16年2月23日更新
VOL.35-11 通巻NO.428
NPO法人日本障害者協議会理事/筋痛性脳脊髄炎の会理事長 篠原 三恵子
日本で慢性疲労症候群と呼ばれている「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)」患者の3割が寝たきりに近いことが、平成26年度の厚労省の実態調査によって明らかになりました。これほど深刻な病気であるにも関わらず、患者たちは詐病扱いされ、誤解や偏見に苦しんできました。その上、2011年の医学誌「ランセット」に、ME/CFSの治療法として認知行動療法と段階的運動療法とが有効であるとする論文が掲載され、世界中で大論争が巻き起こりました。その後、この論文によって、世界中でME/CFSは考え方を変えれば治るかのような誤解が広がり、器質的疾患としての認知を妨げてきました。実際、日本でも認知行動療法と段階的運動療法が有効とする精神科の専門書が出回っています。
この研究結果について、長い間、強い懸念が表明されてきましたが、昨年10月に米国コロンビア大学のブログに、この論文の重大な欠陥についての詳細な報告記事が掲載されました。治験開始後にデータの解析方法が変更され、この病気以外の患者も含んでしまう診断基準によって参加者が選ばれており、調査の主要研究者が障害保険会社と経済的関係や顧問関係を持っていたこと等が明らかにされたのです。英国・米国の研究者や患者の権利擁護団体は、データの再解析や論文の撤回を求めています。
そんな中、10月29日に米国の医学研究拠点である国立衛生研究所(NIH)は、ME/CFSの研究を前進させるために、国立神経疾患・脳卒中研究所が主導して研究を行うと発表しました。WHO(世界保健機関)の国際疾病分類において神経系疾患と分類されているこの病気の研究の中心が、神経疾患のセクションに移されたことは画期的で、当然、日本においても神経系疾患として研究が促進されるべきです。考え方を変えても、神経難病が治るはずがないからです。
いずれランセットの論文は撤回されるでしょう。病名も研究が進み、病態解明が進めば変更されるでしょう。最近、日本でも国立精神・神経医療研究センター神経研究所で、本格的な研究が開始されましたし、患者会では、神経内科の研究の促進を目的として、この秋に、学術的国際シンポジウムを開催する予定です。患者たちはたとえどんなに障害が重くとも、仕事に復帰したい、何らかの社会貢献をしたいと願っています。4月には障害者差別解消法が施行されようとしていますが、こうして一つひとつ障壁を取り除き、私達も胸を張って他の人と平等に社会参加できるよう、働きかけていくつもりです。
石渡 和実
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南雲 明彦
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