障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

14年7月22日更新

2014年「すべての人の社会」7月号


2013年「すべての人の社会」7月号

VOL.34-4  通巻NO.409

病院で暮らしたいですか

 NPO法人日本障害者協議会 理事 太田 修平 



 「あなたは病院で暮らしたいか」と聞かれたら、「いや、住みたくはない」と、私を含めて多くの
人は答えるであろう。昨年急浮上した「精神科病棟転換型居住系施設」は、病院を"住まい" と
して位置づけてしまうものだ。看板のすげ替えに他ならない。病院ではない住宅、例えばグループ
ホームなど、名前を変えても、少し改修工事を行なったとしても、病院の雰囲気は完全に消し去る
ことはできないだろうし、なんとなくアルコール消毒の香りは断ち切れないだろう。そしてそこの職員
が、病院の関係者だとしたら、住んでいる人にとっては病院の延長線のものであることは明白だ。

 私は身体障害者の生活施設で約10年暮らしていたが、今は施設に戻りたいとは全然思わない。
当時はあまり思わなかったが、振り返ってみると病院くさいところであった。決してレベルが低い施設
ではない。自由な行動も、ある程度のプライバシーも保障されていた。だけど、そこは一般の住宅とは
程遠い、管理された収容施設というのが、本質であった。

 今年、日本は障害者権利条約の締約国となったが、月日が経たないうちに病棟転換型施設の話が
出てくることには違和感がある。

 去る6月26日、「生活するのは普通の場所がいいSTOP!精神科病棟転換型居住系施設!!6.26
緊急集会」には、3200名以上の人たちが、北は北海道から南は沖縄まで全国各地から日比谷に集まり、
これまでにない歴史的な成果をあげた集会となった。政府・厚労省が出してくるこの政策が、誰が見ても
おかしいからである。準備期間はたったの3週間であった。関係者の熱意と連携に心から敬意を表したい。
この集会に当事者のみならず、多くの家族や、医療関係者たちが参加をしてくれた意義は大きい。この
ことを検討してきた厚労省の検討会の議論も、「病棟転換施設はリスクが高い」とする流れに変わって
きていたかに見えたが、結局、報告書には残念ながら導入の方向性が盛り込まれてしまった。

 病棟転換居住施設という極めて奇妙で欺瞞的な政策を白紙撤回させ、本当に障害者が地域社会で
豊かに暮らしていけるような、住宅、仕事、相談、介助などの社会的基盤の整備を急がなければならない。
それが「骨格提言」の実現であり、自立支援法訴訟の基本合意の完全実現に通じていくことでもある。

 日本は、権利条約に則り、一人ひとりの思いを大切にし、「脱病院」「脱施設」の具体的計画を立てる
必要がある。安心・安全も大事だが、その前に、人としてどう豊かに暮らしていけるかを考えたいものだ。
運動の、「ひろがり」をどのようにつくっていくか、それは当事者・関係者の議論の場を増やし、さまざまな
立場の"痛み" をどれほど共有できるか、である。

2014年6月の活動記録


視点 批准国日本のこれから公開中

         藤井 克徳           



What's New!

国連の条約締結国会議に日本が初参加!
障害者権利条約第7回締約国会議での日本の発言骨子(2014年6月10日)


提言

 強行された「医療・介護総合法案」  その概要と障害者・患者への影響は・・・
            白沢 仁           



生活保護引き下げにNO!

あたりまえの願いを守るために
~生活保護費引下げに対する愛知の審査請求運動~
            大野 健志           


いのちの最終ラインを守ろう
~生活保護基準切下げに対する埼玉の取り組み~
             永瀬 恵美子          




障害者支援の現場から… 第8回

法廷で「生を制限する制度は、憲法25条違反」だと 正面から告発していきたい
                舟橋 一男          

連載・東京都・障害のある子どもの希望者全員就学40周年に思う

第4回(最終回) 東京の希望者全員就学と障害児の教育権保障の意義
               茂木 俊彦          



トピックス・インフォメーション


第16回私の生き方


                          臼井 崇起         


連載 JD加盟団体訪問 いってみよう、聞いてみよう 63

日本理学療法士協会



STOP!病棟転換

新たな局面を迎える「病棟転換型居住系施設問題」

長谷川 利夫         




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