24年3月22日更新
VOL.36-12 通巻NO.441
NPO法人日本障害者協議会理事 戸髙 洋充
私の住む神奈川県で、昨年7月26日、相模原市の「津久井やまゆり園」で事件が起きました。その日の朝、同僚職員からのメールで起こされ慌てテレビで事件の悲惨さと残虐さを知り声も出ませんでした。
元職員である容疑者の「障害者はいなくなればいい」という言葉に唖然とさせられました。運営団体の関係者とは日頃県内の会議で一緒だったりしているだけに、何故こんなことが起きたのだろうと思わされました。事件の翌日には、相模原市の近隣の市の警察が、グループホームに夜間の職員体制について聞き取り訪問があったと県団体に報告が上がっています。衆議院議長に出した手紙にもし襲撃先が小学校と書いてあったら多分対応は全く違っていただろうと県団体の理事が言っていました。
我が国は、「障害者権利条約」を批准し、「障害者差別解消法」が昨年4月施行し制度が整い、なんとなく人権擁護が表面的には進んでいると錯覚していた自分がいました。
精神科病院でなく地域で生活しようと、色々な事業を展開している中、部外者の侵入を阻止するために、完璧な防犯システムを整備すれば防げるかの如く補助金が出されるようですが、それで、今回のような事件の防止になるのかと首を傾げます。
私の勤務しているホームの町内会の防犯パトロールに職員が毎回参加しているのですが、事件の後、役員の方からホームの夜の当直はやっているのか聞かれたと報告がありました。これまで、地域とは一定の良好な関係を築いてきてはいますが、何かあれば一気に崩れていきます。世界的に排他的な風潮が覆っているなかで、この事件について賛同する声も聞かれ、我々は日々の生活の中でどう向き合っていくのか、それぞれに問われていると思います。
1月10日、津久井やまゆり園再生基本構想に関するヒアリングで私は「園ができた50年前と今求められているものは基本的に違う。入所施設からの地域移行は進んでいない。入所施設も一定必要と言うなら、どういう機能を持たせながら地域移行を進めていくかが肝心。基本は地域生活。地域に戻るプロセスをどう作っていくかを軸に進めていかないと50年後の人に何と言われるだろうか」と発言しました。
「誰もがその人らしく安心して暮らせる地域づくり」を改めて考える機会ではないかと思います。これまでやってきた、人として生まれてきた以上、だれもがその人らしく生きて行くことが当然であることを実践して訴えていくしかないと思います。
NPO法人日本障害者協議会副代表 薗部 英夫
中学から高校時代の「カセットテープ」が出てきた。テレビにくっつけて、家族に「静かに!」と言いながら録音した「風」「白いブランコ」「戦争を知らない子供たち」。自分の声を録音して、はじめて聞いたのもこの頃だ。
録音技術は、エジソン発明のレコードにはじまり、テープレコーダーはデンマークのヴォルデマール・ポールセンによって1898年に実用化された。そして、1960年代に一体型ラジオ「ラジカセ」として田舎の少年Sと出会う。
しかしその後、「この50年で最も偉大な発明」第2位の「ウォークマン」が登場し、若者の生活スタイルを変えた。世紀をまたいで、「MD」「ICレコーダ」が駆け抜け、今は「ハードディスク」が主流だ。
「テープ」はたしかに劣化するが、保存した貴重な記録は、再生機の確保が難しくなって聞くことができなくなる。録音方式が違えば互換性も継続性もない。「消さない」ための奮闘努力もいつの間にか「消えてしまう」ような危うい時代。
でも、どうしても「消してはならない」ものがある。厚労省が2月7日に公表した「「地域共生社会」の実現に向けて(当面の改革工程)」は、「我が事・丸ごと」具体化のための大方針だ。が、そこには3つの視点が「消えている」。
第1は「社会保障の歴史」の視点だ。冒頭、「歴史的に見ると、かつて我が国では」ではじまり、「地域の相互扶助」「家族同士の助け合い」が強調される。そして「戦後」とつづき、「『縦割り』で整備された公的な支援制度の下で、対応が困難なケースが浮き彫り」とされ、「公的支援のあり方を『縦割り』から『丸ごと』へ改革が必要」と述べる。
しかし、そこには、戦争を二度とくり返さない決意のもとに制定した日本国憲法の位置づけはない。戦後の社会保障は憲法に基づいて形成された。また、産業革命と労働運動、社会保障を確立してきた世界の歴史、人権保障の人類史の視点が欠落している。障害者権利条約はじめ、国連のもとでのさまざまな国際条約のとりくみも「消えている」。さらには、介護保険スタート時に喧伝された「介護の社会化」とその後の「破綻」も消されている。
第2は「専門性」育成だ。「専門人材の機能強化・最大活用」では、「各資格の専門性の確保に配慮しつつ、養成課程のあり方を『縦割り』から『丸ごと』へと見直していく」として、8つの医療職(看護師、准看、OT、PT、STなど)と4つの福祉職(保育士、社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士)の養成課程の再編がある。しかし、発達をみても、幼児期、青年期、高齢期などそれぞれの「発達心理学」がある。保育や介護の仕事は誰でもすぐにできるものではない。対象者をよく見て、自分はその人になにができるか確信を持ってとりくめるためには、養成課程だけでなく、現場にこそ「専門性」育成のための制度も財政も時間も必要だろう。
そして、第3は、「私たち抜きに、私たちのことを決めないで」。官僚だけでつくられた「我が事・丸ごと」には、当事者の参画がほとんど「消えている」。制度改革推進会議を持ち出すまでもなく、当事者参加は世界の常識、基本中の基本のことだ。
具体化はこの春、介護保険関連の一括法案にはじまる。社会福祉法や総合支援法「一部改正」も含まれる。介護保険と障害福祉制度に「共生型サービス」を創設し、「いずれかの指定を受けた事業所がもう一方の制度における指定を受けやすくする」。これは介護保険優先による65歳問題に対して、"サービスはとりあえずつなぐも、費用は介護保険で" となりかねない乱暴な議論ではないか。
障害者、高齢者、療養病床利用者、働く被保険者、保育関係者などみんなでいっしょに行動したい。
ー女性差別撤廃条約の審査のロビー活動の経験からー 河口 尚子
第8回 発達障害のある子どもたちとスポーツ 澤江 幸則
第13回 みんなと共に歩む 新潟胎児性水俣病患者として
古山 知恵子
第7回 いつも情報のアンテナを張って 髙橋 宏和
第45回
いのちの春夏秋冬 品川 文雄
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