昨年2月、6政党(自由民主党、民主党、公明党、日本共産党、社会民主党、自由党)に対し、障害者政策に関する13項目の質問を投げかけ、回答内容をJDジャーナル(2000年4月号)やホームページに掲載するとともに、正会員や関係者の方々に回答データを提供することで、政治と障害者政策の動向を啓発してきました。
それから1年が経過し、4月末には小泉内閣が発足、この夏には参議院選挙が予定されていることなどから、あらためて次の7項目の質問をお送りし、各政党の考えをうかがうことにいたしました。
1.ノーマライゼーションに基づく「新・障害者プラン」(仮称)の策定について
2.障害者(身体障害や知的障害、精神障害など)の「介護保障」について
3.IT(情報技術)活用における人的支援体制について
4.「障害者差別禁止法」の制定について
5.「所得保障制度」の確立及び「無年金障害者」問題について
6.「扶養の社会化」(民法の「扶養義務規程(第877条〜881条)」の見直し)について
7.総合的な「障害者福祉法」(仮称)を制定することについて
6月14日(木)、各政党からの回答が揃いましたので、まずは、ホームページで公開することにいたしました。
ホームページをご覧になられた皆さまにおきましては、回答内容にしっかり目をとおしていただき、また前回の回答内容とも比較いただきながら、今後の障害者政策との関係に注目していただきたく存じます。
また、できるだけ多くの方にこの結果をお伝えいただきたく、あわせてお願いいたします!(掲載内容を要約して活用される際には、必ず「文責明記」でお願いいたします)
(依頼日)5月25日(金)
(締切日)6月13日(水)
(回答日)6月 4日(月):民主党、社会民主党
11日(月):自由民主党
12日(火):日本共産党、保守党
13日(水):公明党
14日(木):自由党
(注1)掲載順番は、議席数(衆参両院)の多い順にしました。
(注2)自由民主党…自民、民主党…民主、公明党…公明、日本共産党…共産、社会民主党…社民、自由党…自由、保守党…保守
(注3)掲載内容の表記については、各政党からの回答を原文で掲載しているため、一部バラツキがあります。
<自民>障害者があらゆる分野の活動に参加できるよう、リハビリテーション、生活支援、雇用の促進などの保健福祉施策の充実を図るうえで必要と考えます。
<民主>民主党は、措置制度から利用契約型への福祉サービスの流れや、障害者の実態構造の変化等を踏まえ、ただちに「新・障害者プラン」を策定すべきだと考えます。その際、@安心できるサービスの質と量を確保すること、A難病など制度の隙間で苦しむ人が出ない福祉サービスのしくみを作ること、B遅れの目立つ精神障害者の社会復帰施設を緊急整備すること、C医療と福祉サービスの連携を図ること、などを重視して策定すべきと考えます。
<公明>1996年度から2002年度までを期間とする障害者プランの目標達成を図るとともに、ノーマライゼーション社会の創造に向け、引き続き新たなプランの策定に向けて検討作業を早急に進めていきます。まず、自立と社会参加に向けてのニーズの適切な評価、生活実態の把握という視点に基づく実態調査を進めます。
また新プランの策定にあたっては、単に障害者福祉サービスの目標の設定に留まらず、地域における自立と社会参加の保障という視点から、バリアフリーの目標や自立した生活の場の確保のためのケア付き共同住宅の整備など、多面的かつニーズをふまえた目標の設定を検討していきます。
<共産>「新・障害者プラン」(仮称)の策定に全面的に賛成です。「旧・障害者プラン」は、もともと量も質も、障害者の要求と実態にてらしてきわめて不十分なものです。その計画も、通所施設などを中心に達成が危ぶまれているのが現状です。
「新・障害者プラン」の策定にあたっては、国会でこれまでの7ヵ年計画の検証をおこなうとともに、審議会等に当事者が参加する体制を保障し、障害者・家族の声を十分に反映した計画にすることが大前提です。そのうえで、@すべての関係省庁において、施策の内容の充実をはかり、新たな数値目標を定めるとともに、推進体制と財源の裏づけを明確にすること、A政府は、すべての自治体が、新たな数値目標と年次計画を明らかにした計画を策定できるよう、専門職員の養成・確保対策、財源保障等で、格段の援助と指導を強化することが必要です。
21世紀を、障害者の「全面参加と平等」、ノーマライゼーションを真に実現する時代にしなければなりません。私たちは、その目標にふさわしい内容にするために、みなさんと力をあわせて奮闘します。
