●最新のニュース20041109大な触法行為をした精神障害者の処遇に関する法律案(仮称)の概要」に関して、要望書を提出

『谷間の障害者』の生まれない『障害福祉サービス法(仮称)』を

 障害者福祉の谷間におかれている障害者が今もたくさんいます。今回の改革の中で、もしこの人々がまた取り残されるようなことがあってはなりません。JDではこの問題をめぐって研究会を重ねていますが、中間報告としてここに明らかにし、改革のグランドデザインの中で真の総合化が実現されることを強く要望します。

単なる現行3障害の「和」でなく、真の総合化を

日本障害者協議会 障害の定義・認定ワーキングループ

私たちは発達障害や慢性疾患等によって継続して日常生活に様々な困難さを抱えているにもかかわらず、障害認定されず、現在の障害施策の谷間であり続けている当事者や団体です。現行の障害認定では、ある部位の欠損や「永続的」機能障害といった、極めて狭義で、制限列挙的な制度であるために、必要とする障害者福祉を利用できないでいます。社会参加を加味したICFといった世界的な障害概念を見ても、対象者が極めて少なく、狭義な日本の障害認定制度、福祉制度の改革は急務となっています。今回の総合化においては、単に身体、知的、精神といった3障害の「和」にとどまることなく、今まで谷間に置かれつづけてきた障害も包括した、真の総合化を実現すべきです。   

以下に2点の要望とその根拠・背景である各団体・当事者からの声・生活実態を改革のグランドデザイン案に対するJDの意見書の補足説明資料にまとめました。

要望事項

1  障害施策の総合化においては、現行の障害者認定制度のみに着目せず、谷間におかれていた障害者も包括した総合化となるようにしてください。サービスの支給決定においては個別の必要とする支援を受けることができるようにしてください。

2  個別の必要に応じた認定制度、サービス内容等の支給決定に関しては、その基準作りや審議過程においても、すべての障害者に公平で、透明性のあることが求められます。支援、支給方法等に関しては、当事者団体参画のもと十分な協議の場と時間をとってください。

<資料提供団体>

<中途失聴者・難聴者の福祉>   (社)全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
<全身症状を伴う皮膚疾患について>  希少難病全国連合会 あせび会
<インスリン依存型糖尿病の必要とする生活支援サービス> 全国インターネット患者会 iddm.21
<サービスを必要とする人こそ政策決定の中心に> 全国パーキンソン病友の会

<発達障害児者の定義認定> 発達障害療育研究会
<高次脳機能障害者の生活障害の実態に即した認定・支援を> 
日本脳外傷友の会
<アスペルガー症候群における生活への支援> 東京つばさの会(高機能自閉症・アスペルガー症候群児者の親の会)
<難病等の慢性疾患者が必要とする支援> 全国難病団体連絡協議会

(補足説明資料)

<中途失聴者・難聴者の福祉> (社)全日本難聴者・中途失聴者団体連合

@ 認定されない現状
 難聴者においては、両耳の平均聴力損失が70dB以上の人を障害者と認定していますが、これ以下の難聴者も多くのコミュニケーションの困難を抱えているにもかかわらず障害者認定されていません。この人たちは十分な情報やコミュニケーションの支援がないまま、社会参加できずに、孤独な生活をしています。聴覚障害者に手話通訳や要約筆記を付けることは、知る権利に伴って保障されるべきことです。

A 要約筆記等の情報保障を
 また、「グランドデザイン」のように障害者福祉サービスを「応益負担」とし、それを障害者への「個別給付」とすれば、例えば入場料1,000円の講演会をするとき、聴覚障害者はOHP要約筆記の情報保障を付けるので1,200円にしたり、一般者には無料の説明会も聴覚障害者は有料になったりします。このときのOHP要約筆記は、健聴者・聴覚障害者でない一般人の理解の助けにもなります。要約筆記はユニバーサルデザインの情報保障ですから。健聴者はお金を払わなくてよいとすれば、費用を負担する人としない人、逆の不公平が生まれます。

