わが国における障害者施策は、「国際障害者年」(1981)ならびにこれに続いて展開された「国連・障害者10年」(1983〜1992)を通して大きな発展をみることができました。これらの経緯を受けて、1993年より「アジア太平洋障害者の10年」が新たに設けられ、同年12月には障害者基本法の制定、1995年5月の総理府による市町村障害者計画策定指針に続いて、12月にはわが国の障害者分野初の数値目標・年次計画が盛り込まれた「障害者プラン」が策定されました。また、1996年7月には厚生省大臣官房に障害保健福祉部が新たに設置され、わが国の障害者施策は新たな局面にさしかかりつつあります。
しかしながら、国際障害者年において掲げられたメインテーマである「完全参加と平等」ならびに「ノーマライゼーション」などに照らしてわが国の障害者がおかれている現実をつぶさに顧みるとき、まだまだ多くの課題が山積みしていると言わざるを得ない状況にあります。とくにこの時期、立法ならびに行政機構のあり方に深く立ち入っていくことが求められているのではないでしょうか。
今回まとめられた「障害者総合福祉法」への試案は、1995年5月より検討をおこなってきたものです。障害者施策の実施主体が市町村へと移行する中で、障害種別による制度間格差の撤廃、福祉サービス根拠法である3法(身体障害者福祉法・精神薄弱者福祉法・精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)の分立状態と縦割り行政による制度の谷間におかれている難病・自閉症・てんかん等の障害者問題の改善に対しては、早急に対応がなされる必要があります。
今回の「試案」は、これらの諸問題の解決を前提に、あるいはそれを目指して提起されたものです。しかしながら、必ずしも充分討議がなされたとは言い難い問題も多く、今後さらに検討を進めなければなりません。とともに、「障害者総合福祉法」の実現のために、関係各位のご理解はもちろん、障害者およびその家族を中心とした当事者が、より一層協力して推進していく必要があります。
本試案作成にあたりご助成くださいました財団法人安田火災記念財団に心より感謝の意を表します。
わが国には障害者を対象とした福祉サービスの根拠法として、障害種類別・年齢別に、身体障害者福祉法、精神薄弱者福祉法、精神保健福祉法、児童福祉法、老人福祉法の5つがある。とくに障害種類別の分立はつぎの問題を生み出しており、地方分権化が進む中にあって、国の強力なバックアップが必要であり、総合的障害者福祉法が求められている。
第1に、目的、対象、サービスを異にする3法の分立状態は、自立と社会参加(障害者基本法)を共通目的とする今日の国民の要求、時代の要請に対応しにくい。総合的な法の中で必要に応じて障害種別のサービスを設けるべきである。
第2に、福祉サービスの地方分権化、施設福祉から地域福祉への重点の変化に対応しにくい。市町村障害者生活支援事業(障害者プラン)などの実現にとって縦割り制度は足かせである。市町村のサービスを自宅か身近な場所で受けられるよう、障害種別(や年齢)で区分せずニーズに応じた共同利用とすべきである。
第3に、障害種類別の法体系は専門化・特殊化に眼目があり、対象の限定を志向しているために普遍化と拡大の要求に応じにくい。総合的な法を制定し、高次脳機能障害や難病をはじめとする多くの「谷間」の障害をなくす必要がある。
この法律は、日本国憲法第25条の理念および障害者基本法第3条の理念に基づき、障害者の自立と社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動への参加を促進するため、障害者を援助し、その福祉の増進を図ることを目的とする。
この法律で障害者とは、身体的または精神的障害にともない、日常生活または社会生活が制限されているため、この法による援助の必要な者をいう。
(注)援助の必要性の判定は、援助の申請に基づいて援助の実施機関が行う。
基盤的施策 | 障害判定(訪問判定を含む)と手帳の交付 |
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情報提供・相談援助(行政、全施設、相談員) | |
障害者情報ネットワーク事業 | |
障害者のニーズ調査 | |
障害者団体の育成 | |
障害者理解の促進とボランテイア活動の条件整備 |
機能障害の軽減・生活動作自立のための施策 | 更生医療 |
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障害者健康診査事業 | |
補装具 | |
日常生活用具 | |
