2003年「JDジャーナル」3月号

VOL.22-12 通巻NO.273
作 家 夢村
作品名 かまくら
解 説  自然の中で育った子ども。都会で育った子ども。どっちも同じ大人になるけど、少しだけ違いがあります。自然の中で育った子どもは「テレビゲームは知っていても、最新のソフトは知らないかも...。都会の子どもは「かまくら」は知っていても、「かまくら」での過ごし方は知らないかも...。
 でも、互いにおとなになって、知り合って、ともだちになって、経験を共有するようになるのでしょう。そうして、違いがなくなります。だってみんな同じ「ひと」なんだから
(東京コロニー・アートビリティ提供)

* Contents *

巻頭言 想い出すままに
・・・JD副代表 有馬正高
特 集 検証!障害者基本計画と障害者プラン
T.報告・新障害者基本計画・新障害者プラン説明会開く
・・・日本社会事業大学教授/JD政策副委員長 佐藤久夫
U.新しい障害者基本計画と新しい障害者プランに関する各団体の声
 −脱施設論へのブーイング
・・・全国障碍者自立生活確立連絡会 寺田純一
 −障害者の定義の改定を求める
・・・全国言語障害児をもつ親の会事務局長 野木 孝
 −実態に即した見直しを!
・・・全国精神層会社家族会連合会総務次長 田所祐二
 -地域生活の具体的な展望が見えてこない
・・・全日本手をつなぐ育成会常務理事 松友 了
 −障害者基本計画と難聴者
・・・全日本難聴者・中途失聴者団体連合会副理事長 森 孝一
世界の動き 10 DPIがやってきた!
・・・特定非営利活動法人こらーる・たいとう代表 加藤真規子
11 大津会議とBMF(びわこ・ミレニアム・フレームワーク)
・・・日本社会事業大学教授/JD政策副委員長 佐藤久夫
Information 12 団体・地方・行政の動き、トピックス、お知らせ
・・・JD事務局長 小野 隆
パラボラアンテナ これぞIT革命
・・・花田春兆
16 お知らせ・活動日誌(2月)

* 巻頭言 *

■想い出すままに

(社)日本知的障害福祉連盟会長/JD副代表 有馬 正高


 「隣に住む母が夕食に出たまま帰ってこないが心当たりはないか」と知人から電話があり、「ご心配でしょうね」と応じたのは2年前であった。近況では、着衣も難しく、外食は必ず一緒にいくとの話である。若い頃からお世話になり、明るいご夫人だったのにと思う。仲間たちと話すと、うちも似たような経験をしているという人が多い。自分の職場の日常と同じような生活経験が世間でもかなり広がっているなと知らされる。
 平均より重い障害のある子どもとその親に対面を重ねて40年余りが過ぎた。次第に大人になった障害児とその親や支援する人たちとのつきあいが多くなってきている。数十年育てた子どもに先立たれたと嘆く人たち、苦しみを越えてお互い分身のように離れがたい親子、年を経ずに親がいなくなり施設でいろいろな経験を重ねて成長した本人など、さまざまな人生を教えていただいたと思う。1回だけの対面を含むと1万組を越える人たちの記録を見てきたが、機能障害の内容も肢体不自由、内臓障害、知的障害、難治けいれん、行動の特徴、視覚や聴覚の著しい低下など、さまざまな組み合わせをもつ人たちに出会い、それぞれの人たちの抱える困難を目前にしてきた。老人にまつわる対策は、生命に関わる病気を除けば、子どもや青年期からの対応に比して均一なようにも思える。しかしその数が多く、障害者施策と相補的でありながら、競合することは避けられないであろう。
 ここ15年は、病院機能を兼ねた福祉施設の管理職として勤務を続けてきた。障害のある人たちを迎え送る役割をもつ数百人の職員の中には、障害またはその境界ともいえる状況をもっている人たちも参加することになる。そこには、さまざまな個性の違いに対して、職場の工夫だけでは対応しきれない課題も絶えない。
 国際障害者年以来、国内的にも国際的にも、障害種別を越えた大きな団体としてまとまろうという流れが進んできた。多種多様な障害と異なる要求をもつ人たちがほとんど同じ目標に向かって結束するには工夫とかなりの注意が必要であろう。大きくくくる方が、法律や制度を作りやすいと一部の人たちや為政者を喜ばせるだけでは、取り残されていると感じる人たちが増えることになろう。人間はすべて平等でありたい。しかし参加する人にはすべて異なる顔と心があるという現実を忘れてはなるまい。

 


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