13年2月25日更新
VOL.32-11 通巻NO.392
NPO法人日本障害者協議会理事 石渡 和実
昨年、10月1日から障害者虐待防止法が施行された。議員立法での成立などに冷たい目
を向けていた私だが、「法律が動き出すことはすごい!」と再認識している。行政が関係者
に集中的に研修を実施し、虐待通報も一気に増加し、意識が大きく変わったことを実感する。
通報の中身には、「まだ、こんなことが起こっているのか」と落胆も多いが、虐待が表面化す
ることには大きな意味がある。
教育界では、いじめや体罰がようやく納得できる議論になってきたと言えよう。それも大津
市や大阪市での、若い命の犠牲が前提となってである。なぜ、ここまで事実を隠ぺいしよう
とするのか、加害者を護ろうとするのか。学校や教育委員会という組織の体質にうんざりさ
せられる。しかし、わが福祉業界も、強者と弱者という上下関係がある限り本質的には変わ
りない。この体質をどう改めていったらよいのであろうか。
障害者虐待防止法は、確実に高齢者や児童より「進化」したと感ずる。注目されるのが、
虐待の捉え方である。殴る・叩くは言うまでもなく、無視する、落ち着かせるために部屋に閉
じ込めるなど、支援者の力量不足から本人の尊厳を傷つけるような関わりは、明らかに虐待
との認識が広がっている。「人格的虐待」などの言葉も、虐待を総称する表現として広まりつ
つあり、障害者(児)の視点に立つ支援の再検討が求められている。
しかし、施設からの通報も増えるなかで、加害者も、被害を受けた障害者も、告発した職員
も、三者ともが施設を追われるといった現実も耳にする。それゆえに、「なるべく無難に」と、
職員が萎縮する方向に向かいがちだという。高齢者虐待防止法の時も同じことが指摘され、
このときイソップ童話の「北風と太陽」が話題になった。支援者の都合を押し付けるのではな
く、本人の力を引き出し、「自然に利用者の笑顔が生まれる、質の高い支援へ!」という話で
ある。まさに、パターナリズムではなくエンパワメントである。
だからこそ、障害者差別禁止法の成立に期待したい。昨年9月の『部会意見』では、「共生
社会」の実現という観点からも相手方を一方的に非難する趣旨ではない、多様性や「差異」
の尊重は社会に活力をもたらす、といった理念が謳われた。障害分野で、「人権」というテー
マはさらに「進化」したのである。何とか法制定を実現し、「動き出すとすごい! 意識が変わ
るじゃないか!」を実感したい。
藤井 克徳
アジア太平洋障害者の10年(2003-2012)に関する閣僚宣言、
およびアジア太平洋障害者の「権利を実現する」インチョン戦略(仮訳)
全国重症心身障害児(者)を守る会
「最も弱いものをひとりももれなく守る」
宇佐美 岩夫
全国手話通訳問題研究会
「成長と仲間作りを基礎とした活動39年、粘り強い取り組みを継続」
石川 芳郎
日本言語聴覚士協会
「言語聴覚士の果たすべき役割と協会の取り組み」
深浦 順一
全国社会福祉協議会
「障害関係団体との連携で障害者制度改革をすすめる」
古田 清美
障害者の就労をめぐる国際動向
松井 亮輔
平等と優先順位
八藤後 猛難病をもつ人々と障害者制度改革 PartⅡ 第8回
たとえば花のように
─岩手県難病連の活動から見えてくる課題 矢羽々 京子
デンマークの「改革」の具体的な内容─「民間委託」と「適正化」─
磯野 博
JD加盟団体訪問 いってみよう、聞いてみよう 46
日本手話通訳士協会
要援護者の安全避難先の協定─和歌山県─
対象拡大は2014年度以降に
難病の医療費助成
障害者権利条約の批准否決
─米上院─
各地のうごき ─九州─
そのもう一つ前
花田 春兆
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