障害者リハビリテーション施設 従来の身体障害者更生施設、精神薄弱者更生施設、 援護寮等をもふくみ盲重複・ろう重複等にも対応。 |
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補装具製作施設 |
生活の場に関する施策 | グループホーム事業(重度者対応含む) |
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障害者生活施設 グループホームも生活施設も法的には一本化し、運用で特定の障害を中心とするものや介護より看護を重視する難病者用施設なども設ける。 |
日常生活支援施策 | 居宅介護等事業(ホームヘルパー、給食、入浴) |
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デイサービス事業 | |
ショートステイ事業(レスパイト含む) | |
地域福祉拠点施設事業 | |
障害者生活支援事業 |
移動・コミュニケーション施策 | ガイドヘルパー事業 |
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手話通訳者・要約筆記者事業 | |
視覚障害者情報提供施設 | |
聴覚言語障害者情報提供施設 |
就労支援施策 | 社会適応訓練事業(職親委託事業) |
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障害者通勤寮 | |
福祉工場(就労重視、高工賃志向) | |
社会就労施設(訓練と福祉就労、従来の授産) | |
盲人ホーム | |
売店設置・たばこ小売り人許可・製作品購買 |
その他の社会参加促進施策 | 社会参加促進事業(社会活動総合推進事業を含む) |
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自立生活センター事業 | |
重度障害者通所活動施設(デイサービス施設等) | |
障害者福祉センター(現A型、B型を含む) | |
障害者休養センター(更生センター) | |
国際交流促進事業 | |
障害者の視点による生活環境点検事業 |
(注)障害者の希望によるニーズ評価、援助プラン作成、援助コーデイネーター(ケースマネージャー)の活用が望まれるが、まだ詳しい内容が不明なので表示は避けた。
障害者福祉施設においては、施設を利用する障害者の意見を施設運営に反映させるために、施設を運営する法人の役員に利用者またはその保護者の代表を加えること、利用者自治会の結成とその活動を支援すること、苦情処理のための第3者機関を設けること、その他効果的な措置をとるよう努めなければならない。
本法に規定する障害者福祉施策の費用の負担は、国2分の1、都道府県4分の1(政令市は2分の1)、市町村4分の1とする。
委員長 | 佐藤 久夫(日本社会事業大学教授) |
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副委員長 | 松友 了(全日本手をつなぐ育成会常務理事) |
副代表 | 吉本 哲夫(障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会会長) |
委員 | 朝日 雅也(日本職業リハビリテーション学会理事) |
岩崎 晋也(共同作業所全国連絡会) | |
上田 敏(日本リハビリテーション医学会常任理事) | |
氏田 照子(日本自閉症協会理事) | |
岸野 洋子(全国障碍者自立生活確立連絡会) | |
小坂 一郎(鉄道弘済会社会福祉部長) | |
坂本 秀夫(全国難病団体連絡協議会事務局長) | |
島本 久(全国精神障害者家族会連合会総務部長) | |
鈴木 勇二(日本てんかん協会会長) | |
高橋 一(日本精神医学ソーシャルワーカー協会事務局長) | |
福地 周一(福岡市障害者関係団体連絡協議会副会長) | |
長谷川 三枝子(日本リウマチ友の会理事) | |
三重 多美子(東京都身障運転者協会理事) | |
茂木 俊彦(全国障害者問題研究会全国委員長) | |
八宗岡 峰起子(全国難病団体連絡協議会副会長) | |
吉田 勧(日本てんかん協会常務理事) | |
専門委員 | 小澤 温(大阪市立大学生活科学部人間福祉学科助教授) |
河野 康徳(昭和女子大学教授) | |
指田 忠司(障害者職業総合センター研究員) | |
清水 圭子(元目黒区障害福祉課勤務) | |
矢島 里絵(都立大学人文学部社会福祉学科助手) | |
記録 | 小倉 明子(横浜市瀬谷区役所) |
赤坂 真美(日本社会事業大学大学院) |
※役職等は委員委嘱時になります。