13年4月25日更新
VOL.33-1 通巻NO.394
NPO法人日本障害者協議会理事 岩崎 晋也
3月末に「小野市福祉給付制度適正化条例」が成立した。この条例は、生活保護や児童扶養手当の
受給者がパチンコなどのギャンブルで常習的に浪費することを防ぐことを目的としている。それを目的
として条例化するだけでも話題となったが、何よりも波紋を呼んだのは、そうした受給者を見つけた市
民に通報の責務を負わせた点である。
この条例は、低所得者への人権侵害に関わる問題点が、兵庫県弁護士会、兵庫県保険医協会を
はじめ、多くの関係団体から指摘され、反対されていた。にもかかわらず、小野市に寄せられた全国
からの意見の6割以上が条例に賛成であり、本会議でもほとんど反対する議員がないまま可決した。
なぜなのだろうか。
一つには、一般的に、ギャンブルに依存している状態は、依存から脱却するために支援を必要として
いる状態としてではなく、自己責任で解決すべきで倫理的に非難される状態と理解されていることがあ
げられるであろう。しかし、これだけが問題であれば、ギャンブル依存に対する理解を深めれば解決する
であろう。
だが問題はそれだけではないだろう。近年の生活保護に対するバッシングの背景にあるのは、日本
社会そのものの閉塞感ではないだろうか。特に、労働市場や雇用環境において将来展望が見えない
ことによる生活不安の高まりは、他者への不寛容を増長させる。「生活が苦しいわれわれの税金で暮
らしている生活保護受給者がパチンコをするなどもってのほか」という排除の言説が受けいれやすくな
っているのだ。
だがこのように「異質な他者」を排除し、保守主義的な価値に退行することでは、逆に閉塞感が高まる
のではないか。生活の安心感は、経済市場の活性化だけがもたらすものではない。むしろ生活が不安定
になった時に、必要な支援が誰かの恩恵ではなく普遍的な権利として受けられる政策こそが、安心感を
つくりだすのだ。とすれば、今の政治に求められているのは「異質な他者」を排除する言説ではなく、さま
ざまな他者を「われわれ 」の一員として包摂する社会を展望する言説であろう。
排除の言説は、政治家の一時の人気取りには有効でも、長期的には社会そのものを蝕むことを、政治
家もわれわれも忘れてはならない。
藤井 克徳
差別禁止法制化にむけて
─縁遠い法から、わたしに必要な法へ
大野 更紗
国民生活全体の引き下げにつながる生活保護基準の引き下げ
宇都宮 健児
声なき声に耳を傾け、支援活動の継続を!
─JDF東日本大震災被災障害者総合支援本部 第三次報告会─
小出 真一郎
福祉的就労とディーセントワーク
鈴木 清覚
仕事を選ぶ、働き方を自分で決める
きょうされん
林 優子
JD加盟団体訪問 いってみよう、聞いてみよう 48
全国手話通訳問題研究会
国際セミナー2013―フランスの障害者就労政策を学ぶ―
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割り込みトーク
花田 春兆
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