●厚労省・第5回介護保険制度の被保険者・受給者範囲に関する有識者会議<2007年2月5日>
介護保険制度との統合策に関する意見書
団体名:日本障害者協議会
発表者:藤井克徳(常務理事)
■はじめに
厚労省老健局より照会のあった「障害者施策からみた介護保険制度」について、以下に日本障害者協議会(JD理事会)としての基本的な考え方を記す。意見表明に先立って、一言述べておきたい。それは、2006年4月から施行されている(完全施行は同年10月より)障害者自立支援法についてであるが、障害当事者ならびに家族への影響は極めて甚大であり、介護保険との統合問題など、この時点で論議を深める状況にはないということである。厚労省として、先ずは障害者自立支援法に関する問題解消に向けて、効果的で永続的な対応を図られることを、あらためて強く要望する。
■障害分野に関する主要な基幹的政策課題
日本障害者協議会は、一貫して障害分野に関わる基幹施策の立ち遅れを主張してきた。「介護保険との統合問題」を論じる以前に、基幹的な政策課題を整理することであり、それらの実現をどう展望するのか、これらにエネルギーが割かれるべきではなかろうか。本日のヒアリングにおいても、あらためて主要な基幹的政策課題を列挙しておきたい。
◇
「個」の尊重と当事者主体の法制の構築
◇
障害者総合福祉法(仮称)の制定
◇
法的な措置を伴う社会資源の拡充策
◇
本格的な所得保障制度の確立
◇
「障害」の定義、等級制度、手帳制度の改訂
◇
関連基礎データの集積
■現状の福祉施策の課題、問題点
障害者福祉施策と介護保険制度の統合を論ずるにあたっては、現状にみる次のような課題や問題点を押さえることが必要である。
@
ニーズに応じきれないサービス:現行の介護保険制度にあっても、「上乗せ」「横出し」が成されているが、高齢者の尊厳を保ち、そのニーズを満たすには余りに不備が多い。こうした不完全な介護保険制度に、自立や社会参加に関して多様なニーズを持つ若齢の障害者が加わった場合に、一体どうなっていくのか、率直に言って展望が見出しにくい。
A
障害者福祉サービスの絶対量不足:入所施設中心(知的障害者)ならびに入院中心(精神障害者)の政策がとられてきたわが国にあって、地域生活を支えるサービスは極端に不足している。また、質的な面からも、事業提供者が十分育っているとは言えない(高齢者分野も同様では)。まずは、障害関連のサービス基盤の量的な拡充に政策エネルギーを割くべきではなかろうか。
B
権利擁護システムの未確立:当事者主体のサービスを実施するにあたり、これまで弱い立場に置かれがちであった利用者、特に自ら主張することに困難がある人々を護るための権利擁護システムについては、課題が多く、まだまだ未確立と言わざるをえない。成年後見制度や地域福祉権利擁護事業などの利用が進み、地域包括支援センターなども位置づけられたが、新たな課題も指摘されており、権利擁護について踏み込んだ検討が必要である。
C
制度成立過程の相違:介護保険制度による高齢者福祉と、支援費制度を経て障害者自立支援法によるサービスがスタートした障害者福祉とでは、その成立の過程や求められるサービスに大きな違いがあり、単純に統合することは困難である。地域での支援にあたって重要な役割を果たす相談支援・ケアマネジメントの位置づけや、実際の支援にあたるケアマネージャーの役割・養成過程なども異なっている。2つの制度を統合するにあたっては、実績についてのデータ蓄積と、今後のあり方について十分な議論を尽くすための時間が必要である。
■当面の検討課題
介護保険制度と障害者福祉施策の沿革や理念の違いを含め、当面、次のような検討が求められる。
@
統合についての議論:上記のような相違を踏まえ、時間をかけて十分な論議を尽くすことがまず必要である。利用者、事業者、行政、企業、市民など、異なる立場の意見を集約し、これからのあり方を総合的に論議すべきである。
A
財源のあり方:高齢者福祉と障害者福祉の財源について論ずるだけでなく、現在の雇用システム、老齢年金のあり方なども含め、社会保障全般について、経済界の考え方等をも踏まえて検討していくことが必要である。単純に租税か保険かではなく、諸外国の例なども参考に、国政全般を踏まえてあり方を具体化することが求められる。
B
したがって、当面は障害者福祉サービスと介護保険制度とは、それぞれの相違を踏まえて異なるシステムで運営し、あるべき方向性を探りながら、実践的な論議を積み重ねるべきと考える。
■結論
以上を踏まえて、日本障害者協議会としては、拙速な統合論議は避けるべきと結論づけざるをえない。なお、ヒアリング項目としてあげられている、@「共生型福祉サービス」については、国連で採択された障害者の権利条約を踏まえ、インクルージョンや「包括型サービス」という視点で検討すべきと考える。また、A「介護保険制度の適用者の拡大」のメリット・デメリットについては、上記のような提言を踏まえて、十分に議論を尽くすべきと考える。
添付資料
問い合せ先
日本障害者協議会
〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1
(財)日本障害者リハビリテーション協会内
Tel 03-5287-2346 Fax 03-5287-2347
(2007年1月1日現在:69団体)
(財)安全交通試験研究センター
(独立行政法人)高齢・障害者雇用支援機構
(財)
(社福)視覚障害者文化振興協会
障害者(児)を守る全大阪連絡協議会
障害者の生活と権利を守る全国連絡協会
(社福)
世界身体障害芸術家協会
全国LD(学習障害)親の会
全国救護施設協議会
全国ことばを育む親の会
全国視覚障害児(者)親の会
全国肢体不自由児施設運営協議会
(社福)全国重症心身障害児(者)を守る会
全国障碍者自立生活確立連絡会
全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会
(NPO)全国障害者生活支援研究会
(社)
(NPO)全国精神障害者団体連合会
(NPO)全国精神障害者地域生活支援協議会
全国聴覚障害者親の会連合会
全国特別支援教育推進連盟
(社)ゼンコロ
全社協・全国社会就労センター協議会
全社協・全国身体障害者施設協議会
(社)全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
(財)鉄道弘済会
(社福)鉄道身障者福祉協会
東京都身障運転者協会
長野県障害者運動推進協議会
奈良県障害者協議会
(社)日本オストミー協会
日本音楽療法学会
日本介助犬アカデミー
(社)日本筋ジストロフィー協会
(NPO)日本ケアヒィットサービス協会
(社)日本作業療法士協会
(社福)日本肢体不自由児協会
(社)日本自閉症協会
(社)日本社会福祉士会
日本手話通訳士協会
(財)日本障害者スポーツ協会
(財)日本障害者リハビリテーション協会
日本職業リハビリテーション学会
(社)日本整形外科学会
(社)日本精神保健福祉連盟
(社)日本精神保健福祉士協会
(社)日本発達障害福祉連盟
(社)日本てんかん協会
(社福)日本点字図書館
日本難病・疾病団体協議会
日本脳外傷友の会
日本病院・地域精神医学会
(社福)日本盲人社会福祉施設協議会
(社福)日本盲人職能開発センター
(社)日本リウマチ友の会
(社)日本理学療法士協会
(社)日本リハビリテーション医学会
発達障害療育研究会
福岡市障害者関係団体協議会
(NPO)福祉用具適合技術協会
(社福)ぶどうの木・ロゴス点字図書館
無年金障害者の会