<社民>社民党は、現行「障害者プラン」を早期に完全達成し、引き続き、目標を大幅に引き上げた「新・障害者プラン」を策定すべきと、従来から主張しています。「新・障害者プラン」の基本的な方向を、施設・病院から地域生活支援に転換していくことが必要です。
ところが、自治体レベルで障害者プランを具体的に推進していく「市町村障害者計画」は、策定率が全市町村の3分の2程度で、依然として低調な状況にあります。これは、計画の策定自体が義務化されていないことに深く関係していると考えます。
したがって、数値目標が盛り込まれた障害者計画を当事者参加のもとで策定し、すべての自治体に計画策定を義務づけなければなりません。このため、現在の
「障害者基本法」 を再改定し、自治体レベルでのサービス拡充に向け、当事者参加による自治体の障害者計画策定および報告の義務づけを定めなければなりません。
<自由>障害者のみならず、高齢者・健常者それぞれの個性や経験が生かされ、生き生きとした生活ができる社会を構築するための基盤整備は重要であると考える。多様な職業訓練機会の提供や住宅・道路・交通等、生活関連分野を中心とする生活社会基盤の整備を計画的に推進すべき。
<保守>ノーマライゼーション7カ年戦略については、率直に評価いたします。
それは、第1に、新長期計画の最終年次に合わせ、平成8〜14年度の各年度において実施すべき計画を具体的に明示していること、第2に、数値目標を設定するなど具体的な施策目標を明記していること、第3に、計画が障害者対策本部で策定され、関係省庁の施策を横断的に盛り込んでいること、であります。
また、計画の理念・目標が、地域住民との共生、社会的自立の促進、バリアフリー化の促進というように、ノーマライゼーションの理念を進めるうえで不可欠な視点に立っていることも高く評価いたします。保守党としては、新・障害者プランが計画どおり実施できるよう連立政権の与党の一員として全力を尽くしていきたいと思っております。
<自民>65歳以上の障害者については、介護保険と共通する在宅サービスは介護保険からサービスを受けることとなりましたが、より濃密なサービスを必要とする全身性障害者にはホームヘルプサービスを上乗せして提供するなど、必要に応じて、障害者施策からサービスが提供されます。今後とも、サービス基盤の整備を進めるとともに、障害者が必要とするサービスが適切に提供される体制作りを進めます。
<民主>民主党は、利用者の立場から介護サービスの質・量ともに充実をはかるため、新・障害者プランの策定が必要だと考えます。また、介護保険制度について、現在の高齢者のみならず若年障害者等を含むエイジフリーな制度への見直しを検討します。
<公明>障害者に対する介護サービスについては、障害者プランの着実な推進を図ることはもとより、高齢者に対するサービスと比較して遜色のないレベルを確保すべきです。そのために介護保険の対象として一元的にサービスが受けられるように制度の見直しを進めます。また訪問入浴の実施をはじめとして、障害者に対する在宅サービスにおいても総合的に調整のとれたサービスを提供する体制の整備を進めます。
<共産>介護保険実施から1年余が経ちましたが、低所得者の利用料、保険料の免除・軽減措置を確立することがいよいよ急務です。利用料、保険料の重さから多くの障害者がサービスを受けられないでいることは、在宅サービスの利用者が、政府が当初予測した人数よりも70万人も下回ったことでも明らかです。10月から高齢者の保険料満額徴収が始まれば、いまはかろうじてサービスを利用している人も、次々と脱落せざるをえなくなります。
私たちは、障害者福祉のレベルを後退させないこと、緊急に住民税非課税者の利用料、保険料の免除・軽減措置を国の恒久的な制度として確立することを要求しています。それができないというのであれば、10月からの保険料満額徴収は凍結すべきです。
施設、在宅ともサービス基盤の抜本的拡充が必要です。障害者の状況に対応できるショートステイやデイサービス、グループホームの整備など、公的介護制度の拡充をおこなうという立場です。介護サービスは、精神障害者や難病患者などすべての障害者を対象にして、大幅に拡充すべきであると考えます。
<社民>社民党は、必要とするすべてのニーズを満たす介護を保障すべきと考えます。