<全身症状を伴う皮膚疾患について>  希少難病全国連合会 あせび会 

@ 認定されない現状
 どうしても障害者の枠に入れてほしいと思うものは、肢体不自由を伴わず、全身症状を伴う皮膚疾患です。たとえば「皮膚弛緩症」とか外胚葉形成不全の「無汗症」などです。皮膚弛緩症でも重症者は全身の皮膚がたるみ、内臓も弛緩することがあり、具体的な治療法はありません。「無汗症」は文字通り発汗作用がないために体温調節が出来ず、社会生活が困難です。又、体毛は薄く頭部の毛髪も歯も生えません。就学前から入れ歯、かつらと外見は成長に合わせて今は作れる時代ですが、体温調節のため、アイスノンを沢山持参し、通学するというケースもあります。しかし、夏は熱中症になるので外出は困難です。ただ疾患別にあげてゆくときりがなく、ここで挙げた例は医療の対象にさえなっていないものです。先天性で大変数が少なく、せめて福祉の対象にと願っている疾患です。どちらも知的障害を伴いません。

A「病人」の福祉制度を
 さらに加えるならば、重度の皮膚障害や形態障害を伴う人の社会的不利益をどうするかがあると思います、医療が主であるいわゆる「病人」の福祉制度が必要だと思っています。障害者手帳と並んで「療養手帳」的なものがあり必要に応じて生活支援を受けられることの検討が必要ではないでしょうか。

<インスリン依存型糖尿病の必要とする生活支援サービス> 全国インターネット患者会 iddm.21

私たちは膵臓機能障害のため膵臓から産出されるインスリンが絶対的に不足しています。そのためインスリン注射などを1日複数回行わなければ、3日で死亡するといわれています。血糖コントロールを行うには、血糖自己モニタリングと血糖に見合った注射量や時間調整が不可欠です。これを怠れば、高血糖昏睡や低血糖昏睡に陥ります。あるいは、さまざまな合併症を抱えることになります。

@ 地域生活支援の問題
 地域に生活相談機関が存在しません。一人暮らしをしている人は、夜間時などにおける高血糖昏睡や低血糖昏睡など緊急時の対応を考えなければいけません。個人で対応するのではなく、地域で対応していけるような支援体制が必要不可欠です。また体力に限りがあるため、家事や掃除など必要に見合ったホームヘルパー制度が使えるようになれば、就労など生活全般を、病態を悪化させることなく継続していくことが可能となります。

A 医療費の問題
 インスリン依存型糖尿病は障害認定や特定疾患対象外です。医療は一般医療保険対応です。窓口3割負担で毎月最低2万円弱の自己負担があります。合併症を抱えれば、当然ながら自己負担は増え続けます。経済的理由などから定期的に通院できない人が多く存在します。その結果病状は悪化していきます。私たちのように障害認定や特定疾患認定外の疾患も継続的に治療が必要で日常生活に困難を抱えている人には、疾患による区別や障害者認定を要件とせず「グランドデザイン」で示されているように、公平に公費負担医療の対象者として認められるべきです。私たちの生活環境は、疾患を理由とする制限や支援体制の不足ばかりです。就労・医療制限、相談機関や地域生活支援の不在、また民間保険にも入れません。前回の道路交通法改正時には、相対的欠格の対象疾患に新たに加えらました。医学モデル偏重の障害認定にとどまることなく、狭間に置かれた障害者の生活ニーズにも弾力的に対応し得る支援体制の確立を求めます。

<サービスを必要とする人こそ政策決定の中心に> 全国パーキンソン病友の会

@ 認定されない現状
 パーキンソン病は、現在なお原因不明かつ治療法未確立で根治薬はなく、徐々に悪化進行していく難病です。数種類の薬の処方により進行の抑制効果が認められ、平均余命近くまで生きられるものの、薬がなければ生きていけません。又、薬の効いている時と、効いていない時のパーキンソン病特有の症状の波は、継続的に日常生活に制限があるにもかかわらず、障害認定に反映されにくい現状があります。

A政策決定に当事者を
 
誰しもが健康でありたいと願い、病んだときには最高の医療を受けることを望んでいます。ところが、実際には、患者になってみると自分たちの健康維持に直接影響を与える重要な政策決定が行われる際に、その決定の場からかけ離れたところにいるように思います。情報公開を進め、患者や家族の意見を政策決定者に十分伝えられるシステムの確立を望みます。

