●最新のニュース20050408

障害者自立支援法案に関わっての利用者負担に関する要望書

自民党障害者問題特別委員会で、JD藤井常務理事が利用者負担について意見を述べました。

                                               

 46日に開催された自民党障害者問題特別委員会では、まず現在の障害者に対する住宅施策について国土交通省住宅局より説明があり、自民党議員からは、簡易昇降機設置に対する補助が必要ではないか、17年度新規事業として、精神障害者の公営住宅の単身入居がかかげられているが、すでに17年度に入っているのに具体的な方策が示されていない、障害者が民間住宅入居の場合の支援が必要だなどの意見が出た。
 虐待防止法に関する検討状況の報告があったのち、利用者負担の問題が取り上げられた。JD藤井常務理事が1.応益負担が家族に及ぶ問題、2、所得保障の必要性、3、働く場からの費用徴収の問題、4、社会資源整備の問題、5、精神障害者通院医療費の5点に絞って、利用者負担について意見を述べた(意見書参照)
 これに対して、八代委員長からは、福岡、仙台の『タウンミーティング』でも同じ意見を多く聞き、JDの意見は多くの障害者の意見と理解しているとの発言があった。塩田障害福祉部長からは、障害者の自立が目的であって、政府原案に工夫を加えるべきと思っている。働く意欲のある人の意欲をそぐことになっていないか検討すべきと考えており、扶養義務者の問題も他制度との整合性の中でぎりぎりの案をつくりたいなど発言があった。
次回は、特別委員会としての意見書を検討することになった。

                                               

2005年4月6日

自民党障害者特別委員会
委員長 八代英太 殿

                                                    日本障害者協議会(JD
                                     
代表 河端静

                         発表者:藤井克徳(常務理事)

障害者自立支援法案に関わっての利用者負担に関する要望書

 既に国会に提出されている障害者自立支援法案(関連37法律)であるが、これについての関心が障害当事者ならびに家族等のあいだで、日増しに高まっている。多方面にわたって改善方策が盛り込まれているが、一方でいくつかの点で疑念や不安感を抱かざるを得ないというのが率直な思いである。今後の当特別委員会をはじめとする貴党での検討の中で、また間もなく始まる国会審議を通して、改善点をいかに伸長させ、疑念や不安部分をいかに消去していくか、このことが関係者の間で強く切望されている。
 わけても、新たに設けられようとしている「定率負担制度」の行方に関心が集まっている。結論から言えば、これについては容認できないというのが私たちの考えである。たしかに、主要施策についての義務的経費化は朗報であり、評価できる。しかし、如何せん「定率負担制度」については、これに応じようにも応じ難いというのが、多くの障害者の現実なのである。
 本法案に関わってはいくつかの点で重要な検討事項があろうが、改めて「定率負担制度」についても政治の光を当てていただきたい。閣議決定という厳粛な事実を重々承知しているつもりではあるが、その上でなお再考いただきたく、ここに切に要望するものである。

■要望事項

 現状において、各種サービスに関わる「定率負担制度」は導入すべきではないと考える。その理由は、以下の通りである。

1.家族の負担増は必至で、障害当事者の「肩身の狭い生活」の常態化が懸念される

 所得能力の乏しい障害者が多い中にあって、「定率負担制度」の導入は即家族の負担増に結びつくことになろう(低所得者については、世帯単位の所得で利用料が算出)。家族への依存を前提とするこうした考え方は、国がこの間とってきた「社会的自立の推進」「個としての対等性の尊重」に逆行するものである。障害当事者からしても、あてもなく家族の保護を余儀なくされることは、辛いものがあろう。なお、現行の通所授産施設や居宅生活支援事業の利用料算定にあたっては、親や兄弟の所得条件は加味されておらず、これが後退することがあってはならない。

2.厳しい所得(収入)の実態にあって、負担しようにも負担できないのが現実

 今般の「改革のグランドデザイン案」において、いくつかの点で重要な政策課題が欠落しているが、その一つに所得保障があげられよう。現状の所得水準で「定率負担制度」に移行した場合、相当数が前述した家族依存とならざるを得ないのである。可処分所得の目減りは、結果的に地域生活の促進を鈍らせてしまうのではなかろうか(施設入所や入院していた方が安心であるという考え方が根強い中にあって)。「定率負担制度」の導入というのであれば、並行して本格的な所得保障を準備すべきであり、少なくとも検討に入ることを約すべきである。

3.「働く場」での利用料負担は、社会通念上からも解せない

 「働く場」に関する新たな事業類型として、@就労移行支援事業、A就労継続支援事業(雇用型、非雇用型)、B地域活動支援センター(現状では利用料負担の有無は明確にはなっていない)などが設けられることになったが、現段階での考え方としてこれらを利用した場合であっても利用料が発生するとされている。働きながら利用料を支払うというのは、社会通念上からも奇妙であり、就労意欲の減退が懸念される。なお、現行の福祉工場や授産施設においては、実質的に利用料は発生していない。

4.各種サービスの絶対量の不足にあって、所得能力に欠ける者が不利になるのでは

 障害者に関する社会資源(働く場、住まい、各種の居宅生活支援事業など)については、慢性的な絶対数不足が続いている。障害者自立支援法の施行で改善を期待する向きがあるが、短期間での好転は難しいように思われる。事業提供者側の、いわゆる売り手市場が続く中、当分の間は利用者が逆に選択の対象となる事態になろう。結果として、経済能力に難のある者に対しては、「敬遠」の意識が働くことが考えられる。「定率負担制度」の前提として、法的な根拠を有する社会資源の量的な拡充策が図られなければならない(「障害関連の基盤整備に関する臨時措置法」などといった形で)。

5.精神障害者通院医療費公費負担制度の廃止は、医療離れを多発させるのでは

 精神疾患を有する者にとって、医療と適切に結びつくことは極めて重要である。いわゆる「命綱」の意味を成すことも稀ではない。負担感の少ない受診体制の整備が求められるが、わけても経費面での負担感の払拭は重要である。とくに、長期入院からの退院者や非雇用状態にある者、これらの多くは所得の条件が厳しく、現行の「精神障害者通院医療費公費負担制度」がかけがえのない役割を果たしている。所得保障の面などで新たな政策が講じられない中での通院医療費公費負担制度の廃止は、明らかに限度を超えた受診抑制をきたすことになろう。


トップのページに戻る