昨年から施行された介護保険では、65歳になった障害者(一部40歳以上)が対象となりましたが、従来からのサービス水準を低下させるようなことがあってはなりません。介護保険の見直しにあたっては、@必要なだけの量を確保、A全国どこでも利用可能、B自分で介助者を選択、C全障害種別で利用可能、という介護4原則を基本に、障害者の自立支援を進める必要があります。また見直しの際、介護を必要とするすべての人のニーズを満たすよう、若年障害者も対象にし、低所得者対策の徹底や個人単位化など第2号被保険者の保険料負担・徴収問題も早急に検討を進め、不安を解消する方向で見直しを行わなければなりません。
また、介護保険の導入に伴って、地域での生活支援や移動サービスなどの障害者福祉を後退させてはならず、質量を引き下げないよう各自治体への周知徹底を図るとともに、国の財政支援を拡充することが必要です。あわせて、視覚障害者の自立を支えるため盲導犬の育成を拡充するとともに、肢体障害者の生活介助をするよう訓練された介助犬や聴導犬の法整備を早急に進めることが求められています。
<自由>国民が生き生きと経済・社会活動を行えるような産業形態・税制・雇用システムを確立するとともに、基礎年金、介護、高齢者医療といった基礎的社会保障の財源は消費税を充て、基盤の安定と制度の確立を進めるべき。また、「ノーマライゼーション」の理念に基づき、障害者の経験が生かされる社会の構築を進め、職業訓練機会の提供や社会復帰施設の拡充などを図っていくべき。
<保守>障害者に対する介護サービスについては、現在、障害者プランに基づき、身体障害者及び知的障害者に対するホームヘルパーの増員等の充実を図っており、平成15年度からは新たな利用契約制度である支援費制度に移行することになっております。また、平成14年度からは、精神障害者に対して市町村を実施主体とするホームヘルプサービスを新たに開始することになっております。
平成12年度からは介護保険制度が施行され、65歳以上(特定疾病による場合は40歳以上)の障害者については、介護保険と共通する在宅サービスを介護保険からサービスを受けることとなりました。特に、きめ細かなサービスを必要とする全身性障害者にはホームヘルプサービスを上乗せして提供するなど、必要に応じて、障害者施設からサービスを提供しています。今後とも障害者に対するサービス基盤の整備を進めるとともに、新たに導入される支援費制度等の円滑な施行を図り、障害者が必要とするサービスが適切に提供される体制作りを進めていきます。
<自民>障害者がITを利用するには、障害の種類・程度に応じた人的支援が必要不可欠であり、現在、全国の各地域において、パソコンボランティア(主に障害者を対象として、インターネットなどを利用するために必要な援助など入門者への支援を目的として設立された団体)などの活動が活発化しています。しかしながら、パソコンボランティアなどの活動は、必要な資源(情報・人材・資金など)の確保や、技術的・専門的な活動が困難であることや、活動そのものが社会参加・社会貢献活動としての意義を持つものの、対外的には十分認知されていないなど、課題も指摘されております。このような活動の支援策として、パソコンボランティア等の全国組織化や、ポータル・サイトの構築、関係団体間の橋渡し人材への資格付与、高齢者・障害者向け講習方法の研究などを検討・推進してまいります。
<民主>障害者も含めてすべての人々が使いやすい情報通信機器を設計する「ユニバーサル・デザイン」の思想を普及させ、情報バリアフリー社会を確立します。そのため、障害を持つ政府等の職員が電子事務機器を利用できることを保障する、政府に納品する機器は身障者に配慮したものに限られる、メーカーは障害者向けの機器を用意する義務を負うこと等を規定した「ITバリアフリー法」を制定し、職場のバリアフリー環境の整備をすすめていきます。
「ITバリアフリー法」は、企業に対しては、指針に定める情報通信機器等の製造等について企業に努力義務を課すこととします。国及び地方公共団体が新規に情報通信機器を導入する際は、指針に適合するものに限るとの義務を課すこととします。
民主党に対して、以下のような意見が寄せられました。「私達聴覚障害者(聴障者)は毎日テレビを見ていても全然話の内容がわかりません。字幕付きの番組は少ないです。特にNHK以外の民放は少ないです。少しテロップがありますが少ないです。毎日ただ画面を眺めているだけで内容がわからず、寂しいです」との内容です。
