●info0618

小学校児童殺傷事件報道について

2001年6月18日

(財)全国精神障害者家族会連合会     
〒110-0004 東京都台東区下谷1-4-5  
TEL 03-3845-5084/FAX 03-3845-5974

 今回の事件はあまりにも痛ましく、亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。あわせて、被害に遭われた方々の一日も早いご回復を願っておりますとともに、被害者・ご家族が負われた「心の傷」の深さはいかばかりかと、お察し申し上げております。

 今回の事件は、事態があまりにも悲惨かつ衝撃的であるために、マスコミもできるだけ多くの情報を国民に提供しようと、さまざまな角度からの報道がされています。そうしたなかで、犯人の入・通院歴や病名が重要な要因であるかのように報じられ、「精神障害者の犯罪」という図式が形成されてしまいました。しかし、事件と病気・障害の関係性が明らかになっていない段階でこうした報道をすることに、私たちは強い懸念を表明します。

 犯人については、当初「精神安定剤依存症」、「精神分裂病」あるいは「妄想性人格障害」と報じられ、その後、「犯人は精神障害を装っていた」とも報じられています。こうした安易な報道によって、「精神障害者は危険だ」という社会の偏見がより強くなりました。そのため全国に200万人以上いる精神障害をもつ本人、そしてその家族は本当に身の縮む思いをしています。本会には毎日、本人・家族から「近所の人から危険な人と思われているかと思うと、暗い気持ちになり、外に出られない」「落ち込んで、どうしてよいのかわからない」「子供の具合が悪くなるので、テレビも新聞も見せられない」という電話、手紙が次々に寄せられています。今回の報道によって、精神障害をもつ本人・家族たちも困惑し、大きな「心の傷」を負っています。これは「報道被害」であるといっても過言ではありません。
 
 私たちはこれまでにも繰り返し主張していますが、改めて以下のことを要望します。

@事件の報道をする場合、警察発表であったとしても、事件の背景、病気の状態などが明らかになっていない段階で特定の病名や通院歴・入院歴を報道するべきではないこと。
 病名や通院歴・入院歴を報道するのは、匿名にするためのマスコミ側のルールに基づくものであると聞いています。しかし、そのルールが精神障害をもつ本人やその家族など多くの人を傷つける結果となることが明らかな以上、配慮のある報道をするべきです。

A法的責任能力の問題を精神障害に置き換えて報道しないこと。
 こうした事件がおきるたびに、精神障害者であれば、一律に法的責任能力がないかのように報道されています。しかし、約200万人の精神障害者の大半は、生涯にわたって社会的に法的責任を果たすことができる人たちです。
 精神障害の問題と責任能力の問題は同一に論議するべきではありません。まして、今回の事件のように、精神障害を装う場合もあり得るので、この種の報道は慎重にすべきです。

Bこの事件と触法精神障害者の処遇問題を安易に結びつけないこと。
 この一連の事件報道のなかで、マスコミは"触法精神障害者の問題"を短絡的にとりあげています。しかし、この事件の被疑者(犯人)については起訴されるかもしれないことを念頭に置く必要がありますし、それ以前の事件についても、従来論じられてきた"触法精神障害者の問題"に当てはまらないかもしれないことを考慮して正確に報道するべきです。


トップのページへ戻る