14年9月12日更新
VOL.34-6 通巻NO.411
NPO法人日本障害者協議会 理事 中村 敏彦
障害者の労働について考えてみたい。
現在、障害のある人たちの労働の場は、雇用契約が成立していることを前提にすれば、一般
企業等で雇用されるか、障害者総合支援法に基づく就労継続支援A型事業にしか存在しない。
同様に障害者総合支援法による就労継続支援B型事業で働いている障害者は、労働ではなく
"就労" と表現され、労働者としての雇用契約は締結されていない。
労働基準法第9条は、その適用対象である「労働者」を「・・・使用される者で、賃金を支払われる
者をいう」と規定している。これによれば、「労働者」であるか否か、すなわち「労働者性」の有無は
「使用される=指揮監督下の労働」という労務提供の形態及び「賃金支払」という報酬の労務に
対する対償性、すなわち報酬が提供された労務に対するものであるかどうかということによって
判断されることとなる。
もう一度、就労継続支援B型事業の制度を振り返ってみてみよう。「一般企業への就職が困難な
障害者に就労機会を提供するとともに、生産活動を通じて、その知識と能力の向上に必要な訓練
などの障害福祉サービスを供与することを目的としている。」とあり、就労と訓練が混在している
ことが分かる。実態はというと職業訓練や指導を受けながらも、一定の職業能力が付いた場合、
その現場においては生産性が期待され、その生産によって社会貢献にも繋がり、工賃が支払わ
れている。しかし、この事業では労働者ではないため、労基法で定める最低賃金の適用は求め
られておらず、全国平均月額工賃は14,000円を少し超える程度でしかない。報酬の前提が労働
対価であればやむを得ないが、労働者としては否定することはできない。間違いなく労働者である。
事業者の経営能力や支援者の努力不足は厳しく評価されても限界があるに違いない。教育や訓練、
環境等が整い、地域社会で活躍する機会が増えていることは望ましいし、さらに推進していくべきで
ある。しかし、それが困難な職業的重度障害者は、生涯サービスの受給者として訓練を受け続け、
最低賃金の所得保障もなく労働者にはなり得ない。この現実を解決するには、これまでにない労働
と福祉の融合した制度設計が有効である。生産性のマイナス要因が明らかに障害を理由とした場合、
福祉分野の労働の場を障害者権利条約はどのようにジャッジするだろう。
藤井 克徳
認知症と介護保険
~認知症の早期発見と市町村事業への移行は整合性がありません!~
勝田 登志子
第2回 親が子から自律して自己の人生を全うできる社会を夢みて
中内 福成
連載「世界の当たり前を知る」をはじめるにあたって
増田 一世
「障害者権利条約」という音楽を奏でる一人として
宮地 暁子
航海に携えたい一冊
山崎 光弘
暮らしや働くことの障壁になっている「介護保険優先原則」
大きい地域間格差、「基本合意」反故など、問題は多い
小野 浩
澤田 優美子
日本福祉のまちづくり学会
敬老日
花田 春兆
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