民主党は、この声に応えていきたいと考えます。現在、総務省が窓口となり、字幕放送の拡充・効率化・コストダウンを推進していますが、米国は、アルファベット26文字なのに、日本は、漢字・仮名混じりと文字数が多く製作に多時間を要すること。また、字幕放送開始時も、米国は1972年、日本は1985年と13年の遅れがあることなどが字幕放送の少ない理由ですが、政府の対応にも問題があると考えます。義務付けを含め、できるだけ早期に「テレビの字幕法案」の制定に務めます。
<公明>心身に障害を持つ人を含め、できるだけ多くの人がそれぞれの意欲と能力に応じて社会参画し、ともに支えあう社会をつくっていく必要があります。そのため、障害者にとっても使いやすいユニバーサル・デザインによる端末機器、補装具、日常用具等の開発を精力的に進めます。
また開発された技術、新たな補助機器が速やかに障害者の日常生活で活用されるように日常生活用具の適切な拡大を進めるとともに、そのような製品の購入にあたっての助成制度を拡充します。
さらにIT機器は就労に結びつく可能性が高く、その日常的な利用のための教育訓練や機器の提供などを進めるとともに、ジョブコーチ制度など就労にあたっての個別サポートを充実し雇用機会の拡大を図ります。
<共産>障害者の情報アクセス権は、基本的人権にかかわるものであり、それを保障するうえでIT(情報技術)の役割はきわめて大きいと考えます。私たちは、こうした立場から、障害者が利用できる情報機器のいっそうの研究開発・普及をはかるとともに、障害者対応ソフト等を備えたパソコン・周辺機器や携帯電話、墨字を読みとり音声で出力する視力障害者用音声合成装置の支給など、日常生活用具の支給品目を拡大すべきであると考えます。
IT推進のために、「もの」だけでなく、「ひと」による支援が不可欠です。障害者が居住する地域で必要な知識、技術を習得でき、継続的な支援が受けられるようにすることが必要であり、そのための専門家の育成、配置が必須の課題です。また、ボランティアや非営利活動などによる人的支援活動への公的助成をすすめることも重要であると考えます。
<社民>社民党は、EYEマークなど情報保障の確立に取り組みます。視覚障害者などの読書権を保障するため、著作物の音訳を制限する著作権法を改正するとともに、著作権者があらかじめ著作権の開放を許可したことを明らかにする「EYEマーク」運動を進めます。また、障害者の情報・コミュニケーションを保障するため、障害者に使いやすい情報機器の開発や導入補助などはもちろんのこと、手話通訳や点字保障の確立をはじめ、ご指摘のような人的支援体制の整備を図り、デジタルデバイド(情報格差)を解消してIT保障を進めます。
<自由>IT技術など新技術の研究開発などを支援していくとともに、障害者の経験や知恵が活かされる社会の構築へ向けて職業訓練機会の提供や社会復帰施設の拡大などを図っていくべき。
<保守>基本的に、IT化が進む中、情報通信を積極的に利用することは、障害者の自立、生活の質の向上につながるものであり、障害者もそうでない人と同様に情報を享受できるようにすることは大変重要な課題であると考えます。現在、障害者が情報通信の利便を享受できる環境づくりのため、@重度の視覚障害者等に対し、パソコンを使う際に必要な周辺機器、ソフト購入の助成を行う「障害者情報バリアフリー化支援事業」、Aパソコンを教えるボランティアの指導者を養成する「障害者パソコンボランティア指導者養成事業」などの対策が講じられております。今後、障害者のパソコン利用の普及促進のため、物的、人的の両面から支援策を充実していきます。
<自民>障害がある方がない方と同じように生活が送れるよう関係方面と検討が必要と考えます。
<民主>議論すべき課題は多いと思いますが、民主党は、障害者差別禁止法(日本版ADA法)策定に向けた検討は必要だと考えます。
<公明>これからの日本社会のめざすべき姿は「共生社会」です。障害をもつ人々もそうでない人々も、同じように教育を受け、仕事をもち、収入を得、家庭生活を営み、自由に移動し、文化・芸術・スポーツなどに参加するなど、すべての社会生活及び社会活動に参加する機会を平等に得られる社会、すなわちすべての人が人間として大事にされ、人権が花開く人道の社会を構築しなければなりません。
そのためにめざす目標及び基本理念、そして国及び地方自治体の責務などを定めた「日本版ADA」ともいうべき「障害をもつ人の権利保障法」(仮称)の制定が必要と考えます。また目標を達成するため、教育、雇用、公共施設、交通アクセス、住宅、情報通信などの各分野における具体的施策を社会的、医学的、心理学的、職業的、技術的見地などを考慮しながら、総合的に進展させていくよう取り組む具体的施策を進めます。
