●最新のニュース20050107-3な触法行為をした精神障害者の処遇に関する法律案(仮称)の概要」に関して、要望書を提出

精神保健福祉法改正と「障害者福祉サービス法(仮称)に係る意見書

200517

厚生労働大 

尾辻秀久

日本障害者協議

  代表 河端 静

精神保健福祉法改正と「障害者福祉サービス法(仮称)」創設に係る意見書

日頃より、障害者施策の充実に尽力を賜り、お礼申し上げます。

 日本障害者協議会は当初から精神障害者を含むすべての障害者に対して必要とされる施策を差別なく提供することを、最重要課題としてきました。近年、精神保健福祉法、障害者基本法などの大きな法的整備がなされ、社会資源も拡充しつつありますが、残念ながら医療中心・入院中心の構造を大きく変化させるには至っていません。本年9月の「改革ビジョン」および10月の「グランドデザイン(案)」はこうした現状を打開するための政府の姿勢を示したものと思われますが、なお十分ではありません。

基本視点を本人主体の生活支援に置き、日本国憲法で明記されている、基本的人権や法の下での平等を保障するものに改正する必要があります。さらにこれらの改正に関連して、現状でもっとも差別を受けている精神障害者の差別禁止を可能にする障害者差別禁止法の制定や、障害者雇用促進法の改正により精神障害者を雇用率制度の対象とするとともにその実効性を高める各種の方策も必要とされています。

 とくに以下の重点課題および重要項目を法律改正と創設に際して配慮されるよう要望いたします。

<重点課題>

1.             医療と福祉の法律の分離をすること

第一条      この法律の目的に「精神障害者の医療と保護を行い・・・」とあるが他障害福祉法と同等に、本人の社会参加、地域生活支援をその目的とすべきである。又「社会復帰」という言葉は長期入院後や医療観察法等では使われているが地域生活者に対し不適当なので「社会参加」に替えられたい。
 また、「社会復帰(社会参加)」施設、および社会福祉サービスは原則として病院敷地外で提供するものとすべきである。

2.              精神障害者の定義

一人の精神障害者が同時に医療と福祉のサービスを必要とすることは大いにあり得るが、単一の「精神障害者の定義」で医療も福祉も提供しているのが現行法である。すなわち現行では精神疾患のある人=精神障害者となっているが、国際生活機能分類(ICF)の視点をふまえて、精神疾患のある人の中で、社会参加のために福祉サービスを必要とする人を福祉における精神障害者と定義すべきである。

3.  個別の退院促進の事業を法定化すること

 社会的入院の解消には、地域のサポート資源の充実や退院率などモニター制度が重要であり、これらは「改革ビジョン」で強調されているが、それに加えて個々の社会的入院者の退院促進のための支援を創設する必要がある。その際従来のような病院の内部努力だけでは限界があり、外部支援を法律で定め、病院にはそうした外部支援を受け入れ、それと協力する義務を規定すべきである。具体的には、ピアカウンセラーやその他の第3者による個別退院支援を法律による事業とし、同時に退院希望先市町村がそのための条件整備を行う義務、および都道府県がそれを支援する義務を定めるべきである。ただし本人の意志を最優先し、かつ、家族の負担を前提としないものでなければならない。

4.  他障害者との法的格差をなくすこと

 精神障害者は支援費制度にも入っておらず「居宅生活支援事業」等精神障害者の支援について市町村の役割が強化されてきてはいるが、市町村の責任が明記されておらずその質・量共に極めて不十分である。

 第四十八条 精神保健福祉相談員を市町村にも配置し、継続的・定期的研修を義務付けることにより尚一層資質の向上が求められる。


 第四十九条 制度活用には先ず相談事業の充実が必要とされており広報・啓発も含め、利用者に必要な援助の最前線は市町村であると言える。そこで、市町村の役割り、責任を明確にする。

 第五十条 施設については、他の障害者施設に比べ、対象経費(補助金)があまりにも少なく、職員配置等充分とは言えない、又施設数も不足である。同時に「社会福祉法」第二種事業としての位置付けは放置しておくことにより他障害との格差は固定化してしまう。第一種事業への変更が必要である。

5.  保護者規定の撤廃

 第二十条  精神障害者に対し一生家族の保護が必要な人と位置づけており、偏見の 第二十一条 元にもなっている。又、親の高齢化に伴う対応力の低下もありこの様な第二十二条 法は現実的でない。

 第四十一条 精神保健は国民全体の問題であるという認識の基に広く社会的な保護・支援、成年後見制度等での対応を切望する。

6.  社会復帰施設の見直し

 社会資源の少なさは以前から重大な問題であり、社会復帰施設という名称は他障害と同じに社会福祉施設とするべきであり、その種類、内容等について現実を調査した上で大きな見直しが必要である。

