●最新のニュース20010704C

7/4、マスコミ、政府、国会、政党に声明文を提出
−大阪・小学校児童殺傷事件と
これにまつわる一連の動きを憂慮する声明−

 大阪・池田市の小学校内でおきた児童殺傷事件をめぐる一連の動きに対し、本日4日、報道関係各社、政府、国会、政党に対して次の声明文を提出しました。
 声明文では、今回の事件に対する一部マスコミにおける精神障害者に対する偏見を助長しかねない報道姿勢への反省を求め、また、「触法精神障害者問題」に係る特別立法制定等の論議に対する慎重な対応と、総合的で本格的な精神障害者施策の検討を求めています。

<提出先>

(報道関係各社) 朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、共同通信、東京新聞、産経新聞、時事通信、点字毎日、福祉新聞、NHK、TBS、テレビ朝日、日本テレビ、フジテレビ、テレビ東京、TBSラジオ、ニッポン放送、ラジオ日本、文化放送、J-WAVE
(政 府) 内閣総理大臣、法務大臣、厚生労働大臣
(国 会) 衆・参議院の内閣委員会、法務委員会、厚生労働委員会
(政 党) 自由民主党、民主党、公明党、日本共産党、社会民主党、自由党、保守党

大阪・小学校児童殺傷事件と
これにまつわる一連の動きを憂慮する声明

2001年7月4日

 去る6月8日、大阪・池田市で起きた小学校乱入殺傷事件は、あまりにも悲惨で、言葉に言い表しようのない衝撃的な出来事でした。亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申しあげるとともに、遺族の方々に対し深く哀悼の意を表する次第です。また、刺傷を負われた児童ならびに教職員、さらには精神面・心理面で大きな痛手を被られた児童ならびにご家族、教職員のみなさまの一日も早い回復を心からお祈り申しあげます。

 日本障害者協議会は国際障害者年(1981年)を契機に設立されたもので、障害当事者、その家族、そして関係者の団体(70団体)によって構成され、「完全参加と平等」の実現、ノーマライゼーション社会の確立を目指し、この20年間余にわたり活動を続けてきました。わけても、政府に対する政策提言やその具現化に向けての要望活動、そして障害のある人々に対する偏見や誤解を取り除く活動に力点を置いてきました。

 私たちは今回の事件によって、精神障害者を含む多くの障害者が、この日本社会に住みづらくなるのではないかという危惧の念を強く抱いています。

 まず問題として指摘したいのは、「精神障害者は危ない」の偏見を助長しかねないマスコミ報道の姿勢です。連日かつ大量のテレビや新聞などを通した報道によって、多くの精神障害を有する当事者は辛苦にさいなまれ、周囲の目が気になり家から出られなくなってしまった人も少なくありません。犯罪と精神障害者とを結びつけるような、あるいはそうしたイメージを感じさせるような報道のあり方については厳しく反省を求めるものです。

 次にこのような社会的風潮の中で急浮上してきた「触法精神障害者問題」等の論議です。この問題に関連して政府・与党からは、入退院の決定権を裁判所に付与するなどを含めた特別立法の制定が取り沙汰されていますが、これについては慎重であってほしいと考えます。少なくとも、今回の事件の現象面のみに影響されるような形での政策検討は、ややもすればエキセントリックなものとなりその結論が部分的で短絡的な内容となりがちです。今大切なことは、総合的で本格的な精神障害者施策を打ち立てていくことであり、そのための論議が可能となるような検討体制をつくることです。貧寒な精神医療施策や福祉施策を放置したまま「触法精神障害者施策」が一人突出するというのは、不十分な施策体系に新たな歪を持ち込むだけではなく、その拡大施行が懸念されるのです。

 本協議会は、かねてより障害種別間の施策格差を問題視し、とくに他の障害者施策と比較して大きな遅れをとっている精神障害者施策については憂慮していました。格差是正策の一環として、すべての障害を網羅した「障害者福祉法」の制定なども提言しています。精神障害の分野で最も重要な視点は、良質の医療を受けられるための地域医療体制の確立であり、地域社会の中で生活することが可能となるような福祉施策の充実です。また緊急の課題としては、人道的に見ても由々しき問題となっているいわゆる社会的入院問題の解消や欠格条項の改正などがあげられます。国会や政府の検討にあってはもちろん、マスコミの報道のあり方にあっても、こうした精神障害者施策全体の改革の必要性を基調とすべきであり、くり返しになりますが「触法精神障害者問題」や特別立法の制定、刑法改正論議の先行だけでは、決して根本的な解決にはならないことを強調しておきます。


 「一部の構成員をしめ出す社会はもろくて弱い社会である」、これは国際障害者年にちなんで記された国連決議の一節です。不幸な今回の事件を、隔離収容一辺倒と偏見・誤解の歴史に決別を告げ、障害者一人ひとりが市民の一員として胸を張れるような社会づくりの新たな端緒とすべきです。本協議会は、ここに改めて国会ならびに政府の精神障害者施策全般にわたる責任ある政策対応を強く求め、マスコミ各機関の冷静で精神障害問題の本質に迫る報道を、そして市民のみなさんの精神障害問題を含む障害分野に対する正しい理解を心から訴えるものです。

以上


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