しかし、匿名報道などとも関連して、保護者への同情が先立つばかりで、「障害がある本人達の声が全く聞かれない」、「真の被害者は誰か」といった問題提起も続いている。検証委員会の議論の過程で、筆者もこの「当事者不在」を感ずることがしばしばであった。
2006年12月13日、国連のニューヨーク本部で障害者権利条約が採択された。そこで繰り返された、"Nothing about us,without us!"。この言葉は、今、日本でも障害者施策の原点になっている。市町村では、身近に障害がある人の生活に接し、その切実な声を日々受け止めているように、県という広域行政でも同様にこの視点が今後、必要なものであると感ずる。「まずは当事者の声を受け止め、そこが施策の出発点である」という姿勢が求められるだろう。
そして、この事件で大きくクローズアップされた「優生思想」である。「障害者は生きる価値がない」といった容疑者の主張に、共感する声も少なからずある。ヘイトクライムなどが頻発する社会情勢も踏まえ、人権教育が改めて問われている。また、福祉従事者であった容疑者がなぜ事件を起こしたのか。その養成や待遇についても検討が求められる。
他にも報道のあり方や関係者の心のケアなど、この事件を機に、福祉に関わる根源的な問題が浮き彫りにされた。これらは教育、労働、医療、司法などとも深く関わっている。この厳しい事件からいかに多くのことを学び、ポジティブに課題に向き合い、前に進んでいくべきか、社会全体で真剣に考えていくことが求められている。
第5回 「二つの橋」~法の下の平等とは~ 鈴木 寛子
日本国憲法公布70年 あなたにとって憲法とは?ともに学ぼう!語り合おう!
さらなる給付抑制と負担増は介護保険崩壊の道 鈴木 森夫
第5回 日本の障害者スポーツの歴史と発展 安藤 佳代子
いよいよパラレル報告への取り組みへ 佐藤 久夫
「相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム」の中間とりまとめを読んで 上野 秀樹
第43回 三宅 浩子さん 三宅 浩子
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