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<分科会T>
これでいいのか「障害者排除法」
−社会参加を阻む法律の壁=欠格条項 をなくそう−


発言者 岩崎 晋也 (法政大学助教授/日本障害者協議会政策委員)
臼井久実子 (障害者欠格条項をなくす会事務局長)
加藤真規子 (全国精神障害者団体連合会事務局長)
高橋 英一 (全日本手をつなぐ育成会理事)
河合 洋祐 (全日本聾唖連盟副理事長)
進行 吉田  勧 (日本てんかん協会常務理事/日本障害者協議会政策副委員長)
指定発言 大久保健一 (障害者生活支援TIJ)
名児耶清吉 (茨城県手をつなぐ育成会副会長)
荒井 元傳 (全国精神障害者家族会連合会専務理事)


もくじ

JDにおける検討と今後の課題  


<発言者> 岩崎晋也(法政大学助教授/JD政策委員)

 私は日本障害者協議会の政策委員として欠格条項を検討してきました。検討の過程で、欠格条項は何が問題かを考えていくと3つの大きな要素があると考えました。
 第一は、欠格条項が法のもとでの平等を示す憲法上の権利に大きく違反しているということです。第二は欠格条項は国民の偏見を拡大再生産するということです。「精神病者である者は警備員になれない 」など偏見を拡大する内容の法律が、現にまだ生きていることは大きな問題です。第三は欠格条項が職業選択の自由、社会参加の障壁となっているということです。
 欠格条項をどのように見直していけばいいかのポイントは二つあります。第一は法律上の言葉を変えるだけにとどまらないで、障害者プランにも書かれているように、国としての義務を果たしていただきたいということです。第二は、欠格条項が全廃にならなかった場合、手続き的な権利が重要だと思います。なぜ自分が不適当であるかを異議申立てできる手続き的規定があれば、行政の安易な判断や処分に対して有効にはたらきます。
 対処方針で、資格免許などの回復規定を明確化したり、見直しに関する文言が入っていたりするのは評価できる点ですが、「見直しについて」の「基本的考え方」のなかで、必要性の薄い欠格条項については廃止するとなっていますが、裏返せば、真に必要なものは残すという意味になります。また、制度ごとの対処法で、安易に絶対的欠格から相対的欠格への改正が容認されたのは大きな問題です。さらに手続き的権利の不十分さがあり、欠格処分を受ける際に、事情を聞くことができたり、異議を申立てる権利にはほとんど触れていません。

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これでいいのか「障害者排除法」  


<発言者>臼井久実子(障害者欠格条項をなくす会事務局長)


 今年五月に発足した障害者欠格条項をなくす会に寄せられた声を紹介します。自動車免許は精神障害と診断されると取り上げられ、てんかんをもつ人は一律に免許はとれません。
 また、民間住宅で介護者をつけて生活している人が、公営住宅の入居申込みをしたら認められませんでした。聴覚障害者が医療関係の仕事につく場合、薬剤師の国家試験は通ったが、免許申請が却下されたという例もありますし、実際に医療活動をしていても、自分が必要な援助を外に求めにくいという問題もあります。
 このような声から欠格条項とは何かと考えてみました。言葉や運用解釈の問題ではなく、「障害者イコール欠格」というもとに欠格条項が成り立っていることが問題だと思います。欠格条項撤廃に向けて、今年の七月の政府への意見書を出しました。障害当事者の決定過程への参画も重要です。外国でできていることが、日本でなぜできないのかは説得力のある材料なので、欠格条項の体験についてのアンケート調査を行いたいと考えています。

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精神障害のある人々にとっての欠格条項≠ニいう大きな壁


<発言者>加藤真規子(全国精神障害者団体連合会事務局長)

 私たち精神障害者は障害を自覚して治療を受けてもまだ残る障壁があります。
 その1つは安心して治療を受けられる環境が整備されていないことです。
 2つめは高齢者や他の障害者に比べると所得保障、福祉的支援が立ち遅れている問題です。
 3つめに偏見と誤解が根強く、その原因にマスコミの報道のあり方が大きく影響しています。
 4つめは、法体系が、私たちを主体者でななく、隔離し、保護する存在として位置づけていることです。
 欠格条項撤廃に取り組みながら考えたことは、私たちには就労の場がないことは大きな問題だということです。医療や福祉の内容が、社会参加の促進まで、まだ至っていません。欠格条項や精神障害者が主体者として認めていららないことなどが法律としてあること自体、憲法違反ではないかと考えます。

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欠格条項の与える影響
―A君の経験から―
  


<発言者>高橋英一(全日本手をつなぐ育成会理事)

