2003年度

−意見書・要望書−


文書名

障害者基本法案に関する声明

日付

2003728

 

障害者基本法改正案に関する声明

日本障害者協議会  代表 河端 静子

通常国会は728日幕を閉じた

さて、私たち日本障害者協議会(JD)は、日本の障害者が置かれている現状、障害者権利条約の制定へと動いている国際社会の状況から、日本にも障害を理由とする差別を包括的に禁止する内容の実体法の立法化が一日も早く必要であるという認識をもっている。

今般、自民、公明、保守の与党3党提案による「障害者基本法改正案」は、差別禁止や差別を防止するための国の責務などが盛り込まれ、従来の基本法から一歩前進した内容である。障害の定義の問題など、本協議会としては不十分と考える点はもちろん少なくはない。

しかし、障害者基本法が、障害者関係法、およびその各種施策に与える影響が決して小さくはないことを考えるときに、その不十分さは将来への課題とし、この「障害者基本法改正案」が、速やかに実現されることが望まれていると考える。

本協議会は、この障害者基本法の改正が、障害者差別禁止法や総合的な障害者福祉法の制定に向けた第一歩と位置づけるものである。今後も多くの障害者団体、関係者との連携により、これらの新法制定に向けて全力を尽くしていく。

今国会では、「障害者基本法改正案」は秋の臨時国会での継続審議扱いとなったが、本協議会は各党各会派に対して、早急に成立させるべく、与野党の協力の下で論議が行われることを願ってやまない。2003728

文書名

「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案」の廃案を求める要望

日 付

2003年6月2日

宛 先

参議院厚生労働委員会委員及び法務委員会委員

 

  貴職におかれましては社会福祉施策の推進、ノーマライゼーション社会の実現に向け、ご尽力されていることに心より敬意を表する次第です。
 さて昨年12月「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案」が、私たち多くの障害者団体の反対や廃案を求める声をよそに、衆議院法務委員会で強行採決され、本会議で可決されたことに対して、本協議会といたしまして憤りをもって抗議声明を出しました。障害者施策の分野で強行採決されることは極めて異例であり、政府与党が、「何らかの意図をもっているのではないか」との疑念を抱かれても仕方がありません。
 今国会におきまして、この法律案が参議院に送付され、審議が進められていますが、その過程でこの法律案の問題点がますます明らかにされております。「審判」において通常の刑事被告人であれば守られる司法手続き上の諸権利を認めていないことなど、これまで多くの問題点が様々な角度から指摘されています。そして何よりも触法精神障害者の再犯防止を目的とした予防拘禁を可能とする差別的で人権を大きく制限する法律案といえます。さらにこの審議を通じて、日本精神科病院協会による政治献金問題も明るみにされ、精神障害者本人の立場にたってつくられた法律案とは到底言い難いことが証明されつつあります。
 仮にこれが成立する事態になれば、日本の障害者施策、社会福祉分野に大きな禍根を残す結果となることは明白です。 
本協議会は再三にわたって、他の障害者分野に比べて、精神障害者が地域社会で人間らしく生きることを可能とさせる社会サービス、福祉施策の質と量が著しく遅れており、まず地域福祉サービスと地域医療システムの充実が先決課題であることを強力に訴えて参りました。
 以上の認識に立ち、下記の事項について強く要望いたします。

                          記

1. 現在参議院で審議されている「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案」を廃案にすること。

2. 社会的入院の解消など、精神障害者が地域社会の中で人間としての尊厳をもって生活することを可能とするような、地域福祉サービスや地域医療システムの充実を早急に実行すること。


文書名

障害者差別禁止法につながる条項の新設を含む障害者基本法の改正に関する意見

日 付

2003年5月12日

宛 先

自由民主党、公明党、民主党、自由党、社会民主党、日本共産党

 

 障害者の完全参加と平等のための取り組みに敬意を表します。
障害者差別禁止法の制定、及び障害者基本法の改正問題に関する本会の考えは以下の通りでありますので、よろしくお願いいたします。
なお、本協議会をはじめとする障害者団体に進行状況を知らせ、その意見を反映させつつこの取り組みを進められるようお願いいたします。

1 障害者基本法に障害者差別禁止に関する規定を設け、それに対応する実体法を新たに制定すること
 1993年の障害者基本法改正の際大きな議論となったことで、その後、同年の国連決議「障害者の機会均等化に関する標準規則」の採択がなされ、過去10年に世界各国で障害者差別禁止法が制定されてきたことや、現在国連で障害者差別禁止を含む障害者権利条約制定の準備が進んでいること、また日本政府も障害者差別の禁止を含む人権擁護法案を準備するなどその必要性を認めていること、そして昨年10月のビワコ・ミレーニアム・フレームワークにおいても障害者差別禁止の法的整備が強調されていることなど、すでに十分すぎるほどの条件が整っています。日本における障害者の現実は、その多くが未だに無権利状態と差別の中に置かれており、この問題を解決しえる新たな法的な枠組みが急務です。それには、障害者差別や障害(者)の定義、対象となる分野(雇用、教育等々)の規定、障害者差別が生じた場合の是正や救済の手続き規定、障害者差別を行った者への罰則規定など、詳しい具体的な条項が多数必要となります。
 障害者基本法に「差別禁止条項」の挿入の議論もあるようですが、同法は、文字通り障害者施策に関する基本的な理念や国等の基本的な責務および各分野の施策の方向を定めるものであり、基本法に障害者差別の禁止を盛り込むだけでは具体的な効果は期待できません。