 「社会復帰の促進及び自立と社会経済活動への参加の促進を図るために」という設置の目的から「精神障害者がその人の望むよりよい地域生活実現の支援のため」とする。現行においては退院したら訓練して就労することを自立として、社会復帰を図ると想定されているがこれを全ての人にあてはめるのは現実的でない。

 居住を伴う生活関連施設、就労支援の場、さらに共同作業所の「小規模、多機能、可変性」の課している重要さを評価し位置づける等の整理をしなければならない。

<その他重要項目>

.  精神科医療の問題点

社会的入院が多いことは明らかであり、国の隔離収容施策は誤りである。一刻も早くこの誤りから発生している問題の解決が望まれる。

措置入院、医療保護入院等の非自発的入院については、保護者規定の廃止と関連して総合的に見直し、社会防衛ではなく本人保護の制度とすべきである。

医療観察法との摺り合わせ(23〜27条)をし、混乱のないようにする。

受診しやすい一般病院に精神科病床が少なく入院治療が多くなっているにもかかわらず職員数が少ない等、その原因となっている精神科特例の廃止が望まれる。

救急医療の充足が速急に必要である。

任意入院患者であるにもかかわらず閉鎖病棟使用の例も多くあり(最近の病院地域精神医学会の調査では任意入院患者の35%)、行動制限や閉鎖病棟への入院は原則として行うべきでない。

精神科医療・福祉相談(精神保健福祉士・PSW)を医療費に参入し、社会復帰促進を進めること。

8.  障害者手帳制度について

・障害福祉サービス法(仮称)の制定にともない、あらたな「障害者手帳」または「社会サービス手帳」を設け、すべての障害者を平等に扱うこととすべきである。

・それまでの経過期間、精神保健福祉手帳については都道府県により認定基準に差があり、A県で認定されていたのにB県に転居したら受けられなくなったということも生じているので、全国統一の認定基準にすべきである。

JR運賃割引をはじめ手帳のメリットを増やし、身体障害者手帳や療育手帳との格差をなくし、真に社会参加を支援する制度にするべきである。その際、写真の貼付の必要性については、諸外国の経験や国内の地方交通機関での割引などの教訓を吟味するとともに、当事者団体とよく協議すべきである。

9.         地域生活支援センター(第五十条の二の六)

 精神障害者地域生活支援センターは当初期待された業務について、設置数の少なさや、設置主体の考え方、職員の質の低さ等によるサービスの格差が大きい。業務内容の質を保証できる規定が必要である。

10. 精神障害者短期入所事業について(第五十条の三の二の3)

現法では「居宅において介護等を受けることが一時的に困難となったものにつき」とあるが、地域において一人暮らしをしている人の休息、退院促進の為の体験利用等、地域生活の支援として使えるものにすべきである。

現在利用できるのは「精神障害者生活訓練施設その他厚生省令で定める施設」とあるが、これはあまりにも少なく、遠くの見知らぬ施設では安心できる短期利用は難しい。身近な地域で、一定の条件が整えばグループホーム等でも利用できることが望ましい。

11. 社会復帰促進センター

・社会復帰促進センターが充分に機能できるよう、名称を「社会参加促進センター」とするとともに、事業の目的・業務等の全面的見直し、とくに十分な人件費の補助がなされる必要がある。「改革ビジョン」は国・自治体とともに民間が推進力の一翼を担う必要があり、その核としてこのセンターが当事者・家族・支援者の知恵とエネルギーを結集し、国民理解を広げてゆくべきである。

12. 新たに必要な政策

・民間の相談員制度の創設。名前は「心の相談員」でも、「精神福祉推進員」などとし、家族も、精神障害当事者も、一般市民も参加できるようにする。

「回復者クラブ育成事業」等により、当事者活動への助成を。

13. 精神障害者を主体とした精神保健福祉法へ

 精神保健福祉法は、精神衛生法からの入院手続き法の残滓を引きずり、精神病院の管理者は云々という規定ぶりになっている。規定の仕方を当事者主体のものに変更すべきである。例えば、36条(処遇)などは、精神病院の管理者は、行動について必要な制限を行うことができるとして、信書の発受の制限、面会の制限、隔離などについて記している。行動制限の必要性自体は認めるにしても、入院患者は下記の場合を除いては行動の制限を受けないというような入院患者主体の記述に改めるべきである。

14. 社会適応訓練事業(職親制度)について

・本事業は、障害の性質と経過に個別性があり、かつ個人的な信頼関係が社会参加への訓練に大きな役割を果たす精神障害者の障害特性に適応したものであり、27%強の就業率と授産施設などに比べてもその有効性が確認されている。これを正当に評価し、さらに雇用関係部局との連携を強化するなど、本制度の質的・量的充実を図るべきである。


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