B患者の視点から
 患者は自ら難病に罹ったことにより、難病克服研究の最前線にいます。誰がいつ罹るとも知れない病を抱えて生きることそのものが、病の完治をめざす戦士として貢献しているのです。我が身の不遇を嘆いているよりも、近い将来完治する日が必ず来ることに期待をかけ、自分自身はもとより人々のために病に立ち向かっているのです。こうした患者の視点からの医療・福祉両面を勘案した療養生活の質的向上策を提案させることが、患者のニーズにあったもっとも効率の上がる施策を生み出すと考えます。


<発達障害児者の定義認定>    発達障害療育研究会

現行法における自閉症をはじめとする発達障害児者への施策は、知的障害(精神遅滞)に含まれたものとなっています。それは、現行の障害者基本法、知的障害者福祉法において、知的障害の明確な定義がなされていないことと、にもかかわらず、都道府県レベルでの行政において、法律に基づく施策の対象者として知的障害児者を判定する際、知能検査の数値による明確な線引きをして選別が行われていることから生じた事態です。そのことによって、現判定基準上は知的障害を伴わないために療育手帳を取得できず、高機能自閉症、アスペルガー症候群、LD、AD/HDの人たちの大半は、何らの福祉的援助も受けられず、家庭、学校、社会の中で、悲惨な状態で暮らし、家庭崩壊、不登校、いじめ、学級崩壊、ひきこもり、犯罪といった逃げ場のない窮地に陥っている方がたくさんいます。
 2004年の障害者基本法改正時における参議院付帯決議に「・・・てんかん及び自閉症その他の発達障害を有する者並びに難病に起因する身体又は精神上の障害を有する者であって、継続的に生活上の支障があるものは、この法律の障害者の範囲に含まれる者であり・・・」とあるように、現障害者基本法においては、発達障害児者が障害者として定義されています。にもかかわらず、知的障害を伴わない発達障害児者は、知的障害の福祉施策の対象外となっており、法律に反すると言い得る行政が行われています。
 障害者への包括的な支援を目指すグランドデザインにおいて、こうした法律違反とも解釈し得るような事態を抜本的に是正するための適切な立法を望みます。そのために、以下のような提言をさせていただきます。

@ 知的障害という不適切な呼称を使用せず、精神遅滞とし、発達障害と並記した形での診断・判定に関する用語を使用すること。新たな支援基準が普及されれば、当然どちらも使用しないことになります。
A 発達障害、あるいは障害の定義に関しては、世界的に通用しうる世界保健機構(WHO)によるICD−10などの医学的な出典を明示した形とし、かつ、医学の進歩に即した修正や変更に対応することを明示すること。*
B 認定・判定についての規定を明確にすること。あるいは、精神遅滞のみを認定し得る知能検査偏重による判定を是正し、発達障害児者全てを障害者として明確に認定する規定を設けること。

:世界的に認められている2つの診断基準において、分類の仕方や内容、語彙は同一ではありませんし、明確に「発達障害」という独立した分類はありません。 WHOのICD−10では、「精神遅滞」「心理的発達の障害」「小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害および特定不能の精神障害」と並記された3つの類を合わせたものが発達障害に該当し、アメリカ精神医学会『精神疾患の分類と診断 DSM−W』においては、「通常、幼児期、小児期または青年期にはじめて診断される障害」が該当し、その中では精神遅滞や自閉症、学習障害などが並記されています。

<アスペルガー症候群における生活への支援> 東京つばさの会(高機能自閉症・アスペルガー症候群児者の親の会)

