障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

17年1月25日更新

2017年「すべての人の社会」1月号



2017年「すべての人の社会」1月号

VOL.36-10  通巻NO.439

年頭にあたって 憲法施行70年を障害分野の視点から

NPO法人日本障害者協議会代表 藤井 克徳 


 営々と歴史を積んできた私たちの社会であり、いずれの年も何らかの記念の年が重なる。今年の2017年で言えば、介護保険法の成立や社会福祉基礎構造改革から数えて20年、精神衛生法から精神保健法に改められて30年等々、社会福祉分野だけをみてもいろいろな出来事が蘇ってくる。
 ただし、今年はわけが違う。桁外れの節目が私たちの前に横たわる。それは、「日本国憲法施行70周年」である。憲法と言えば国の最高法規であり、70年と言えば戦後の振幅の全域に相当する。これらが重なるのだから、それが持つ意味は格別と言えよう。
 憲法についてのイメージは、人それぞれだと思う。私見を言わせてもらえれば、風雨にさらされながら、かつ断崖に根を張る巨木を彷彿させてくれる。いとおしさと同時に、風格にも似た頼もしさを併せ持つ存在である。
 もう一つ、古典のイメージとも重なってくる。古典とは、何十年経とうが、何百年経とうが、また表現が古めかしかろうが、部分的には違和感があろうが、本質部分の価値が変わらないものを言う。存在自体が独自の力を放つと言ってもよい。日本国憲法もそのような感じがしてならない。
 憲法施行70周年の今年、私たちは、「憲法と障害者」に積極的に向き合うべきである。憲法と障害関連の法制、憲法と障害者権利条約、憲法と障害者が置かれている実体、憲法と障害者の近未来など、いずれも深め甲斐がある。憲法があったればこそ、ここまで発展してきたもの、逆に今なお憲法の本旨に追いついていないもの、いろいろとありそうである。
 人間の歳からすれば古希(70歳)にあたる憲法であり、本来であれば祝賀ムードといきたい。ところが昨今の様相はそんな雰囲気ではない。70周年の節目を改憲に向けての新たな基点にしようという動きが現実味を帯びている。声高の改憲論から飛び出ているフレーズは、「国防軍の新設」「基本的人権条項の削除」「家族の助け合い強化」などである。いずれも障害分野からは、身の毛のよだつようなものばかりである。
 平和にしろ、社会保障や社会福祉にしろ、閉塞感や不透明さが増している。国外に目を転じれば、排外主義が先進主要国を覆いつつある。国の内外の動向に向き合うとき、胸のすくような羅針盤になってくれるのが日本国憲法である。  JDの今年は、昨年の公布70年に続いて、否、それに増して「憲法に向き合おう」の年といきたい。

新春インタビュー 柳田邦男さんに聴く 本当の価値を問い直し、つながりあう社会に

聞き手 日本障害者協議会常務理事 増田 一世 


新春インタビュー 柳田邦男氏:ノンフィクション作家、評論家。航空機事故、災害、戦争、がん死などのドキュメントや評論の著書多数。障害分野では、NHK障害福祉賞選考委員、知的障害のある安永健太さん死亡事件や熊本の水俣病の作業所への支援などでも関わっておられます。栃木県生まれ。

今の社会をどう見るか
増田:あけましておめでとうございます。新年にあたり、幅広い分野で取材や著作活動を続けて来られた柳田さんのご経験から、今の世の中をどのようにご覧になっているかをお聞かせいただきたいと思います。障害分野では、安永健太さん事件や津久井やまゆり園事件など、障害のある人の人権が軽視される傾向があると捉えていますが、これは障害分野の問題というより、社会全体の課題が凝縮して表れているのではないかと考えています。

柳田:今は世界史の転換点に立っていると言えるくらい、社会が根底から揺さぶられている時代に直面していると思います。人口減少時代に入り、若い世代が減って、高齢者が増える、超高齢化社会を迎えています。多くの病気が治せるようになって、がんも長く生存できるようになりました。一方で、生産人口の減少で高度な経済成長は期待できなくなっています。世界的に人口動態の変化を前提にしないと物事を考えられなくなっています。先進国では、都市と地方の経済や生活の格差が広がっています。大都市は、見かけは賑やかですが、ワーキングプアや保育の困難など社会問題が多く、一方地方の町や農村部では人口減少が著しく、貧困層が増えています。大企業中心に経済回転しているように見えるけれども、全体的な格差社会は進行しています。ITなどの大企業ばかり伸び、下請けの中小企業はかつかつです。個人レベルでも同じです。そうした中で、病気の人、高齢者、障害のある人などいわゆる社会的弱者の生きづらさが否応なく出てきます。そこでいかに生きるかが問われますが、私は、人がつながり合い、助け合い、支え合うことを基盤とした社会づくりが大事だと思います。高度経済成長期とは違う価値観です。

増田:なぜ巨大企業の欲望は留まるところがないのでしょうか?

柳田:人間のさがでしょう。動物としての原点は腕力、狩りの強い者が生き残り、弱い者は淘汰されます。それを乗り越えて、弱者も生きる、共存するという文明を人は進化させました。法律を作って、弱肉強食ではない社会をつくってきたのです。しかし、法制度があっても、自分が金持ちになり好きなことをしたいとか、権力を握って人を支配したいという人間の性、欲望を完全に抑えるところまではできていないですね。これからは、強欲な金持ちが生まれるのは避けられないとしても、貧困な人や障害、病気のある人を含め、だれもが生きられる社会をつくる努力をしていかないといけませんね。

「つながる」ことの大切さ
増田:だれもが生きられる社会に向かって、何を大切にしていったらよいのでしょうか。

柳田:時代の変動の中で、人々が"つながる"ことほど大切なことはないと思います。人は一人では生きられない、孤立しては生きられないからです。とりわけ社会的弱者と言われる人は他者の支えがないと生きられません。弱い立場にある人も人として生きられる社会、人間の優しさが大事にされる社会、これを実現するには、個人的につながるだけでなく、市民活動のグループや諸々の団体などがネットワークを広げて、個人と組織の両方のレベルでいろんなかたちでつながりをつくっていくことが大切です。  そこから、孤独にならずに生きる道が見えてきますし、社会的発言の機会が広がり、大きなエネルギーにつながります。そして、弱者の支援対策を国の制度にしていくべきです。

(・・・続きは本誌にてお読みいただけます。)


2016年12月の活動記録・講師派遣


連載 障害のある人とスポーツ

第6回 地域における障害者スポーツの現状と課題                        藤田 紀昭        


連載 差別と抑圧の歴史 いわれなき偏見との闘い

第11回 ハンセン病対策が差別を定着させた                        志村  康        


障害者自立支援法訴訟の基本合意の完全実現をめざす会ニュース52 通算71号

第8回定期協議開催!―これからも大切な場としていく―
「我が事・丸ごと」政策にも言及 12.12厚労省会議室

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JD連続講座2016 社会保障改革の行方と障害者施策―介護保険見直しの影響と課題―


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