障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

12年3月16日更新

2012年「すべての人の社会」3月号


2012年「すべての人の社会」3月号

VOL.31-12 通巻NO.381

目的と手段の逆転

日本障害者協議会理事 赤平 守                 



 この原稿を書いている今は、2月20日ですが、この巻頭言が載る「すべての人の社会」が発刊
される頃は、ちょうど3・11東日本大震災から1年が過ぎ去ろうとしているころではないかと思い
ます。1年前のあの日、私は川崎市内で、ある研修に参加していました。講演の最中、第一の揺
れが起こり、さらにほとんど間髪を入れず震度5クラスの揺れが何度も起こり、まさにただ事では
ない状況に、研修は即刻中止。それぞれが帰るべき場所を求めて三々五々散っていきました。
私は川崎から東京へ国道246を歩いて帰ることになりましたが、その道すがら、出会う人々の
"黙々"と歩く姿が強く印象に残っています。

 一夜明け、2日目を迎える頃には、その報道から、被害の甚大さが私たちの常識の範囲をはる
かに超えたものであるという事実に直面するわけですが、海外の報道機関が驚き伝えたことは、
被害の大きさもさることながら、このような未曾有の状況にありながらも、日本人が極めて冷静に
判断し助け合っている姿でした。あの時、多くの人々は「人間は決して謂れ無きことで一方的に
不幸になることがあってはならない」と直感的に感じたのかもしれません。そして、それこそは社会
福祉の原点の考え方ではないかと私は思うのです。そのために、一刻も早い震災復興という大き
な「目的」のために消費税率アップや税制改革等の「手段」が真に必要ならば甘んじて、受け入れ
ましょう。

 しかし、いつしかこの「手段」と「目的」は逆転していませんか?あの震災の日、国民の多くはまさ
に「すべての人の社会」を守らなければならないという目的に一丸となっていたはずです。そのよう
な人たちを裏切ってはなりません。もし、変革が必要なのだとしても、その変革についていけない
多くの弱者や生き難さを生み出すものだとしたら、まさに「目的」は「手段」によって歪められてしまっ
たことになるのです。国はそのような人々の思いを裏切ってはなりません。最後に昨年に引き続き
山本周五郎の『赤ひげ診療譚』の主人公、赤ひげこと新にい出で 去きょ定じょうの言葉を引用させ
ていただき、締めくくりとします。

 「見た眼に効果のあらわれることより、徒労とみられることを重ねていくところに、人間の希望が実
るのではないか。おれは徒労とみえることに自分をかける」と…。

2月の活動記録

視点 骨格提言のこだわりで正道を公開中

         藤井 克徳           


What's New!
障害者総合福祉法案(2月29日民主党政策調査会厚生労働部門会議案)への
日本障害者協議会の見解公開中



障害者自立支援法訴訟の基本合意の完全実現をめざす会ニュース(21)


裁判

無念!安永健太さん事件の警官に無罪判決-核心は民事裁判へ
         古賀 知夫           



オピニオン

合理的配慮を提案しているか~中教審WG報告~
         品川 文雄           



連載

難病をもつ人々と障害者制度改革 第10回 各論13
すべての難病の子どもに、公正な社会を          土屋 正一           



難病をもつ人々と障害者制度改革 第10回 各論14
小児リウマチ患者がかかえている課題          石垣 成子           



連載

障害のある子どもたちのいま 第12回(最終回)
輝け!子ども時代―子どもたちに未来を託すために        茂木 俊彦          



国際交流

第2次「アジア太平洋障害者の十年」最終年と今後        松井 亮輔          



連 載

JD加盟団体訪問 いってみよう、聞いてみよう 36
日本肢体不自由児協会


エッセイ パラボラアンテナ〔112〕 

結ぶ

    花田 春兆          


 
フォーラム 情報コミュニケーション・アクセシビリティとインクルーシブな社会・開発

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