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校内児童殺傷事件に関する見解

2001年6月18日

日本精神保健福祉士協会
                           会長 門屋 充郎

 このたびの大阪の校内児童殺傷事件で、不幸にして亡くなられた児童のご冥福と、被害に遭われた方々及びご家族の1日も早い回復を心よりお祈り申し上げたい。今後、すでに派遣されているメンタルサポートチームを中心として、事件現場に居合わせた児童を含めた被害者に対するアフターケア体制が万全に敷かれることを強く求めたい。
 事件は未だ捜査段階であり、事実関係は明らかではない。しかし、容疑者の精神科治療歴等が報道され、社会的な反響が大きく広がっていることから、本協会としての事件に関する当面の見解を表明する。

  1. この事件の容疑者が犯罪行為を行うに到った背景を十分に検証したうえで、個別的な問題と、一般化して議論すべき問題を区別して整理する必要がある。特に、今回の事件が精神障害者全般の問題として取り扱われることにより、ようやく進展し始めた開放的医療やコミュニティケア並びにノーマライゼーションの方向性を後退させることがあってはならない。


  2. 立ち遅れた精神障害者への地域生活支援活動や精神科救急医療体制の充実を図り、誰もが自分の暮らす身近な地域で、必要な諸サービスを受けられる体制を早急に整備する必要がある。精神障害者の病状悪化のほとんどが、生活上の諸問題に密接に関連しているにも拘らず、問題解決のための相談・支援ネットワークが構築されないまま、当事者や家族が地域で孤立している状況が、犯罪行為に到る背景の一つであることを認識すべきである。


  3. 精神障害者の犯罪行為に対する精神科医療及び司法制度のあり方については、慎重な検討が望まれる。


  4. 被害者やその家族、事件を目撃した子供たちへのテレビ・新聞等の取材自体が事件の当事者の心的外傷となり、PTSDを悪化させかねない。これら事件の当事者、特に子供たちへの取材においては、心のケアを最優先とする注意深さを期待する。


  5. 今回の事件報道では、現時点で事件と精神障害との因果関係がまったく明らかにされていないにも拘らず、容疑者の精神科治療歴や過去の診断名が報道され、あたかも精神障害が事件の原因であるかのような印象を与えており、精神障害者に対する差別・偏見の助長につながっている。多くの精神障害者が同一視されることへの不安と困惑を覚えていることからも、冷静かつ慎重な報道を強く要望する。

以上


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