 高機能自閉症・アスペルガー症候群は現在まで障害を持つことを本人も家族も知らずに過ごして来た者達がほとんどです。彼等は障害特性を理解されなければ、円滑に生活を送ることが出来ませんが、専門医の不足から医療機関で診断を受けることすら困難な状況であり、社会資源はほとんど無い状態です。検討されている発達障害者支援法は彼等が必要とする社会における支援を進めて行くための一歩として非常に期待の出来るものですが、現時点で困難を抱えている本人、家族に対応する支援も急務です。
 高機能自閉症・アスペルガー症候群は将来に渡って何らかの支援を必要とする人達ですが、現在、障害認定となるための適切に認定される基準が無く、多くの者が困難さを抱えながら障害者福祉を受けることに繋がらない状況にあります。支援法には現在すでに成人に達し、二次障害を起こしている者達への支援は具体的に示されていません。行政の対応を得られず、親の会に問い合わせて来る人達で、当事者が成人である場合、誤診のため薬漬け、引きこもり、家庭内暴力も親、家族が抱え込むしかすべがない状況で、作業所、施設においても理解者の不足から適切な対応とならず、より状況を悪化させる場合もあり、現行のシステムの活用のみでは支援に繋がらないケースが多数あります。またそれは一番困難さを抱えて居る者達が障害者福祉に繋がらないという結果を生みだしています。その者達と家族へのサービスが欠落することのないよう、個別の必要な支援に対応することが不可欠です。
 高機能自閉症・アスペルガー症候群はそれぞれの在り方も違いますが、今まで認知されなかったために本人、家族の状況のエビデンスが十分ではありません。必要な支援、サービスの支給方法は当事者、親の参画を特に期待します。

<高次脳機能障害者の生活障害の実態に即した認定・支援を> 日本脳外傷友の会

@障害者手帳の一元化とその時期の明示を
 高次脳機能障害者は身体、知的、精神、障害を重複する場合が多く、実際の生活制限は障害の種別毎の手帳制度では等級に反映されない状況があります。生活困難さに応じた適切な一元的障害等級の設定により、福祉サービスや関連制度(税制、重度障害者医療費助成、交通運賃の割引等)が活用できるよう要望します。

A「高次脳機能障害の診断基準」の活用を
(手帳一元化までの間)高次脳機能障害モデル事業の成果のひとつである「高次脳機能障害の診断基準」にもとずき、(手帳の有無・種類にかかわらず)該当者には福祉サービスの利用が可能になるようにしていただきたい。どの手帳も取得困難な場合があり、精神の手帳をとるようにといわれても、精神科医に理解がなく、手帳交付に繋がるような診断書が書いてもらえないことが多い現状です。

B高次脳機能障害支援センターを開設を
 高次脳機能障害支援センターを開設し支援コーデネーター等の専門家を配置する事と共に、必要な障害者福祉サービスが利用できるようにしてください。

C要介護認定に生活障害の反映を
(仮に64歳以下の障害者が介護保険を利用することとなった場合)高次脳機能障害の生活障害が新しい介護保険制度の要介護認定に反映されるようにしてください。

Dモデル事業の成果の全国的普及を
 モデル事業5ヵ年の成果を18年度以降、確実に全国に普及させてください。とくに地域格差の是正、専門家の養成研修カリキュラムの策定に国が責任を持つなど。

<難病等の慢性疾患者が必要とする支援> 全国難病団体連絡協議会 

@ 継続的な体力的制限を十分に勘案した支給決定が必要
 難病等の慢性疾患は継続的に日常生活において体力的な制限がかかるために、通常の労働時間、週5日、一日8時間といった就労をこなすことができないものも多くいます。このような就労の制限は生活の質に直結するにもかかわらず、現行の障害者認定では勘案されず、障害者手帳を要件とされる様々な障害者福祉が利用できないでいます。就労支援や自立支援給付等の必要な支援において、十分に勘案する必要があります。すでに1998年以降「HIVによる免疫機能障害」の認定においては、感染をさけるための生もの摂取の制限や疲労をさけるための残業等の制限など、日常活動や社会参加の制約を認定基準に含めています。日常生活に制限のかかる難病等の慢性疾患者との整合性が問われます。

A 症状に見合った段階的な就労の機会と必要な支援を利用した自立生活
 働く意欲や能力があるにもかかわらず、偏見や就労の機会、段階的な一般就労の支援がないために就労できないでいる難病等の慢性疾患者も多くいます。悪化時から、いきなり一般就労へと向かうのではなく、一般就労への段階的な就労支援が必要です。しかし無理な労働(強制的な就労計画)による症状の悪化、障害の重度化といったことにも注意が必要です。できうる範囲での、症状に見合った就労(就労での合理的配慮)と必要な福祉(所得保障も含む)を活用しての地域での自立した生活、権利が当然認められるべきです。
 医学モデルによる支給決定ではなく、就労等で継続して制限がかかる際には、障害者職業センター等での職業能力等に着目した判定基準を活用し、自立支援、就労移行支援等の必要な支援が利用できるようにすべきです。


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