14年4月18日更新
VOL.34-1 通巻NO.406
NPO法人日本障害者協議会 副代表 石渡 和実
2014年1月20日、日本国もようやく障害者権利条約を批准した。2006年12月13日の採択から長い
道のりであったが、批准までに時間をかけた意義は大きかったと思う。
JD連続講座の最後(3月24日)に、藤井克徳氏が登場した。「権利条約の批准をどう生かす!
私たちに問われること~全体像の把握と条約の本質を考える、ポスト批准の課題を探る~」という
テーマで、150人もの参加者が熱心に聞き入った。タイタニック号の写真に始まり、モーツアルトの
トルコ行進曲が流れ、藤井氏が詠んだ短歌や詩の朗読が随所に盛り込まれた、格調高い、芸術性
にあふれた講演であった。
藤井氏らしく、最後は「運動論」で締め括った。障害の無い市民との格差解消をめざす「ゼロ地点
戦略」、また、障害種別間の格差解消という「横並び戦略」、この2点に整理して新たな方向性を
示した。そして、改めて納得させられた藤井氏の言葉があった。批准に至るまでの検討の成果
として、障害者基本法の改正、障害者差別解消法成立などの法整備もあるが、一番の成果は
「障がい者制度改革推進会議の運営」と明言された。当事者主体で、これほど果敢に、意欲的
に取り組まれた審議会は日本にはなかった。障害者が市民参画による行政のあり方を大きく転
換し、新しい方向を切り開いた、これこそが大きい、ということだと理解した。
私も全く同感である。推進会議の意義は「多様性の尊重」という条約の理念が実現された、とい
うことが大きいと考えている。さまざまな障害を有する構成員が一堂で議論するにあたり、知的障害
の方も含めて確実な情報保障がめざされていた。「誰一人、ないがしろにはしないぞ!」という気迫
があふれた場であった。これは条約成立まで、ニューヨークの国連本部で行われていた「合理的配慮」
の提供が、日本にも持ち込まれたのだと考える。
こうした方式を審議会の運営だけでなく、日本社会のあらゆる場で実現させなくてはならない。障害
に応じた情報保障が確実になされ、どのような障害があっても他者とつながっていけること、それは
社会参加の基盤である。全日本ろうあ連盟が事務局となり、JDも協力した厚生労働省の補助事業、
「意思疎通支援実態調査」の報告書もまとまりつつある。こうした成果を生かし、障害者総合支援法
見直しの検討課題である「意思疎通支援のあり方」へも確実な提言をしていかなくてはならない。
「2つの戦略」をしっかりと胸に刻み、障害者運動の展開を軸にして、「多様性の尊重」、あらゆる
人を包み込むインクルージョンの理念が実現される社会をめざしたい。
日本での権利条約元年におもう
田中 徹二
JDの意見表明
JD連続講座に300人!
第9回最終回 医療完結政策に終止符を-4つの「2つ」でみえてくるもの-
藤井 克徳
第8回 精神の障害と更生
赤平 守
労働施策と福祉施策の板挟みから生まれる差別感
井上 忠幸
多様な働き方ができる社会へ
渡邉 昌浩
第1回 障害があるからこそ、教育が必要です!
福井 典子
若松 明彦
全国肢体不自由児施設運営協議会
電波塔
花田 春兆
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