障害の種別や立場、考えの違いを乗りこえ、障害のある人々の社会における「完全参加と平等」や「ノーマライゼーション」の理念を具体的に実現することを目的として、各種事業を全国的に展開しています。

13年1月29日更新

2012年度事業計画

はじめに


 過去1年間、そして向こう1年間を展望するとき、引き続き重くのしかかるのが東日本大震災による影響である。とくに気になるのが被災障害者の実態であるが、政府による調査や検証は未だ明らかにされていない。そんな中にあって、地方自治体や各種報道機関による調査結果の発表が続いているが、それらの数値はいずれも深刻であり衝撃的である。総人口に占める死亡率と障害者手帳所持者の死亡率とを比較すると、それぞれNHKの調査では1.16%と2.08%、宮城県の調査では0.8%と3.5%で、いずれも障害者の死亡率が大きく上回っている(NHKの調査は岩手県、宮城県、福島県の主要被災市町村の平均値)。障害者の死亡率がなぜこうも高いのか、とくに政府においてその背景や原因の徹底究明がなされるべきである。こうした徹底究明は、早晩避けることが難しいとされている新たな大震災を含む甚大な自然災害への備えにもつながることになろう。なお、日本障害者協議会(以下、JD)は日本障害フォーラム(以下、JDF)と一体となりながら主要被災地帯の支援活動や募金活動(支援金)を行なってきた。支援活動については、本年度も岩手県と福島県で継続することになる。

 社会や政治全般との関係で注目すべきは、「税と社会保障の一体改革」の行方である。障害分野への影響は必至であり、とくに障害者の生活がこれ以上圧迫されることがあってはならないという観点からその動向を注視していきたい。なお、障害者政策と財源確保の課題については、増税策の以前に、GDPに占める障害関連予算率のOECD平均並みの具体化を引き続き主張していきたい。

 さて、障害分野ならびにJDにとってのこの1年間は、非常に重要な節目を迎えることになる。主なものとして次の4点をあげる。

 第1点目は、障がい者制度改革推進会議(以下、推進会議)の解散に伴って障害者政策委員会が設置されることである。推進会議の成果をいかに踏襲するか、新たに備わった障害者基本計画の監視機能や行政府に対する勧告権限などがどこまで実質化するか、注目することに加えて積極的な関与が必要である。新設の障害者政策委員会の当面の課題は、推進会議から引き継がれた「障害者差別禁止法」(仮称、2013年の通常国会に法案上程予定)の制定に向けての骨格提言作成と新障害者基本計画(2013年度から2022年度までの総合的な長期政策)の策定があげられる。いずれも、この国の障害者政策の近未来を占うものである。

 第2点目は、「障害者の日常生活ならびに社会生活を支援するための総合的な法律」(以下、障害者総合支援法)に関連した動きである。障害者自立支援法の廃止とこれに代わる障害者総合福祉法の制定を求めてきたJDの立場からすれば、障害者総合支援法という形での決着は不本意と言わざるを得ない。ただし、骨格提言で唱えられた主要部分のいくつかは「3年間を目途に検討」とされ、これについては少しでも骨格提言に近づくよう具体的な提言や働きかけを強めていきたい。また、「ポスト自立支援法問題」の全体的な総括については、自立支援法違憲訴訟団などの関係団体とも連携しながら、中長期的な展望づくりを含めて深める必要がある。

 第3点目は、「第二次アジア太平洋障害者の十年」(2003年~2012年)が最終年を迎え、同時に2013年を起点とする向こう十年間の新たな「アジア太平洋障害者の十年」への備えを具体化することである。もともと、「アジア太平洋障害者の十年」(1993年~2002年)の提唱者の中心はJDであり(JDの前身である国際障害者年日本推進協議会が関係団体に呼びかけ、さらに日本政府を動かしていった)、実際にもアジア太平洋域内での障害分野の交流は功を奏したと言えよう。しかし、「第二次」に入った以降は低調な状態が続いている。来年から始まるいわゆる「第三期」については巻き返しが求められ、JDとしても貢献していきたい。

 第4点目は、JDの組織が改められたことである。昨年度末に、特定非営利活動法人(NPO法人)の認証を受け(2012年3月19日)、本年度早々の4月2日に登記を終えた。JDにとっての法人化は、あくまでも目的を果たすための手段であり、すなわち運動体、交流体として発展していくための新たな契機となってこそ、その意味を増すことになろう。同時に、これまでに増して社会的な役割や責任が問われることになり、外形的な整備に留まらず、事業や活動の面でも、もう一段の質的な発展を遂げていきたい。

 その他の重点事項としては、引き続きJDFを軸とした障害関係団体との連携に力を注ぐことである。前述した障害者差別禁止法や新障害者基本計画を一定の水準で実現するには、障害団体によるまとまったエネルギーの発揮が不可欠となる。その点で、障害当事者団体で構成しているJDFの存在と役割は重要であり、そのJDFの強化に向けてJDとしても積極的に支えていきたい。

 最後に、新生が成ったJDの組織面ならびに財政面の課題について一言触れておく。

 JDの役割に比して、その財政基盤は極めて脆弱と言わざるを得ない。とは言え特効薬はなく、組織面の拡大を確実に図ることであり、わけても前年度から力を入れている賛助会員の飛躍的な拡大を中心に活路を見い出していきたい。正会員ならびに協議員の特段の協力を期待したい。  

    

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