 知的障害者Aくんは、普通高校の卒業生です。卒業後、職域を拡大すること、実習を何度も断わられた自信を回復するために、運転免許をとってみてはという話になった時にでてきたのが欠格条項です。調べてみると今は知的障害者手帳をもっていても学科・実地試験に合格すれば免許交付しても差し支えないと警視庁から連絡されているそうです。
 Aくんは実地試験はすぐ受かり、学科試験は6回目にやっと合格しました。本人にとっては免許取得が自信につながったのですが、とくに通所施設から嫉妬を生んでしまい、「免許が取れるのなら、障害者でないのではないか」という声さえも出ました。障害があることと免許をもつことはまったく別なのに、障害者をもつ親ですらこう捉えてしまうのです。社会的に今まで欠格条項が残ってきたのは、障害者は何をしでかすかわからないというイメージからです。ですからただ条項を見直すだけでは、状況は変わりません。障害者も社会参加をしていくための啓蒙活動が必要だと思います。
 欠格条項の見直しがされている最中、新聞に「てんかんなど個人情報、教習所に提出を求める」の記事がでました。現場では依然としてこういうことが行わているので、見直しだけにとどまらず、個人情報を含めた保護や権利についても、今後検討していかなかればならないと思います。

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聴覚障害者の社会参加を制限する欠格条項の
早期改正を求める運動


<発言者>河合洋祐(全日本聾唖連盟副理事長)


 一九六五年に上野で起きた傷害事件で捕まったろうあ者が警察の尋問を受ける時に、十分な手話通訳者が用意されていなかったということがありました。憲法第14条の「法の下での平等」は実現されていなかったのです。1969年にはろうあ者がオートバイの運転免許違反で訴えられたことをきっかけに、ろうあ者の運転を禁止している道路交通法第八八条を変えてもらいたいという運動になりました。さらに民法の問題に取り組み、国会請願運動まで起こし、民法に規定される凖禁治産者から「耳の聞こえない者」「目の見えない者」をはずすことができました。
 このような経験から欠格条項の完全撤廃をめざして行動し、1998年10月、署名カンパ運動を始めました。さらに、自治体の議会にはたらきかけて、国に対して、法改正すべきだという意見書を提出してもらうよう運動を起こしました。法改正で状況が変わっていくかという問題があります。正しく国民に理解されない限り問題はあると思っています。私たちは欠格条項をなくすことだけで、運動が終わるとは思いません。むしろ私たちに対する理解を求める運動が必要ではないかと思っています。

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会場からの声

○大久保健一(障害者生活支援TIJ)

 公営住宅に単身入居するときに、常時介護が必要な障害者は、拒まれたのですが、可否の判断をだれがするのかが問題です。実際にぼくの生活を見ていないのに判断がなされたのです。不服申立てを建設大臣に送りましたが、棄却されました。一連の流れを見ていると、介護の必要な者はひとり暮らしはできないというイメージがあるのが現状です。今年になってまた役所で聞いてみたのですが、入居はできないと言われました。

○名児耶清吉(茨城県手をつなぐ育成会副会長)

 知的障害者の親という立場で、免許証と公営住宅入居の問題に関心があります。警察庁長官が、全国の本部長を前にして、試験に合格したら運転免許を与えてもいいと明言したそうですが、どの程度実施されるのかわかりません。法律が改正されなければ、いつひっくり返されるかわからないので、やはりきちんと法律改正をしてもらわなければなりません。公営住宅についても、公的な責任をなぜ負わないのか疑問です。
 私の住む茨城県牛久市は市議会の傍聴人規則に、杖をもって議会に入ってはいけないという規則があります。盲導犬も入れないし、車いすが入るにも、建物の構造的に無理です。ですから、こういう問題は身近に感じます。

○荒井元傳(全国精神障害者家族会連合会専務理事)

 私は障害者基本法による障害者対策協議会に精神障害の立場で参加して、企画委員会で欠格条項の論議をし、「欠格条項の見直しに関する要望書」という意見書を政府の障害者施策推進本部に提出しました。障害者基本法第6条に障害者はすすんで社会経済活動に参加するよう努めなければならないと規定しながら、欠格条項という権利侵害があるとの認識で運動に参加しています。
 全家連は、これからも各障害種別団体と一緒に運動をしていかなければと考えていますが、全家連として、みなさんとは異なる論点があります。前述の要望書の根本原則で、すべての欠格条項は廃止すべきとし、基本原則1では、「すべての人に受験資格を与え、合格した人には免許を与え、就業後、事故を起こしたりした事実が出てきたときに判定手続きをとる」としています。基本原則2には、今まで議論されなかった事後的制限について述べています。
 また、精神障害の特別な状況として、精神保健福祉法では、血管性の脳障害、神経症やてんかんをもつ人などを「その他の精神疾患を有する者」と規定しています。こういう曖昧な概念によってすべての障害者が権利を奪われるのは、不当で、問題です。
 精神障害の分野では立ち上がりが遅れていますが、これからも精力的に進めていきたいと思っています。

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