●最新のニュース20040924「重大な触法行為をした精神障害者の処遇に関する法律案(仮称)の概要」に関して、要望書を提出

発達障害者支援法案に対するJDの基本的考え方

 発達障害者支援法案が作成され、次期国会に提出されようとしています。日本障害者協議会では、政策委員会、理事会での検討を経て、法案に対する基本的考え方をまとめるとともに、関係議員に対し要望を出していきます。

発達障害者支援法案についての基本的考え方

日本障害者協議会


 本協議会は、現在の障害別に分立している福祉法制においては、いわゆる「谷間の障害者」をつくりだし、深刻な状況が存在し続けるという認識に立ちます。このような観点から総合的な障害者福祉法の制定こそ、重要課題であるという立場にたつものです。
 しかし一方、いわゆる「谷間の障害者」に対する支援施策の整備のための法制度の立法化については、総合的な障害者福祉法の制定までの暫定的なものと位置づけて、その内容を吟味した上で、現実的な評価もしていきたいと考えます。


<発達障害者支援法案についての評価>
1 本法案が対象としている「発達障害者」等は公的支援を受ける道を閉ざされている現状にあり、本法案がこうした論議に一石を投じるという点で、評価するものです。
 現状においては本法案が対象としようとしている「発達障害者」等に対する支援制度そのものが実質的にはありません。そのため、教育においては普通学級の中で、うつ、ひきこもりの状態になったり、さらにはいじめを受ける、などの事態は決して珍しくありません。福祉サービスにおいては、支援費も受けられず(とくに18歳以上の場合)、雇用においても雇用率制度や各種助成金制度から除外され、障害基礎年金も日常生活能力が比較的高いとされて受給できず、所得税控除などの各種経済的負担軽減策も利用できません。
 本法案は、これまで支援の対象にならなかった「発達障害」をもつ人々に対する、国、地方自治体の支援の責務を示し、医療、教育、福祉、労働などの専門家及びマスコミや一般市民の理解と態度を改善させる有効な手段となり得ます。

2 特定の機能障害領域に特化した本法案は、1993年の障害者基本法改正時の国会付帯決議が尊重されなかった結果であり、再びこのようなことのないよう、2004年の同法改正時付帯決議の遵守を強く要望します
 いわゆる「谷間の障害者」は単に「福祉」の分野だけの問題にとどまらず、教育、雇用、所得保障など多くの分野でみられます。
 1993年の心身障害者対策基本法の改正(障害者基本法への改称を含む)に際して参議院の付帯決議「てんかん及び自閉症を有する者並びに難病に起因する身体又は精神上の障害を有する者であって長期にわたり生活上の支障があるものは、この法律の障害者の範囲に含まれるものであり、これらの者に対する施策をきめ細かく推進するよう努めること」(抄)が出され、これに答えて政府が次のように説明していました。
「(1)自閉症については、その概念が必ずしも十分確立している段階とは考えられておらず、また自閉症の症状を示す者の多くは知能の障害を有するため、自閉症と精神薄弱の区分にあたっては困難な点が多い。(2)精神薄弱者福祉法においては、「精神薄弱者」の定義を設けておらず、自閉症による日常生活上の支障があり援助が必要な場合には、知能が一定以上であっても精神薄弱者として法律の対象として必要な援護措置を講じている。(3)以上のことから、改正法案における「精神薄弱」の中で「自閉症」をとらえることができる。」(厚生省社会援護局更生課、「障害者基本法について」、障害者の福祉、1994.2、pp6-10。)
 この理解を療育手帳制度通知の改正などの形で行政レベルに反映させることなく10年が経過しました。このため国会の意図と当時の政府説明に反して、「特定の「発達障害者」は障害者基本法や知的障害者福祉法の対象ではない」との運用がなされてしまい、いわゆる「谷間の障害者」の存在をそのままにしてしまった経緯があることを関係者は十分に踏まえておく必要があります。
 
<発達障害者支援法案に関する要望>
1 本法案が障害者基本法体系の内部にあるものであることを明記すべきです
 第1条(目的)に「障害者基本法の確実な実施を図るため」という趣旨の句を追加し、第2条(定義)に「この法の「発達障害者」は障害者基本法の定める障害者であること」を明記するなど、本法案が障害者基本法の体系の内部に存在するものであることを明記するべきです。

2 本法案を時限立法にする必要があります 
本協議会は「谷間の障害者」をなくしていくために障害種別を越えた総合的な障害者福祉法の早期制定を強く求めています。
障害分野の中でとくに施策や関係者の理解も不十分な分野の一つである「発達障害者」支援の分野を進展させることが目的であるので、5年間の時限立法とし、必要に応じてさらに延長していくことも考慮すべきです。しかしこの間に集中的に法整備と啓発を行うべきであると考えます。とくに総合的な障害者福祉法の具体化は重要課題となります。それと同時に関連分野である教育、福祉、雇用の法整備も急がれます。

3 「発達障害」の用語の混乱を避けるために「特定の発達障害者の支援に関する法律」とすることを検討してください
発達障害には知的発達障害が含まれるのが学界・関係者の常識であり、国際的には脳性まひなどの運動発達の障害も含まれています。 
したがって法案の名称を「特定の発達障害者の支援に関する法律(案)」とし、
支援ニーズを基本とした上で谷間に置かれている「発達障害」の人々を対象としていく必要があります。なお知的障害等重複した障害を併せもった人々についても、適切な支援を必要とされる場合、当然のことながらその対象に含まれることを確認したいと思います。

4 「発達支援」の基本的視点を見据え、個人のみならず、環境を改善していく考え方を内包させてください 
第2条(定義)の「発達支援」の定義は「発達障害者に対し、その心理機能の適正な発達を支援し、及び円滑な社会生活を促進するため行う発達障害の特性に対応した医療的、福祉的及び教育的援助をいう」となっています。この支援は当然重要なものではあるが、支援の対象は本人のみではなく、周りの人々を含めた環境でもあります。学校、職場、地域社会などの変化を促し、障害のある人々が社会の構成員として生活できる環境を構築していく視点でサービスが展開されることが重要であります。

5 「警察との協力体制の整備」の規定は見直しが必要です。
 第3条第4項では、「犯罪等による発達障害者の被害及び発達障害者と社会とのあつれきを防止するため」、国及び地方公共団体の教育、福祉などの部局と「警察、消費生活に関する業務を担当する部局その他の関係機関との必要な協力体制の整備を行うものとする。」となっています。法案の意図が発達障害者を犯罪被害から守ることにあるとしても、警察活動の力点は被害を受けやすい人の保護や被害者の支援であるよりも「犯罪を犯しそうな人」の管理や加害者の逮捕に置かれている実態があり、法案の意図とは逆の結果になる可能性もあります。「警察との協力体制の整備」を規定することには大きな懸念があります。


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