15年7月28日更新
VOL.35-4 通巻NO.421
NPO法人日本障害者協議会 副代表 薗部 英夫
見るたびに感動する映画のひとつに『カサブランカ』がある。1943年アカデミー賞受賞の戦時下のラブロマンスには、反戦、抵抗運動(レジスタンス)が背景にあった。監督マイケル・カーティスはユダヤ系ハンガリー人。主演は「映画スターベスト1」のハンフリー・ボガード(リック)と屈指の女優イングリッド・バーグマン(イルザ)。 ときは1941年12月、親ドイツ政権の管理下に置かれたフランス領モロッコのカサブランカ。パリがナチスドイツに陥落する日、理由も告げずに去ったイルザ。彼女はレジスタンスのリーダー・ラズロと結婚していたが、収容所に入れられた夫は脱出を図って射殺されたと聞かされ、その絶望のときに出会ったのがリック。夫が生きていたとの知らせが届いたのがパリ陥落の日だった。主題歌「アズ・タイム・ゴーズ・バイ(時の過ぎゆくままに)」が切なく響く。
さて、主演女優のイングリッド・バーグマンはストックホルム出身だ。スウェーデンは二つの世界大戦でかろうじて中立国を貫いた。長く戦争をしなかった国は、戦後、福祉国家のトップランナーとなる。
一方、デンマークは、1942年、ドイツに2時間で占領される。でもその日のうちに組織されたレジスタンスは、552紙2300万部の地下新聞を発行。1943年9月から11月には、300隻の漁船などで7220人のデンマークに住むユダヤ人をスウェーデンに秘密輸送し、9割以上が避難に成功した。学校、療養所、市民病院は避難所を積極的に提供したという。「なぜユダヤ人を助ける苦労をしょいこんだのですか?」と問われたある女教師は、「それが私の義務だと思ったんです」と答えたそうだ。
レジスタンスに参加し、収容所に投獄された青年の一人に若きバンク‐ミケルセンがいた。彼は、戦後、知的障害者親の会のスタッフとして運動をともにし、後に社会大臣となり、ノーマライゼーション(障害のある人たちに、障害のない人と同じ生活条件をつくりだすこと。-すべての人に自由と独立を-)を提唱した。世界の障害者の権利保障運動に大きな影響を及ぼし、障害者権利条約にもつながっている思想だ。
さて、フィンランドは大きく異なる。スターリンのソ連の侵攻にスウェーデンに助力を求めるも、中立主義をとられ、「敵の敵は友」とナチスドイツと手を結ぶ。そして、ドイツは敗北しフィンランドも敗戦国となり、戦後多額の賠償金を支払いつづけた。福祉国家へのスタートは1952年のヘルシンキ・オリンピックの後のことで「(スウェーデン、デンマークに)10年は遅れている」といわれる所以だ。
「いのちをかける仕事なのか?」(リック)、「呼吸と同じで、戦いをやめたら世界が死ぬ」(ラズロ)。自由と民主主義、平和を求め70年前の先達たちは闘った。
いま「戦争法案」が国会で重大な局面をむかえている。福祉充実と戦争への道は真逆だが表裏一体でもある。戦争へすすめば福祉や人権は切り捨てられる。福祉が守られれば戦争は遠のく。
庵 悟
第5回 災害と福祉のまちづくり 狩野 徹
山崎 光弘
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第3回 パラレポの効果 ドイツの場合 佐藤 久夫
髙谷 清
内山 裕子
星野 圭
戦争と障害
花田 春兆
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