<共産>雇用、住宅、交通など、障害者が日常生活をおくるうえで、さまざまな社会的差別が依然として存在している状況のもとで、欧米諸国のように、障害者差別を禁止する法整備が必要な課題であると考えます。その際、真に実効あるものにするためには、法整備だけでなく、障害者の社会的施策の具体的な充実が両輪となってすすめなければならないと考えます。
<社民>諸外国の立法とは異なり、現在の障害者基本法は、障害者を権利の主体ととらえる法律になっていません。社民党は、障害者の差別撤廃と権利確立を進めるため、この性格を明確にした基本法の改正、あるいは新たな立法を提起しています。
その法律には、@障害者の権利確立を保障する法としての性格を明確にし、具体的な権利と差別禁止規定の明記、A虐待などの権利侵害を障害者が受けたときに、申立や速やかな救済を図るため、国と自治体における人権擁護機関の設置、B各種立法に未だ残る差別的な障害者観に基づく用語の撤廃、また、「援護」や「更生」といった用語を「支援」「自立」など自立を促す用語への変更、C政策決定過程への当事者参加、などを柱にしたものにする必要があると考えます。
<自由>自由党は、性や年齢、障害や財産のあるなしで差別されることがなく、働く場をはじめ、チャンスは誰にも与えられるフェアなルールの下で誰もが生きがいをもてる社会を構築すべきであると考えている。この理念のもとで、社会改革を実現し、「国民が主役の社会」を構築することが重要であると考える。
<保守>障害者差別禁止法については、今のところ考えておりません。むしろ実態面において、障害者も健常者と共に歩み、生活できる社会づくりを進めて行くことがより大切であると考えております。この視点に立ち、第1に、障害のある人も家庭や地域で通常の生活ができるよう、地域生活援助事業・福祉ホームの拡充、公共賃貸住宅の身体機能の低下に配慮した仕様、授産施設・福祉工場の増設、小規模作業所に対する助成の充実などを進めます。第2に、介護保険制度の充実を図り、障害者に対する在宅サービス・施設サービスの充実、難病を有する者に対する訪問介護事業の実施などを進めます。第3に、障害者の社会的自立を促すため、精神障害者生活訓練施設の充実、障害者の社会参加促進事業の充実、法定雇用率達成のための障害種類別雇用対策の推進、道路・駅・建物などのバリアフリー化(障壁の除去)の推進などを進めます。第4に、障害者の文化・スポーツ、レクリェーション活動など自己表現や社会参加を通じた生活の質的向上を図るため、先端技術を活用しつつ、実用的な福祉用具や情報処理機器の開発・普及を進めるなどソフト・ハード面の条件整備を図ります。第5に、子供の頃からの障害者との交流機会の拡大、ボランティア活動を通じた障害者との交流促進、用語・資格制度における欠格条項の扱いの見直しなど、心のバリア(障壁)を取り除く対策を進めます。
<自民>障害年金の給付により、十分な所得を得られない面を補うとともに、特に重度の障害のある方には、障害によって生ずるさらなる負担を軽減するために、特別障害者手当が給付されています。いずれの給付も消費水準の上昇等に見合って引き上げられています。
いわゆる「無年金障害者」の問題については、20歳前障害基礎年金や学生納付特例制度があり、無年金障害者が新たに発生しないように制度の整備を図ってきました。が、現在、制度に加入しなかったために無年金障害者となっている方々に対して年金制度において何らかの給付を行うことについては、社会保障制度の根幹に触れる問題もあり、さらなる検討が必要と考えます。
<民主>民主党は、現在の基礎年金を税方式に移行し、一定年齢以上の誰もが等しく年金を受給できる仕組みをめざします。その仕組みができれば無年金障害者の問題は解決しますが、当面どうするのかが問題です。年金制度の中でどこまで対応するのか、年金以外の施策で何ができるのかを十分に整理する必要があり、民主党は、福祉的措置も含め、実現可能な無理のない制度設計、理念などを詰めていきたいと考えます。国籍条項に係る問題で94年改正時に中国残留帰国者についての特例規定(中国での生活期間を法定免除扱いとする)が設けられたことを踏まえれば、やろうと思えばできる問題だと認識しています。
<公明>自立と平等という視点から、すべての障害者において一定の所得が保障される必要があります。雇用施策における対応とともに、障害者年金制度の拡充や無年金障害者の解消をはかります。