2 障害者団体への支援と政策決定へのその参加を位置づけること
 1993年の障害者基本法改正で中央障害者施策推進協議会に障害者の参加が規定されたものの、その後の審議会等の統廃合により同協議会自体が廃止されてしまいました。国連の諸決議が各国に促しているように、国・地方の政策の立案・決定と評価の過程に障害者団体が参加することは、効果的な政策の不可欠の前提であり、すでに多くの先進国・発展途上国を問わず実施されています。わが国でも多くの場合に実施されるようになりましたが、このことをより明確に位置づけるためにも基本法で、障害者基本計画策定時だけでなくより一般的な形での明記が必要です。
 同時に、障害者団体が全国の障害者・関係者の要求と意見をまとめ、質の高い政策提言を行い、かつ広く国民全体にその内容を理解してもらうためには、障害者団体に対する活動費用の助成や十分な情報の提供が必要です。この点についても障害者基本法に規定する必要があります。なお、障害者団体の活動費の公的助成は以前から国連が呼びかけ、すでに多くの国で実施されています。
 加えて、障害者の完全参加と平等の実現を推進する中心機関として、内閣府に男女共同参画会議に準じた「障害者平等参画会議」(仮称)を設置することが望まれます。
            
3 社会参加の権利の明記と努力義務の削除
 さらに、1993年以降の障害者施策をめぐる理念の進展を反映して次の改正が必要です。
 第1に、第3条2項「すべて障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられるものとする。」は「すべて障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する権利を有する。」との内容にするべきです。
 第2に、同じく第3条1項「すべて障害者は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有するものとする。」の「処遇」を「環境と支援」というように改める必要があります。
第3に、障害者に社会参加努力義務、その家族に障害者の自立促進努力義務を課している第6条は削除されるべきです。障害者は一市民としての通常の義務と権利を持つものであり、障害者であるが故の特別の法的な義務を定めるべきではありません。
第4に、必要な施策を利用する障害者の権利を明確にするために、「第二章 障害者の福祉に関する基本的施策」の各条項に、「障害者は・・・の施策を受ける権利を有する」という内容の項を追加することが望まれます。
要するに権利主体としての法的な位置付けを強化し、明確にしていく必要があります。 

4 「親亡き後対策」の発想の終結
 第24条の、父母などが自分たちの死亡後の障害者の生活を懸念する必要がないように配慮する旨の規定を削除すべきであると考えます。これは親・兄弟が生きている間は家族扶養義務にもとづいて世話をするべきだという古い時代の考えによるものです。これを根本的に転換して、成人になった障害者は、親が生きていてもいなくても、ひとりの独立した市民として生きていくことができるように、経済的・社会的支援の施策の整備こそが重要です。

5 障害者の定義を見直すこと
 現在の障害者の定義(第2条)は「精神障害」を明確に位置づけた点で旧法より進んだものですが、依然として問題があります。
 いかなる種類であれ、障害にともなって日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者のすべてを包括的に対象とするべきです。

6 入所型施設・病院から地域への施策の促すこと
 新しい障害者基本計画では、ノーマライゼーションの理念のもと、施設から地域への移行の推進を強調していますが、その基本的な考え方を本法の総則部分に盛り込む必要があります。
 また、第11条の「自立することの著しく困難な障害者について、終生にわたり必要な保護等を行う」などの表現を改めるとともに、「どんなに重い障害をもっていても、人権が守られ、自己選択が尊重され、生き生きと社会参加できるように可能な限りの支援を保障しなければならない」などの内容を規定することが望まれます。

7 支援費制度への対応
 第17条(措置後の指導助言等)は、このままでは支援費制度の時代にふさわしくないものとなっています。措置も一部残っていることも考慮しつつ、国と地方公共団体が福祉サービスの利用を開始した障害者に対して、開始後も継続的に責任を持って支援をするように、新しい規定が必要です。

8 都道府県・市町村障害者計画の義務化
 障害者施策においても地方分権化が進む今日、地方自治体がニーズを調査し、障害者・関係者の意見を聞きつつ社会資源を計画的に整備することはますます重要となっており、これらの計画を義務化すべきです。

9 地域格差の縮小
 地域による障害者施策の質と量の格差が問題となっています。このため人口移動も珍しくありません。福祉用具の給付率も数倍から10倍の都道府県・市町村格差が報告されています。同じ制度でも認定と適用をめぐるばらつきが指摘されています。支援費制度の導入とともにこれが拡大する可能性も強まっています。
 したがって、国の責任で障害者施策に関する地方格差について総合的にモニターし、その情報を公開する等、極端な格差については、当事者の意向を反映したミニマム保障プランを示し是正につとめる、旨の規定を設けるべきです。          

                                                 以 上

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