<共産>障害基礎年金は、1級で月額83,775円(2001年度)であり、わが国の劣悪な生活保護基準すら大幅に下回っているのが実態です。この低い年金額も、昨年の年金改悪で、5年ごとに実施してきた「賃金スライド」が凍結され、わずかでも上がる可能性がなくなってしまいました。これでは障害者の自立はますます不可能です。私たちは、まず基礎年金に対する国庫負担を、現行の3分の1からただちに2分の1に引き上げ、「賃金スライド」の凍結など、年金改悪を元に戻すべきだと主張しています。さらに、大銀行・ゼネコン奉仕の税・財政運営をあらため、社会保障を国でも地方でも予算の主役にすることを通じて、障害者が真に自立できる所得保障制度の確立をめざします。
無年金障害者の救済については、私たちは、今回の参議院選挙政策でも、ただちに解決策を講じるべきだとの態度を表明しています。94年の国会決議にもとづいて、政府が早急に解決をはかるよう、ひきつづき全力をつくします。
<社民>社民党は、障害基礎年金を抜本的に拡充するとともに、定住外国人を含めた無年金障害者の救済策を早期に確立して、だれもが「暮らせる」年金を保障します。
全障害者500万人のうち、障害年金受給者は3分の1程度の約200万人弱で、その数は、全年金受給者のわずか5%にしか過ぎません。しかも受給者の約8割が障害基礎年金グループで、月8万円強(2級は6万円強)の年金だけでは、とても生活できないという現状にあります。給付水準を拡充し、その財源として基礎年金の国庫負担を早急に引き上げなければなりません。前回1999年改正で、国庫負担を2分の1に引き上げることが94年の改正法附則に明記されていたにもかかわらず、自公保政権がこれを先送りしました。即刻2分の1に引き上げるとともに、次回改正では税方式(全額国庫負担)へと移行させて、未加入や未納による無年金・低年金を解消すべきと考えます。
<自由>基礎年金・介護・高齢者医療といった基礎的社会保障は福祉目的税化した消費税を充て、基礎的社会保障の基盤を構築すべきであると考える。また、無年金障害者の問題等については、そのあり方について検討中。
<保守>障害者の方に対しては、障害年金の給付により、障害により十分な所得を得られない面を補うとともに、特に重度の障害のある方には、障害によって生ずるさらなる負担を軽減するために、特別障害手当を給付しており、いずれの給付も消費水準の上昇などに見合って引き上げております。さらに、生活保護の仕組みにより最低限度の生活を確保しているところであり、社会で連帯して、障害者の生活の保障を図っております。また、いわゆる無年金障害者の問題については、20歳前障害基礎年金や学生納付特例制度を設けるなど無年金障害者が新たに発生しないよう制度の整備を図ってきたところでありますが、現在、制度に加入しなかったために無年金障害者となっている方々に対して年金制度において何らかの給付を行うことについては、現在の社会保険制度の下では解決が困難な問題であります。保守党は、基礎年金、高齢者医療、介護については、消費税を中心とする税方式に根本的に改めることを主張しているところであり、その中で、障害者の無年金の問題についても解決を図っていきたいと考えております。
<自民>障害者の自立には、周囲の理解に基づく支援体制の整備が不可欠ですが、現行の民法規定を見直す等については、今は検討を考えておりません。
<民主>民法の扶養義務は共助の一つと考えられます。扶養義務は、核家族化など家族形態の多様化や、国民意識の変化等に対応して、そのあり方が問われると思います。
しかし、障害者の自立と生活保障の問題は、家族の扶養に留まらず、社会連帯に基づく社会保険やナショナルミニマムを保障する生活保護などを含めた総合的な検討が必要だと考えます。
<公明>障害者に対する身体機能を補うことを中心とした介護・介助については、家族の支援力にもっぱら頼ったものとなっていますが、身体的・精神的負担の重さからいって、家族の支援はあくまで通常の家庭に見られる家族間の支え合いの範囲にとどまるようにすべきであり、その意味で、民法第877条〜881条に規定されている扶養義務の見直しを検討します。
<共産>憲法の生存権保障の理念からも、家族関係が大きく変化している現実からみても、成人期にある障害者にたいして、兄弟姉妹まで扶養義務を課す民法上の扶養義務規定は、早急に見直しがせまられている課題であると考えます。当面、社会福祉法各法における扶養義務者の範囲を狭く限定するなどの改正をすすめることも重要であると考えます。
<社民>社民党は、扶養義務の撤廃など「保護」政策を転換し、自立支援を図るべきと考えます。
障害基礎年金の給付水準は低いばかりか、所得保障のもう一つの柱である生活保護についても、扶養義務規定があるため、生活保護を必要とする多くの障害者が受けられていない状況にあります。成人障害者への扶養義務は、地域での自立した生活、独立を阻むものであるので、自己決定権の尊重を進める成年後見制度の施行も踏まえて、障害者の社会的・経済的自立にとって障壁となっている扶養義務を撤廃しなければなりません。世帯単位から個人単位へと社会保障制度をはじめとする法制度を全面的に点検し見直して、障害者が独立し、自立した生活を過ごせるよう積極的に支援していくことが求められています。
<自由>自由党は、性や年齢、障害や財産のあるなしで差別されることがなく、働く場をはじめ、チャンスは誰にも与えられるフェアなルールの下で誰もが生きがいをもてる社会を構築すべきであると考えている。
<保守>民法の規定は当然のことであり、質問の意味が良く理解できません。障害者の方々が健常者の方々と同じように生活していくためには、家族の協力のみならず社会全体が支え合うことが必要であることは当然と考えます。
<自民>障害種別により必要となるサービスの内容が異なる点も多いなど検討する項目が多いと思います。いずれにしても、障害者の保健福祉施策については、身体障害、知的障害、精神障害の3つの障害種別に係る施策の総合的な推進を図ることが重要と考えています。
<民主>民主党は、福祉サービスの効率的かつ有効な供給の仕組みを作る方向から、保健・医療・福祉の連携、コーディネートをはかるほか、現在、障害種別で行われているサービスの統合化は必要だと考えます。そういう視点から、障害別福祉各法(身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)の総合化は、大変重要な課題だと認識しております。
<公明>福祉、雇用、教育、住宅施策など分立する障害者施策を統合し、ノーマライゼーション社会を確立するための「障害者総合福祉法」(仮称)を制定し、自立と参加を支援する総合的な障害者福祉施策を推進します。
<共産>憲法と障害者基本法の理念にそって、あらゆる障害に対応できる総合的な「障害者福祉法」(仮称)を制定することは、時代の要請であると考えます。
わが国の障害者福祉関係法は、障害の種別によって縦割りに分断され、きわめて不合理な法体系になっています。しかも、障害者施策も障害の種別によって差別があり、法制度が著しく整合性に欠けていることは大きな問題です。こうした立場から、私たちは毎年、政府に総合的な「障害者福祉法」(仮称)の制定をもとめる申し入れをおこなっているところです。
<社民>社民党は、障害種別や程度にかかわらず、必要なサービスが利用でき、国や自治体の責務としてサービスを提供する「障害者福祉法」を制定すべきと考えます。
社会福祉はこれまでの措置から、2003年には利用契約制度が導入されます。十分なサービス確保、所得保障、雇用確保、さらには苦情解決まで含めた、福祉における公的な責任を明確にする必要があります。総合的な障害者福祉法では、これらの原則を明確にするとともに、サービスのシステムの構築や実施、評価のすべての分野において、障害当事者が主体的に参加することが不可欠です。また、個別法についても、権利確立等を明らかにした障害者基本法の見直しに連動させて、障害者の権利性とニーズに基づいたサービス提供の実施、実施に関する国・自治体の責任を明らかにする改正を行うことが必要です。
<自由>国民が生き生きと社会・経済活動を行うことができる構造改革を推進し、障害者の経験・知恵が生かされる社会を構築する観点から包括的な体系整備のあり方を検討する。
<保守>3障害を統合した保健福祉サービスの総合法制を制定すべきとの意見については、総合法制の内容が必ずしも明確ではないこと、障害種別により必要となるサービスの内容が異なる点も多いことなど検討すべき課題が多い、時間をかけて検討すべき課題であると考えます。障害者の保健福祉施策については、身体障害、知的障害、精神障害の3つの障害種別に係る施策の総合的な推進を図ることが重要であると考えており、デイサービスなど障害種別間の相互利用を推進するとともに、障害種別間で施策やサービスに格差がないよう各制度間の整合性を図るよう努めてまいります。
以上